新潟県三条市・三条商工会議所青年部(三条YEG、本間隼人会長)は15日、燕三条のものづくりや食、文化を巡りながら、訪れた人自身が体験を書き込んで完成させる産業観光手帳「燕三条 Makers Journey(メイカーズジャーニー)」を発表した。「ガイドブック【知る・学ぶ】」と「リフィルノート【巡る・体験する】」の2冊をセットにし、税込み1,650円。初版500部を用意する。
同日、JR燕三条駅で完成記者会見を開き、三条YEGの本間会長と燕三条プロモーション委員会の高橋達也委員長らが事業の狙いや内容を説明した。
あえて「未完成」、観光客自身がページを埋める
最大の特徴は、完成された観光ガイドではなく、あえて「未完成」の状態で販売すること。
高橋委員長は、駅や観光拠点に並ぶ無料パンフレットは、情報を得るには便利な一方で、観光地を訪れて写真を撮り、情報を消費して終わりがちだと指摘。「情報を消費して終わる観光から脱却したい」と話した。
手帳を完成させるのは購入した本人。訪れた工場や、職人と交わした言葉、手に入れた道具、心に残った風景などを書き留め、旅を重ねるほど世界に一冊だけの「産業探訪記」に育っていく。
燕三条には魅力のある工場や飲食店などが広く点在する。初めて訪れる人から「どこへ行けばいいのか」「どう巡ればいいのか分からない」という声もあった。三条YEGのメンバーが実際にまちを歩き、工場を訪ね、職人の話を聞き、食事や宿泊も体験して、「ぜひ訪れてほしい」場所や巡り方を編集した。
本間会長は、これまでニューヨークやスペインでの事業などを通じて燕三条の魅力を発信してきた経験にふれ、「今までにない新しい形での燕三条の発信ツール」と表現した。
青の「知る・学ぶ」と赤の「巡る・体験する」
手帳はパスポートより一回り大きいA6判。青い表紙の「ガイドブック【知る・学ぶ】」と赤い表紙の「リフィルノート【巡る・体験する】」の2冊がセットになる。
「ガイドブック【知る・学ぶ】」は、燕三条の歴史や産業について事前に理解し、工場見学をより深く楽しむための読み物。「燕三条とは? 燕三条を見る、8つの視点」をはじめ、燕三条エリアの特徴、燕三条の金物、製造業の加工・工程用語解説、工場見学のマナー、農産物、燕三条用語集、イベント・祭事、アクセス情報などを盛り込む。
地域産業の「翻訳者」として活動する産業史料文化総合研究室の齋藤優介さん(48)=燕市=による書き下ろしも収録した。高橋委員長は、地域の歴史や加工技術を体系的に知ることで「工場見学の体験価値が格段に深まる」と話した。
第1弾は金型、鍛造、刃物、チタンジュエリーなどを巡る
「リフィルノート【巡る・体験する】」は、実際に燕三条を歩くための実践編。第1弾では、三条YEGメンバーの企業を中心にメンバー自身が工場を巡り、金型、鍛造、刃物、生花用の道具、チタンジュエリーなどのものづくりを取材した。
「工場を巡る旅」「コース」に加え、グルメ・お土産情報、宿泊施設、「ものづくりのまちの日常を発見する」などを収録。単に工場だけを巡るのではなく、食事や宿泊も組み合わせ、地域全体を楽しむ構成とした。
体験した項目にチェックを入れる「ミッション」も設け、実際に出かける動機につなげる。
6ページの方眼メモ、17件を書ける「燕三条発見リスト」
「リフィルノート」は読むだけではなく、書き込むためのスペースにも重点を置く。方眼のマス目が入った自由記入ページを6ページ用意。工場で聞いた話や印象に残った言葉、その場で感じたことを書くほか、訪問先でサインをもらったり、スタンプを押してもらったりする使い方も想定している。
さらに「わたしの燕三条発見リスト」では、自分で見つけたスポット、グルメ、アイテムなどを17件まで記録できる。タイトル、日付、ジャンル、レビューを書き込み、星による5段階評価も付けられる。
最後には「My profile」も設けた。旅先で情報を受け取るだけでなく、自分自身の発見や評価を書き加えることで、既製品だった手帳が次第に「自分の燕三条」の記録へと変わる。
リフィルを差し替え、ラーメンや包丁などテーマ別にも
赤い「リフィルノート」は今後の展開も見据えている。第1弾は工場巡りだが、将来は燕市の企業や別の地域へ対象を広げるほか、ラーメン、スプーン、包丁、旅館など、特定のテーマに絞ったリフィルも想定。追加したリフィルを同じカバーに収め、シリーズとして増やしていく考えだ。
一方、青い「ガイドブック」は燕三条の基礎知識を学ぶ基本編として、内容を大きく変えずに使用する。
高橋委員長は「観光地を巡るだけでなく、もう一歩深くこの地域を知りたいという人の好奇心に応えられる手帳」と話した。
カバーも三条製、いづみ商会の「BOOKSKIN」
2冊を収めるカバーにも燕三条のものづくりが生きる。三条市の(有)いづみ商会が手がけ、同社のビニール製品ブランド「VINILSKIN(ビニールスキン)」の技術を使ったビニール製しおり付きブックカバー「BOOKSKIN(ブックスキン)」を採用。2冊をまとめて収納でき、A6判の文庫本カバーとしても使える。
初版500部、12月には英語版も
企画・制作は三条商工会議所青年部で、株式会社燕三条が販売代理店を務める。初版は500部。地域の道の駅や工場、店舗などで販売を予定しているほか、10月1日から始まる「燕三条 工場の祭典」ではJR燕三条駅の案内所でも販売する。
さらに9月24日から27日まで東京ビッグサイトで開かれる「ツーリズムEXPOジャパン」での販売も計画している。
12月には海外での展示会出展に合わせて英語版も制作予定。すでに地元企業から英語版を求める声もある。
三条YEGは年度ごとに事業を展開する組織だが、売り上げを増刷や次のリフィル制作につなげ、事業を継続できる仕組みを模索する。今後は地域の技術を生かしたオリジナルカバーやしおりの展開、SNSを活用した企画なども検討している。
高橋委員長は、燕三条の産業観光をひとつの工場だけを訪れる「点」から、地域全体を巡る「面」に広げたいとし、「一度きりの観光から、何度でも訪れたくなるものへ」と話した。手帳を持った観光客が燕三条に繰り返し足を運び、地域を深く愛する人へ変わっていくような持続的な産業観光につなげたい考えだ。
関連リンク
- SANJO YEG Official(新しいウィンドウで開く)
