新潟市西蒲区で母親と乳幼児のための夜カフェ「ヨナキリウム」を運営する滝沢日向子さん(30)が、公益社団法人日本青年会議所主催の「青年版国民栄誉賞」とも呼ばれる「JCI JAPAN TOYP」で全国知事会会長奨励賞を受賞した。全国でも例の少ない夜間に特化した子育て支援が評価された。
滝沢さんは燕三条青年会議所の推薦でエントリーした。全国から602人の応募があり、審査を経て最終ファイナリスト12人に選ばれ、全国知事会会長奨励賞に輝いた。6月に東京で授賞式が行われた。
夜泣きに苦しんだ自身の経験から
滝沢さんは7歳と4歳の子どもを育てる母親。自身も子どもの夜泣きに苦しみ、眠れない日が続いて心身ともに疲弊した経験がある。
そのころ、交流サイト(SNS)で反響を集めていたウェブ漫画「よなきごや」を読み、夜に駆け込める母親と赤ちゃんの居場所を知った。しかし、作品のような場所を現実に探しても見つからない。
「自分がこれほど欲しいと思うなら、同じ思いを抱えている母親はたくさんいるはず。ないなら自分で作ろう」と決意。2024年に団体「WHALE TAIL」を立ち上げた。
新潟市西蒲区の「まちづくりパートナーシップ事業」の補助を受け、2025年に全国初をうたうママと赤ちゃんのための夜カフェ「ヨナキリウム」を開設。1周年を迎え、現在は補助事業の2年目に入っている。
毎週水曜の午後10時から翌朝6時まで
ヨナキリウムは、JR巻駅前のカフェ「マキエキマエ」(新潟市西蒲区巻甲2548-1)で毎週水曜の午後10時から翌朝6時まで開く。祝日は休み。
夜泣きに悩んだとき、夜に心細くなったとき、誰かと話したいときに母親と乳幼児が立ち寄り、飲み物を飲んだり、ほかの利用者やスタッフと話したりしながら過ごせる。
授乳室、おむつ替えシート、ベビー用品、バウンサー、リラクゼーションスペースなどを用意。子育て経験のある女性スタッフが常時2人以上いる。託児施設ではなく、子どもだけを預けることはできない。男性は入店できない。
利用料金は1時間1,000円、4時間の半日プラン2,000円、8時間の1日プラン3,500円。母親だけで利用する場合は割引がある。短時間休みに来る人がいる一方、子どもが眠らず疲れ切った母親が朝まで滞在することもある。
運営の中核は滝沢さんを含む2人。約10人の有償ボランティアが支える。利用者に専門的な支援が必要なら保健師や専門機関につなぐ「ハブ」の役割も担う。
「あるだけで救われる場所」
子育ては24時間続くが、一般的な子育て支援施設の多くは日中に限られる。核家族化や地域のつながりの希薄化により、夜間の育児負担や孤独が母親に集中しやすい。
滝沢さんは「育児の質は親の余裕や状態にかかっている。追い込まれる親を少しでも減らし、子どもたちが健やかに育つ環境をつくりたい」と話す。
ヨナキリウムには三条市の親子の利用もある。「利用しなくても、そこにあるだけで救われる」といった声も。全国でも例の少ない「夜の子育て支援」という新たな視点と、社会に持続的な影響を与える可能性が今回の受賞につながった。
新潟市8区への展開を目指す
現在は行政からの補助を受けながら、将来的な自走に向けて運営方法を模索している。滝沢さんは、利用する母親からできるだけ料金を取らない仕組みを理想とし、行政、専門機関、企業と連携した運営を検討している。
大手企業から新潟市中央区での展開を打診されているほか、企業協賛や社会貢献活動との連携も視野に入れる。
今後は、新潟市内8区に1カ所ずつヨナキリウムのような場所を設けることが目標。各区で曜日を分担すれば、毎晩どこかに夜間の居場所を確保できると構想する。
滝沢さんは「まずは新潟市で夜の子育て支援が当たり前にある状態をつくり、全国のモデルケースにしたい。必要とする地域にも広げていけたら」と話している。
