「燕市旧配水場配水塔」として国登録有形文化財に登録されている新潟県燕市のランドマーク「水道の塔」の保存に取り組んだ市民団体「燕の水道の塔を愛する会」が昨年12月で解散。その清算後の残金8万6844円を水道の塔の保存、活用に役立ててほしいと関係者らが27日、燕市に寄付した。
会長だった早川賛治さん(79)、副会長だった高橋庸三さん(87)と高桑紀美江さん(76)の3人が市役所を訪れて残金を佐野大輔市長に手渡した。
解散した会が活動の区切りに寄付
水道の塔は1941年(昭和16)に完成。老朽化で取り壊しの話もあがるなか、地元を中心に保存を働きかけようと2011年に燕の水道の塔を愛する会を発足した。
早川会長は、保存運動の始まりを振り返り、「水道の塔の中に入って、残骸があって、2階にも上がって、これはきれいにしなきゃだめだな、登録有形文化財を目指すには、そこから始まった」と話した。
当初は地元でも賛否が分かれた。早川さんによると、町内で2回集まってもらい、保存か解体かについて説明を重ねた。初めは解体を望む声も多かったが、解体にも保存にも費用が大きく変わらないこと、構造上も保存できることなどを説明し、しだいに存続へと理解が広がったという。
「スカイツリーはこの水道塔をまねたような工法だという話も見せながら、皆さんに説明した。外壁をこれから直せば大丈夫だと納得してもらい、じゃあ存続ということになった」と早川さんは当時を思い出す。
3月議会で補修工事、クラウドファンディング型ふるさと納税も活用
佐野市長は、3月議会で水道の塔の補修工事が議決されたことにふれ、「水道の塔をしっかり保存していくということで、これから工事に入る。見守っていただきたい」と話した。
市では保存活用計画に基づき、外壁を表面的に補修するだけでなく、内部に補強材を注入して壁そのものの耐久性を高める工法で改修を進める考え。改良工事として管理業務委託費を含め3億6750万円を議決し、うち半分を国の補助金、残りをすでに行ったクラウドファンディング型ふるさと納税などを活用してまかなう。
佐野市長は「燕市に残る国の登録文化財として、今後どう守っていくかが大事。文化財全体の保存にクラウドファンディング型ふるさと納税を活用するなかで、水道の塔が象徴になる」と説明した。
「中に入れるように」活用への期待も
現在の水道の塔は、外壁がはげ落ちる恐れなどから近づけないようにしている。かつては記念イベントやコンサート、写生大会などでにぎわったこともあり、関係者からは、改修後に再び内部に入れるようにすることへの期待も出た。
早川会長は「中に入らないとだめ。出窓から眺められるといい」と話し、佐野市長も「実際に中に入れるようにするにはどう活用していくかを考えなければならない。細かな計画も含めてやっていきたい」と答えた。
水道の塔はまさに燕市のランドマーク。早川さんは「若いころ、三条で飲んでタクシーに乗ると、『水道の塔まで』で通じた」と懐かしむ。塔の近くに暮らす地元住民にとっては、365日見てきた景色でもある。
また、「昔は配水が流れている音がした。そういう思い出もあるが、今の若い人たちに話してもなかなか伝わらない」と話した。
市民の保存運動から登録有形文化財を目指す流れが生まれ、そして今、補修工事と活用へ向けた新たな段階に入る水道の塔。早川会長らの寄付には、その歩みを次世代につなぎたいという思いが込もっている。
