新潟県見附市出身のファッションデザイナー、山田萌永(もえ)さん(25)のブランド「AMUNI NOU(アムニヌ)」の受注展示会が27日、弥彦村の国登録有形文化財・旧鈴木家住宅で始まった。見附の伝統産業であるニット技術を生かした2027年春夏コレクションを中心に、学生時代のデザイン画や受賞作品、卒業制作など約150点を展示する。会期は8月2日まで。
山田さんはことし3月に国際ファッション専門職大学(東京都新宿区)ファッションクリエイション学科を首席で卒業し、東京から故郷へUターンした。在学中にアムニヌを立ち上げ、2026年秋冬コレクションで本格的にデビュー。見附市の職人と協働し、ニットウェアや織物を制作している。
パリ挑戦を前に新潟で初披露
東京都主催のファッションコンテスト「Sustainable Fashion Design Award(SFDA)」で東京都知事賞・優秀賞を受賞した。副賞として、来年1月にパリで開かれるファッションショーでコレクションを発表する。
今回の展示会は、パリ挑戦を前に故郷の新潟で活動を披露する初の機会。母屋の和室には2027年春夏と2026年秋冬のコレクション、蔵や2階には大学時代に描いたデザイン画、受賞作品、卒業制作、映像作品などが並ぶ。
山田さんは「単なるブランドの展示ではなく、どういう人間が作り、何を考え、どんな作品を作ってきたのかを知ってほしかった。自分自身の物語をたどってもらえたら」と話す。
「不完全さ」を肯定する服づくり
アムニヌのコンセプトは「To remain pure, forever.(永遠に無垢のままであるために)」。「不完全さを肯定する服づくり」をデザイン哲学に掲げる。
会場には、編み機のプログラミングで意図的に穴を開けたニットや、左右非対称の編み地、細い糸のジャカード編みでグラデーションを表現した作品が並ぶ。
山田さんは「整った美しい服ではなく、人が本来、持っている純粋で無垢な姿を表現したい。完璧でなくてもいい、そのままの自分を大切にしていいという思いを込めている」と話す。
2026年秋冬コレクションのテーマは「自然への帰路」。16歳のころに心臓の手術を受けた経験を踏まえ、身体にある「穴」を欠落ではなく、生き延びた証であり、内と外をつなぐ通路として服に表現した。
見附の伝統を現代の衣服へ
展示作品には、見附市の織物産地としての歴史を生かしたものもある。豪州の企画「OriOru 折を織る 2026」への招待作品「かたちの余白」は、見附の田園風景から着想した。
綿100%のドビー織物を使い、田畑や山々を思わせるグリーンを基調に、春のチューリップのピンク、日本海の夕日のブルー、秋の稲のイエローを織り込んだ。
学生時代の作品「花手毬」は、日本の伝統工芸である讃岐かがり手毬をもとに、500個以上の花手毬を手作業で制作。「時間」や「祝福」をテーマに、縮緬、デニム、メタリック、オーガンジーなど異なる素材を組み合わせた。
山田さんは「出身地のデザイナーが、その土地の職人や技術と一緒に独創的なものを生み出せることがブランドの強み」と語る。
春夏のテーマは「窓を開けて」
2027年春夏コレクションのテーマは「窓を開けて」。窓を「世界を見るためではなく、世界を迎え入れるためにある」と捉え、新しい風や光、出会いを受け入れる心を服に重ねた。
作品には新潟の山桜をイメージしたピンクや、田園や山々を思わせるグリーンを採用。旧鈴木家住宅の中庭や縁側、建物を通り抜ける風も、コレクションの世界観と重なる。
以前、同会場で開かれた画家の展示会を訪れて旧鈴木家住宅を知った。「風が通る広々とした空間で展示したかった。中庭や入り口の緑も作品に合うと思った」と話す。
見附とともに世界へ
大学卒業からまだ4カ月余り。展示会を重ねながら、制作、受注、製造、発信などブランド運営の経験を積んでいる。
「自分も3月まで大学生だったので、実践しながら考えている。自分にできるのは、後悔なく、妥協せず作品を作ること」と自身に言い聞かせるように話す。
16歳のころからパリに憧れ、「初めてフランスに入国するときは、ファッションの仕事で行く」と決めていた。来年1月、25歳でその夢をかなえる。
「自分が歩んできた日々と、新潟、見附で培われた伝統や技術が結集したコレクションにしたい。パリに新しい風を吹かせたい」。思いがあふれ出すように言葉も紡いで熱く語る。
展示会は8月2日までの午前10時から午後5時。会場は弥彦村弥彦1293-2の旧鈴木家住宅。
