NPO法人燕三条エラール推進委員会は18日、新潟県三条市の図書館等複合施設「まちやま」で記者会見を開き、まちやまに設置されているエラール社製フルコンサートグランドピアノを東京の迎賓館赤坂離宮へ運び、迎賓館所蔵の同型ピアノと競演する「国宝・迎賓館赤坂離宮×燕三条 エラールピアノ競演プロジェクト」の概要を公表した。国内にわずか4台しか現存しないとされる同社最高峰のフルコンサートモデルのうち2台がそろって演奏するのは国内初という。11月19日から12月22日まで迎賓館の「羽衣の間」で展示し、期間中7回の特別演奏会を開く。
会見には同委員会の永桶康子理事長と、内閣府迎賓館の鎌田修弘次長が出席した。燕三条のエラールは1930年製。翌31年、日仏交流にあわせた華族会館でのコンサートのためフランスから来日し、32年に三条の先人たちが「子どもたちに最高峰の教育を」と寄付を募って購入した。その後、県立三条東高校で長く使われた後に眠っていたが、2022年に結成された同委員会を中心に修復が進められ、23年11月に再生した。
2020年に描いた「いつか迎賓館のピアノと」
永桶さんがこのピアノを初めて見たのは2020年3月。三条東高校の片隅で数十年間、眠っていた。当時から、再生した後には地域に愛される存在にするとともに、「まぶしくて近づけないような晴れの舞台をいつか用意したい」と考えた。
同じエラール社の最高モデル「No.3」である迎賓館のピアノと「2台で語り合うように共演できないものか」と思い描いていた。
その構想が具体化したのはことし2月。同委員会主催のコンサートに出演した演奏家を通じ、永桶さんが鎌田次長を紹介された。鎌田次長自身、約10年前に迎賓館で眠っていたエラールピアノを発見し、楽器として再生する事業に携わっていた。
鎌田次長は、燕三条で同じように古いエラールを復活させた取り組みを動画などで知り、「すごいことをやった人がいる」と感じていた。
永桶さんから構想を聞いた際には、自身の修復経験とも重なり、「即決してじゃあやりましょうとなった」と振り返った。そこから約半年で具体的な内容を詰め、今回のプロジェクトが実現した。
皇族に愛された1906年製で120歳のエラールと、三条の教育への情熱で購入した1930年製で96歳のエラール
迎賓館のエラールは1906年製。皇室を表す菊の紋章や特別な装飾が施され、東宮御所時代から羽衣の間の空間に調和するようにつくられた。香淳皇后をはじめ歴代の皇族に愛されてきた。
一方の燕三条のエラールは、地域の人たちが子どもの教育のために寄付を募って購入し、約90年後に市民や地元企業などの力で再び音を取り戻した。
鎌田次長は燕三条のエラールについて、「人と地域が紡いだ情熱の象徴」と表現。「迎賓館の至高の美と、ものづくりのまち燕三条が生んだ教育への情熱という2つのストーリーが交差することで、音楽の素晴らしさとともに、日本の文化力や技術力の高さ、地域の絆を感じていただきたい」と話した。
7回の演奏会 森山良子さんや三条高校合唱部も
特別演奏会は11月19、26、27日、12月3、10、17、21日の7回。初日の11月19日は森山良子さんが歌い、中島剛さんらがピアノを演奏する。2台ピアノでは深見まどかさんと篠田昌伸さん、ドゥオール、青柳いづみこさんと川口成彦さんらが出演する。
| 実施日 | 演奏者 |
|---|---|
| 【1】11月19日(木) | 歌:森山良子様 ピアノ:中島剛様他 森山良子作詞、BEGIN作曲:涙そうそう 等 |
| 【2】11月26日(木) | 2台ピアノ競演 深見まどか様、篠田昌伸様 ラヴェル作曲:ラ・ヴァルス―管弦楽のための舞踏詩― 等 |
| 【3】11月27日(金) | 2台ピアノ競演 吉岡綾子様、佐藤郁帆様 ラフマニノフ作曲:ピアノ協奏曲第2番 等 |
| 【4】12月3日(木) | 2台ピアノ競演 ドゥオール様(藤井隆史様、白水芳枝様) J.S.バッハ=ヘス 主よ、人の望みの喜びよ 等 |
