新潟県燕市の燕駅前通りにある創業60年余りになる精肉店「かねまつ商店」（本町1）とその2階の焼肉飯店「松燕（しょうえん）」が9月30日で閉店。とくに「松燕」は1皿税込み110円という驚きの安さで、燕っ子は消えゆくソウルフードを惜しんでいる。

経営するのは、泉谷日出夫さん(85)。三条市北五百川の出身で「サルと一緒に育った」と笑う。1961年（昭和36）に今の場所に「かねまつ」を開き、それから10年ほど遅れて2階で「松燕」を始めた。店内はほとんど改装していない。昭和がそのまま残っている。

特徴は何と言ってもその破壊的な安さ。1皿110円か、焼き肉食べ放題と飲み放題で3,080円のどちらかを選ぶ。安さはほかの焼き肉店とは比べものにならず、しかも1階は精肉店なので肉の品質は折り紙付き。大食漢にはまさに聖地で、それだけに閉店の知らせは衝撃だ。

9月初めに「高齢により体調不良により」と閉店の知らせを店内に張り出した。「コロナでいろいろ重なって」と泉谷さんは話す。数年前から「松燕」は木曜から日曜までの週4日だけの営業にしている。

住宅は別の場所にあり、店舗は「そのうちにさら地にしんばだめら」。燕駅の駅前通りに位置する。開業したころは「燕通い」という言葉もあったように、朝は電車が燕駅に到着するたび、燕市内の洋食器工場で働く大量の人が下車し、迎えに来た各工場の送迎バスに乗り込み、大いににぎわった。

「昔は燕でいちばんの繁華街らった。今は年寄りの住宅街になっちゃった。ひとりかふたりしか、いねーからね」、「時代の流れでしょうがねー」と往時を懐かしむ。

閉店を惜しみ、残念がる声をたくさん聞く。「そう言ってくれるからね。感謝、感謝」。閉店後はのんびりと過ごすと話した。