新潟県弥彦村のブランド米「伊彌彦米(いやひこまい)」と宮城県石巻市の無添加たらこを組み合わせたプレミアム冷凍おむすび「やひこむすび」が完成。24日、弥彦村で試食会と記者会見が開かれた。「縁を、むすぶ。」をコンセプトに、贈答品やふるさと納税返礼品として販売していく。
弥彦村と三ツ目株式会社(新潟県三条市)、湊水産株式会社(宮城県石巻市)が連携して開発した。弥彦村で生産され、2018年に皇室献上米となった特別栽培米「伊彌彦米」と、湊水産が手がける無添加・無着色のたらこや明太子、弥彦産枝豆を使った冷凍おむすびで、「たらこ」、「明太子」、「枝豆たらこ」の3種類を詰め合わせる。
東日本大震災で生まれた縁が商品開発へ
伊彌彦米を活用した新商品の検討が開発のきっかけとなった。三ツ目には、2011年の東日本大震災の際に湊水産でボランティア活動をした経験のある社員がおり、その縁から湊水産とのつながりが生まれた。
ことし4月中旬に初めてオンラインで打ち合わせを行い、約4カ月をかけて商品化した。
湊水産は石巻市で45年以上にわたり、たらこや明太子を製造している。近年は、たらこの煮汁に宮城県産「ササニシキ」、鰹節と昆布の天然だしを合わせて炊き上げた冷凍おにぎり「たらこ屋がつくったおにぎり」を製造、販売している。
湊水産の木村一成代表取締役は、初めて伊彌彦米を食べたとき、「甘みとしっかりした粒立ちに驚いた」という。たらこの煮汁を米に吸わせ、ご飯そのものにたらこの風味が広がるよう仕上げた。
解凍後も「伊彌彦米らしさ」を
一方で、冷凍後に電子レンジで温めても炊きたてに近い食感を保つことが開発上の課題となった。伊彌彦米に弥彦産もち米「こがねもち」を加え、配合を細かく調整。湊水産がこれまで培ってきた冷凍おむすびの技術を応用しながら試作を重ねた。
木村社長は「伊彌彦米はこれまで使ってきた米とはまったく別物だった」と話し、解凍後も伊彌彦米の粒立ちや甘みを生かすための調整に時間をかけた。
伊彌彦米は、農薬と化学肥料を50%以上削減した新潟県特別栽培農産物の認証米。生産する農事組合法人第四生産組合の竹野勝行組合長は、伊彌彦米がことし誕生から10年を迎え、その節目に新商品が誕生したことを喜んだ。
また、「枝豆たらこ」には弥彦産枝豆を使用する。弥彦アベニール株式会社(弥彦村)の藁科克彦代表は、規格外となった枝豆の活用にもつながるとして、「規格外品をいかに生かすかという点でも、このおむすびには縁を感じる。もっと活用を広げていきたい」と期待した。
自治体のふるさと納税事業を支援する三ツ目は、昨年度から弥彦村のふるさと納税事業でアドバイザー的役割を担い、今年度は正式に運営委託を受けた。返礼品の開発に取り組んだのは今回が初めて。
「本当にご縁でつながって、すごく素敵な感じの話になった」と三ツ目の澤正史代表取締役。返礼品の開発は「どんどんいろんな地域でやりたいと思っている。とくに新潟は米はもちろん、ご飯のお供も多く、そういったものでも何か作れるのでないか」と構想を膨らませる。
「自然」「地域」「人」の3つの縁
商品名には、越後一宮・彌彦神社を有する弥彦の「自然の縁」、弥彦と石巻をつないだ「地域の縁」、さらに贈る人と受け取る人をつなぐ「人の縁」という「3つの縁」への思いを込めた。
本間芳之弥彦村長は、伊彌彦米と弥彦産枝豆、石巻のたらこが一つの商品になったことについて、「単なるビジネスの連携ではなく、まさに『ご縁』という言葉がふさわしい」と評価。「弥彦村と石巻、そして全国の皆さまをつなぐ縁結びの架け橋になってほしい」と期待を寄せた。
商品は化学調味料や着色料、保存料を使わず、電子レンジ600Wで約1分加熱すれば食べられる。冷凍保存できるため、家庭用だけでなく贈答品としての需要も見込む。
3種類を詰め合わせた化粧箱入りで、通常販売価格は税込1,350円。オンラインショップなどで販売するほか、弥彦村のふるさと納税返礼品にも採用し、寄付額は8,000円。この日から彌彦神社前の「酒屋やよい」で販売を始め、今後は県内や弥彦村を中心に販路を広げ、アンテナショップなどでの販売も検討する。
湊水産では将来的に、石巻のサケやタイ、ワカメなど別の水産物を使った商品や、いなりずしなどへの展開も視野に入れている。
石巻と新潟をつないできた「恩返し」の縁
湊水産と新潟との縁は今回が初めてではない。
2004年の新潟県中越地震では、石巻市がいち早く旧山古志村(現長岡市)への災害応援に駆けつけた。その7年後の2011年に東日本大震災が発生すると、今度は長岡市が「恩返し」として、津波で壊滅的な被害を受けた石巻市でさまざまな復興支援活動を行った。
その交流の中で、長岡市の朝日酒造株式会社と湊水産の接点が生まれた。震災復旧で支援を受けた湊水産は、長岡への恩返しにつながる商品をつくろうと、朝日酒造の吟醸酒かすを使った「粕漬けたらこ」などを共同開発した。
そして今回、東日本大震災の際に石巻でボランティア活動をした三ツ目の社員との縁を通じ、「たらこ屋がつくったおにぎり」と伊彌彦米を組み合わせられないかという話が持ち上がり、「やひこむすび」の開発へとつながった。
単なる企業同士の商取引ではなく、災害時に助け合ってきた地域や人の縁が、新たな商品として形になった。
木村社長は「商品ができたこと以上に、弥彦と石巻という二つの地域の人と素材が出会い、一つの商品になったことがうれしい。いつか『弥彦といえばやひこむすび』と言ってもらえる商品に育てたい」と話している。
