新潟県三条市尾崎、川通どれみこども園(村田健園長・園児58人)で19日、園で飼育しているメスのヤギ「えがお」が2頭の赤ちゃんを出産した。赤ちゃんはともにメスで、園児たちが「はる」と「みるく」と命名。出産は昼の時間帯で、園児たちは給食も忘れて「頑張れ」と声をかけながら新しい命の誕生を見守った。
同園では昨年6月から同じ社会福祉法人どれみ福祉会(目黒由美子理事長)が運営する石上どれみこども園とともに、ヤギの飼育を始めた。三条市下田地域でヤギの飼育に詳しい人からメスの「えがお」とオスの「つき」の2頭を借りた。園児たちが世話を続けるうちに愛着が深まり、秋に返す予定だったえがおは園に残させてもらい、つきは戻した。
昨年12月20日には、えがおの種付けのために別のヤギが園を訪れた。ヤギの妊娠期間は約150日間。ほぼ予定通りの5月19日に出産。園児たちの前で、まず赤ちゃんの頭が見えた。年長の女児が「えがおの隣に赤ちゃんの頭があるよ」と叫ぶと、3、4、5歳児がいっせいに集まり、目の前で命が生まれる瞬間を見届けたと言う。
ヤギの世話の中心は年長児。えさやりもあるが、最も大変なのはふんの掃除だ。最初は嫌がる園児もいたが、ある男児が食事の時間に「ぼくはうんこだらけのところでご飯を食べるのは嫌だよ」と話したことが転機になった。
「家ではお母さんがきれいにテーブルをふいてからご飯を食べる」と続けると、それまで掃除を嫌がっていた女児がはっとした表情を見せ、その日の夕方にはいちばんに掃除を始めたと言うエピソードもある。
村田園長は「自分たちの仲間だから、汚いところにいるのはかわいそう。自分だったら嫌だという思いが育ったのは大きい」と話す。言葉を話せない動物が何を感じ、何を求めているのかを考えることが、園児たちの思いやりを育てている。
冬には雪かきも大仕事だった。朝、登園するとまずヤギ小屋までの雪をかき、そこにたどり着かなければ掃除もできない。
園児たちは「えがおとつきがかわいそうだから」と頑張るだけでなく、どうすれば楽になるかを考えた。雪のなかで掃除しやすいように木を運んですのこ状に敷き詰め、作業のグループ分けも自分たちで話し合った。
ヤギは脱走の名人でもある。囲いを直し、杭を打ち、手直しを重ねても、すきあらば逃げ出そうとする。園児たちはおとなの作業を見て、柵にする木を切る作業を手伝ったこともある。
今回、生まれた2頭のうち、みるくは生後すぐに胎便が出ず、一晩だけ母ヤギと離れた。今もえがおがなかなか乳を飲ませてくれないが、体格は、はると比べて見劣りせず、順調に育っている。
「小さい子でも、理屈ではなく相手を思う気持ちがあるんだと感じる」と村田園長。ヤギの飼育を始めてから、園の様子は大きく変わったという。卒園児が小学校の帰りに様子を見に来たり、地域の人が声をかけたりすることも増えた。
同園では、ヤギの飼育を通して命の大切さだけでなく、世話をする責任、仲間と話し合う力、工夫する力を育んでいる。えがお、みるく、はるの親子は、園児たちにとって今や欠かせない存在になっている。
