新潟市秋葉区の小須戸地域で開かれている「小須戸ARTプロジェクト2026」で、アイルランド出身の映像作家カル・バーン(Cal Byrne)さん(25)が、地域の暮らしを映像と音で描いた「小須戸交響曲-KOSUDO Symphony-」を町屋ラボで上映している。約1カ月の滞在中に出会った人々の仕事や日常、町に響く音を約16分の作品にまとめた。11月3日(火・祝)までの土、日曜、祝日、午前11時から午後4時まで公開。観覧無料。

情報を説明するより、日常をじっと見つめる
Byrneさんはアイルランド在住。National College of Art and Designでメディアを学び、人と風景の関わりを、観察やリサーチを通じて映像にしている。アーティストが一定期間、滞在して制作するアーティスト・イン・レジデンスへの参加は、ポルトガルのリスボン、ラトビアに続いて今回が3回目。インターネットで小須戸の募集を知り、応募した。
自身の作品はドキュメンタリーだが、インタビューで情報を伝える一般的な形式とは異なるという。人々の自然な暮らしを、映画のような映像として捉える。「情報を伝えるというより、観察する作品」と説明する。
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「小須戸交響曲」では、日本の伝統絵画に見られる平面的な構図や、小津安二郎監督の映画などから影響を受け、ワイドな構図と固定カメラで撮影。町で暮らす人々の何気ない動きや仕事、表情をじっくり見つめた。
作品は朝から夜へと移り変わる町の一日を描く。日常生活や人々の営みを重ね、小須戸という町そのものの姿を浮かび上がらせている。
太鼓やチャイム、暮らしの音を重ねて
映像とともに力を注いだのが音だ。自然の音、人の声、太鼓の音楽を重ね、町で繰り返される動きや作業からリズムを生み出した。午前4時までヘッドホンを着けて音の仕上げに取り組み、明けて10日に完成させた。

滞在中には祭りの神事に参加する機会があり、そこでの出会いから撮影先も広がった。とりわけ太鼓の音は強く印象に残った。「初めて聴いた日に、作品の中で役割を持たせたいと思った」と振り返る。
ごみ収集車から流れる音楽や、決まった時刻に鳴るチャイムなども、アイルランドから来たカルさんには新鮮だった。地域の人には聞き慣れた音の一つひとつに耳を澄ませ、小須戸の時間の流れを表す要素として捉えた。
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さまざまな音が響くことを、騒がしさとして受け止めているわけではない。多様な音に出会い、それを聴くこと自体を楽しんでいた。
職場も「自宅の延長」 滞在で変わった見方
来日前に関心を寄せていたのは、日本での仕事と社会生活の境界の曖昧さ、そして地方の人口減少だった。当初は、それらを懸念する問題として見ていたが、小須戸で暮らす人たちの日常を観察するうちに、その見方が変わっていった。

作品解説では、多くの人が自分らしさを表しながら、職場まで自宅の延長のような空間につくり上げていることに気づいたと記す。そうした場所では、人々が自然に言葉を交わし、交流を深め、地域のつながりを育んでいた。
一人ひとりの個性を持ちながら共通のリズムを生み、町の個性や伝統、精神を受け継いでいる。その発見が、暮らしの営みを一つの交響曲として描く作品につながった。
10日は完成したばかりの作品を鑑賞した人たちの感想を聞き、手応えを感じた。「とてもうれしい。リズムもうまく働いて、多くの人が自分の表現したかったことを理解してくれた」。
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町の外から訪れた若い映像作家が、住民にとって身近な風景や音を見つめ直し、小須戸の日常にある美しさをすくい取った。
小須戸ARTプロジェクト | 新潟市小須戸地区の町屋や地域資源を活用するアーティストインレジデンス・アートプロジェクト
https://kosudoart.com/
