新潟県燕市の佐野大輔市長は10日、吉田産業会館で開いた「市長とのふれあいトーク」で市の現状と今年度当初予算の考え方を説明。出席した29人に対して佐野市政が掲げる「稼ぐ燕市」「育てる燕市」「燕はひとつ」の3本柱をベースに人口減少時代にあって持続、発展するまちづくりなどを話した。
昨年10月に市長に就任した佐野市長の初めてのふれあいトーク。4月26日の41人が参加した燕地区・中央公民館を皮切りに、この日は2会場目。このあと17日に分水地区・分水福祉会館で開く。
合併20年で人口は約1万人減
佐野市長は、燕市が合併からことしで20周年を迎えたことにふれ、合併当時の人口8万3103人が昨年は7万3742人となり、約1万人減少したと説明。とくに20代、30代の減少が大きく、出生数も698人から387人と半減近くに減り、「人口減少は着実に進んでいる」と危機感を示した。
一方で、社会動態は改善傾向にあり、2009年には322人の転出超過だったものが、昨年は26人の転出超過まで縮小。県内では人口減少率が比較的低い自治体のひとつに位置しているとした。
今年度予算は483億5700万円
今年度当初予算は483億5700万円。佐野市長は「変化の兆しが見える予算」と位置づけ、前年度より約9億円減としながらも、主要施策は引き継ぎつつ重点化を図った。
「稼ぐ燕市」では、新産業創出、地場産業の販路開拓、事業承継の基礎調査、ISO9001認証取得支援、DXやロボット導入支援、工場の暑熱対策などを進める。農業では若手担い手の確保、稼ぐ農業の支援、有害鳥獣対策に取り組む。観光では食の土産品開発や産業観光の受け入れ体制づくりを進める。
小学校給食費を無償化
「育てるつばめ市」では、小学校給食費の保護者負担をゼロにする。中学校については物価高騰分を市が負担し、保護者負担は据え置く。
医療的ケア児を一時預かりして保護者の休息を確保するレスパイト事業、不登校児童生徒の居場所づくり、子どもたちが燕市への愛着を深める「挑戦プロジェクト」なども進める。
「燕はひとつ」では、出張ふれあいトーク、子ども会議、自治会やまちづくり協議会の支援、合併20周年事業などを展開。「行政だけで人口減少に立ち向かうことはできない」とし、官民一体、世代を超えた協力を求めた。
1人5000円のクーポン、水道基本料金6カ月免除も
物価高騰対策として、5月末から「つばめ応援フェニックスクーポン」第8弾を配布する。今回は1人あたり5000円分で、4人家族なら2万円分となる。使用期限は12月31日まで。
また、6月検針分から6カ月間、水道料金の基本料金を免除する。ただし免除は基本料金のみで、使用量に応じた料金は通常通り徴収される。
一方で今年度から下水道使用料を改定する方針も説明。燕市の下水道使用料は県内で最も低い水準で、32年間改定してこなかったとし、経費回収率や国の基準を踏まえて適正化を図るとした。
吹奏楽部保護者「楽器修理費の支援を」
意見交換では、燕中学校吹奏楽部の保護者は「娘から楽器の修理費をくださいと言われて来た」と切り出し、部活動の地域展開が進むなか、楽器修理費の負担増に不安を訴えた。
楽器は学校備品として大切に使っているが、古くなって故障が増え、修理費は1000円ていどから10万円規模まである。修理不能なケースもあるとした。
吉田中学校では、体験入部で「壊れた楽器しかなく、新入生に壊れた楽器をさわってもらっていた」という現状も紹介。燕中学校のバスドラムは昭和54年製で、市長より年上の可能性もあり、「壊れたら部品がなく買い替えしかない。1台30万~50万円する」と話した。
「安全な道具で音楽を楽しみ、燕市に愛着を持って戻ってきてくれる子どもたちのために、ぜひ支援を検討してほしい」と求めた。
小林教育長「吹奏楽の地域展開は全国的課題」