| 【5】12月10日(木) | 2台ピアノ競演 平井千絵様、森田凪様 ドビュッシー作曲 : 牧神の午後への前奏曲 等 |
| 【6】12月17日(木) | 2台ピアノと合唱 オペラの競演 ① 合唱:新潟県立三条高等学校合唱部様 ② オペラの競演 ソプラノ:鈴木愛美様 バリトン:又吉秀樹様 ピアノ:赤星裕子様、齋藤真優様 山田耕筰作曲:からたちの花 オペラカルメンより≪闘牛士の歌≫ 合唱 久石譲作曲:いのちの名前 等 |
| 【7】12月21日(月) | 2台ピアノ競演 青柳いづみこ様、川口成彦様 ショパン作曲:ピアノ協奏曲第2番 第2楽章 等 |
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※各回17:15から18:00まで。ただし、11月27日は、15:15から16:00。その後17:15から報道関係者様向けの取材内覧会及び特別デモンストレーション演奏会。 ※参加料金は、本館(通常コース)・庭園見学とセットの場合、以下を予定。 |
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12月17日は県立三条高校合唱部も出演し、ソプラノの鈴木愛美さん、バリトンの又吉秀樹さんらと共演する。永桶さんによると、幅広い層にエラールを知ってもらうため、クラシックだけでなくさまざまな音楽を楽しめる出演者構成とした。
エラールのあった三条東高校には合唱部が存在しないため、三条高校合唱部は「この地域の教育の象徴」として出演を決めた。
演奏会は事前申込による抽選制。鎌田次長によると、迎賓館で通常行っているエラールピアノの演奏会でも応募倍率は20倍を超えることがあると言う。
今回の申し込みは10月初旬ごろから順次始める予定。迎賓館は現役の迎賓施設のため、国賓などの接遇が入った場合は予定が変更される可能性がある。
「国賓と同じ形」で中央階段から羽衣の間へ
燕三条のエラールは11月6日に三条を出発する。大きく重いうえ、現代のピアノより複雑で繊細な機構を持つため、専門業者が運搬する。
迎賓館では荷物用エレベーターに入らないことから、国賓を迎えるときに使う正面玄関から入る。通常は一般参観者も職員も上らない中央階段を使って2階の羽衣の間へ運び込む計画だ。
鎌田次長は「国賓と同じ形で運搬しようと考えている」と説明。永桶さんは「三条市初の国賓がエラールということになりました」と笑顔を見せた。
11月19日から12月22日までは、演奏会のない日も迎賓館の通常参観で2台を一般公開する。解説パネルやデジタルサイネージを設置し、それぞれのピアノの歴史や修復の歩み、演奏映像などを紹介する。
燕三条エラール推進委員会ではあわせて、三条東高校時代などのピアノにまつわる思い出やエピソードも募集している。
迎賓館を撮った渡辺義雄、カトラリーを迎賓館に納入
迎賓館赤坂離宮と三条市には、写真を通じた縁もある。三条市出身で名誉市民の建築写真家、渡邉義雄(1907〜2000)は、現在の迎賓館として開館した翌年の1975年、赤坂離宮を撮影した大型写真集「迎賓館―赤坂離宮」を毎日新聞社から刊行した。
渡邉は伊勢神宮や皇居宮殿などの建築写真で知られ、「迎賓館」は代表作のひとつ。半世紀前には三条出身の写真家がレンズを向けた迎賓館を、今度は燕三条でよみがえったエラールピアノが舞台とする。
迎賓館では開館当初から燕三条製のカトラリーが使われている。現在も使用とメンテナンスが続き、以前から燕三条地域とは深いつながりがある。
2台のエラールが置かれている1カ月の間ずっと羽衣の間の隣の食事をする部屋で、通常は迎賓館で使う食器が何点か置かれているが、今回はすべてカトラリーにして展示するという。
関連リンク
- 迎賓館赤坂離宮×燕三条 エラールピアノ競演プロジェクトを開催 | | 迎賓館赤坂離宮 | 内閣府(新しいウィンドウで開く)


