公益財団法人ソニー教育財団が主催する乳幼児教育者向けの学びのイベント「保育者の夏フェス2026」が11日、新潟県燕市小池の社会福祉法人浄勝会小池保育園(松延毅園長)で開かれた。全国各地から保育者や教員ら30人余りが集まり、企業などで不要となった素材を活用した造形活動や、光、映像、保育実践について学び合った。
年に一度、全国の会員が対面で交流
同財団が運営する「乳幼児のための『科学する心』ネットワーク」の交流イベント。ネットワークは2020年に設立され、全国の保育者や教員ら約1,300人が加入。ふだんはオンラインを中心に情報交換している。
夏フェスは年に一度、会員がオフラインで一堂に顔を合わせる機会として4年前に始まり、新潟では初開催。ネットワークの自主的な学習サークルで松延園長がリーダーを務めていることもあり、小池保育園が会場となった。
この日は遠くは北海道から大分県まで、県内外の保育者をはじめ燕市内の小学校長や新潟大学附属小学校の教員らも参加した。
捨てられる素材を子どもの創造力につなぐ
まず、ゲスト講師の東京都品川区で「こども素材センター」を運営する株式会社えんのした代表の宮里耕太さんが講演した。幼稚園教諭として計13年間、勤務して現在は企業や工場などから出る端材や未利用素材を集め、保育や教育の場につなげる活動に取り組んでいる。
宮里さんは、折り紙や画用紙といった市販品、木の実などの自然素材、家庭から出る空き箱などに加え、街や工場から生まれる「未利用素材」を保育に生かす意義を紹介した。
素材には、アクリル板の端材や規格外のばね、鉄、紙、布、わらなどがある。製品を作る過程で役目を終えたものを宮里さんは「じゃない方素材」と呼び、子どもたちが自由な発想で別のものに見立て、遊びや表現に発展させている。
宮里さんは「問題は素材が不足していることではなく、素材と教育、保育が分断されている構造にある」と指摘。保育現場では職員が素材を探し、安全性を確認し、活動に取り入れるまでの時間を確保しにくい一方、企業では活用できる素材が大量に廃棄されており、両者を結ぶ仕組みの必要性を話した。
素材を単なる物として渡すのではなく、どの工場で何を作る過程から生まれたのかという背景も伝えている。「エレベーターの製造現場から生まれた鉄だと知れば、子どもの興味は工場や社会へと広がる。素材との出会いが社会とつながるきっかけになる」と考える。
「何かになるかもしれない」可能性
宮里さんは、使い道があらかじめ決められていない素材を用いる「ルースパーツ」の考え方も紹介した。枝や石、端材など、動かしたり組み合わせたりできる素材が多くあるほど、子どもの創意工夫や発見の可能性が広がるという。
完成品は用途が限定される一方、形や役割の定まっていない端材は「何かになるかもしれない可能性に満ちている」。「大人にはただのアクリル板に見えても、子どもが加わることで遊び心が生まれ、何にでも変わる。子どもが自分の世界をつくり出せるようになることが、豊かな未来につながる」と語った。
参加者は全国から持ち寄られた多種多様な素材に触れ、切ったり、並べたり、組み合わせたりしながら、子どもの目線に立った造形活動を体験した。
7サークルに分かれて実践的に学ぶ
続いてネットワーク内で活動する7つの探究サークルがそれぞれワークショップを開いた。
竹を使った保育実践を語り合うサークル、写真から子どもの興味や心の動きを読み解く「ナラティ部」、写真や動画の撮影方法を学ぶ「保育と映像」、子どもと生き物との関わりを考える講座など、多彩なプログラムを用意した。
カイコの繭(まゆ)や糸を使った創作では、日本国内に多くの品種があることや糸の性質を学びながら作品を制作。ライトテーブルやOHPを使った光遊びでは、素材を透過する光や影、色の重なりを確かめ、子どもの探究心を引き出す環境づくりを体験した。
参加者は前半と後半で異なるサークルを選び、少人数のグループで実践例や日頃の悩みを共有した。講師から一方的に知識を得るのではなく、それぞれの経験を持ち寄り、子どもの姿や保育者の関わりについて語り合った。
最後に地元の燕市のほか参加者が持ち寄った素材でものづくりするワークショップを行った。
松延園長は、全国の保育者が燕市に集まる貴重な機会になったとして、「ふだんはオンラインでつながっている仲間が実際に顔を合わせ、園内の環境や素材に触れながら学び合うことができた。地域にも乳幼児教育の取り組みを知ってもらえれば」と話していた。