これに対し小林靖直教育長は、吹奏楽部の地域展開は全国共通の課題と説明。東京で開かれた関東地区教育長会議でも議題になり、「楽器修理、運搬、保管、活動場所など課題が多く、全国的に地域展開が進んでいない」と話した。
過去には基金を活用して楽器整備を行ったこともあるが、PTA支援などでも十分ではなかったと説明。小学校で使われなくなったマーチング用楽器や、生徒数減少で活動縮小した学校の楽器活用も含めて検討している。「子どもたちが前向きに練習やコンクールに取り組めるよう研究していく」と話した。
佐野市長も「来年度予算の中で状況を見ながら前向きに取り組みたい」と話した。
「図書館はどうなる」市民が質問
下粟生津地区の女性は、「図書館というと限られた人しか利用しないイメージもあるが、三条市のように人が集う施設になれば」と述べ、燕市の図書館整備構想について質問した。
佐野市長は、旧燕地区の図書館について「活用面で課題があるという声は受けている」と説明。吉田地区は道路に面し使いやすく、分水地区も公民館改修に合わせ利便性向上を図ったとした。
そのうえで、公共施設適正化計画の見直しを今年度、来年度にかけて進めるなかで図書館のあり方も示したい考えを表明。「単独で建て替えるだけでなく、三条市のように複合機能を持たせる形も含めて検討する」と述べた。
「働いて学んでよしの燕市に」
新潟市西蒲区から燕市内企業へ通勤する男性は、「訪れてよし、住んでよし、働いて学んでよしの燕市にしてほしい」と要望した。
市内企業では三条市、新潟市、弥彦村などから多くの通勤者がいる。「県立高校に通う生徒も含め、燕市で学んで働いてよかったと思えるまちに」と求めた。
佐野市長は、工場環境改善支援や子育て応援企業認定制度などを紹介。「男性育休取得率80%近い企業もある」とし、働きやすい環境づくりを進めているとした。
また、市内県立高校の志願倍率低下にもふれ、「吉田高校や燕高校に集まってもらえるよう魅力づくりを進めたい」と述べた。
男性からは「エアマンのCMのように若者が就職したくなる企業発信も必要」とも話し、佐野市長は「魅力発信をしっかり進めたい」と述べた。
ビジョンよしだの設備改善求める声
吉田地区の男性は、30年以上利用している「トレーニングセンター ビジョンよしだ」について、「改装後、プール前シャワーのお湯が不安定になった」と指摘した。
また、営業時間が午後10時まで延長された一方、「利用者が減っているように感じる」として、夜間利用状況やコスト面への疑問を投げかけた。
佐野市長は、シャワー設備について指定管理者と共有するとし、「利用人数の状況も確認し、多くの人に利用してもらえるよう周知も進めたい」と述べた。
小学生が質問「燕市を明るくするには」
「まちづくりに興味がある」という市内小学校3年生女子は、「理想の図書館を自由研究にする。燕市が明るくなるために私に何ができるか」と質問した。
佐野市長は、新設する「子ども会議」への参加を呼びかけ、「もっとこうなったらいいという意見を仲間と話してほしい」と応じた。
また、「未来のつばめ」を描く絵画事業も紹介し、「未来の燕市を絵で提案してほしい」と期待を寄せた。
中途障害者支援「制度の狭間を埋めて」
日本車いすダンススポーツ連盟の女性は、脳卒中や脊髄損傷など中途障害者への支援充実を求めた。
活動を通じ、「退院したい」「地域に出たい」という声を聞いてきた一方、支援につながらないまま亡くなった人や、諦めてしまう人も見てきたと説明。
中途障害者向け支援センター整備や、制度の狭間にいる人への支援、30~40代への支援について市の考えを尋ねた。
佐野市長は、「中途障害支援は抜け落ちがちな部分もある」との認識で、自立支援協議会や今後の計画策定の中で課題把握を進める考えを示した。
とくに移動支援の必要性に触れ、「アンケートも実施予定なので、現場の声をぜひ寄せてほしい」と呼びかけた。




