世界各地から集められた色鮮やかなチョウの標本を紹介する企画展「美しき蝶の世界―進化が描く、自然のアート」が、長岡市栃尾美術館(新潟県長岡市上の原町1)で開かれている。長岡市立科学博物館が昨年新たに収蔵した「宇納(うの)伸一郎コレクション」から、大型標本箱約100箱を初めて一堂に公開。会期は9月6日(日)まで。
個人収集とは思えない整然としたコレクション
展示されているのは、チョウの愛好家だった故宇納伸一郎さんが約20年をかけて集めた個人コレクション。宇納さんの没後、遺族の厚意で2024年に長岡市立科学博物館へ寄贈された。
宇納さんは岐阜県出身。幼少期から地元の名和昆虫博物館に通った。就職後は貿易関係のビジネスマンとして世界を飛び回る一方、国内各地へチョウの採集に出かけた。
60歳で心臓を患い、採集に出られなくなったことを機に、世界のチョウの収集を始め、80歳で亡くなるまで続けた。
標本は大型ドイツ箱約100箱に及ぶ。種の網羅性が高く、整然と整理され、個人コレクションでありながら博物館の収蔵品を思わせるほど。学術的な価値だけでなく、チョウの色彩に重点を置いたとみられる箱の構成にも、宇納さんの美的感覚と強いこだわりが表れる。
緑色のチョウには緑、青色のチョウには青の展示ラベルを付け、分類上は遠い種類をオレンジ色という共通点で同じ箱にまとめた例もある。一部のラベルにはチョウの意匠とともに猫の姿が描かれ、愛猫と暮らした宇納さんの人柄もしのばせる。
2万種の進化が生んだ「自然のアート」
地球上には約2万種のチョウがいるといわれる。その進化は約1億年前、夜行性のガの一部が花の蜜を求めて昼間に活動するようになったことに始まったとされる。長い進化の過程で、生息する地域や環境に応じて異なる色彩や模様を獲得してきた。
会場では、アフリカの砂漠を飛ぶツマアカシロチョウ、パミール高原の岩場に生息するウスバアゲハ、アマゾンのジャングルを舞うミイロタテハなど、遠く離れた世界のチョウを間近に観察できる。
有毒であることを警告する色をもつ種、有毒な別種に姿を似せた種、鳥を警戒させる目玉模様を備えた種など、生き延びるために獲得した多様な形や色を紹介。翅(はね)の表と裏で色や模様がまったく異なる種類もあり、進化が生み出した精巧な仕組みと造形美を楽しめる。
標本は適切に保存すれば100年、200年、さらに長く残すことができる。担当学芸員は、コレクションを伝えることは収集した人を伝えることでもあるとし、多くの人に標本を見てもらい、昆虫や標本、そして人について思いを巡らせる機会になることを願っている。
展示解説や子ども向け催しも
会期中は関連イベントも行う。長岡市立科学博物館の星野学芸員による展示解説を8月9日(日)午後2時から約30分、行う。申し込み不要だが観覧料が必要。
夏休みこども造形講座「ワイヤーアートにちょうせん!」を8月16日(日)午前10時から11時半まで行う。ワイヤーでアゲハチョウを作る。対象は小・中学生で定員10人、参加費1,000円。申し込みは8月8日(土)午前9時半から電話で受け付ける。
このほか、蝶の工作を楽しむオープンアトリエを8月4日(火)、5日(水)、6日(木)、7日(金)と開催。各日午前9時半から11時、午後1時半から3時までで、参加費100円。会期中は無料の簡単工作コーナーも設ける。
開館時間は午前9時半から午後5時までで、入館は午後4時半まで。月曜休館。観覧料は一般500円、高校・大学生250円、中学生以下無料。20人以上の団体は一般400円、高校・大学生200円。問い合わせは同館(電話0258-53-6300)。
