物流・運輸のマルソー株式会社(新潟県三条市)とエンタテインメント事業の株式会社LAND(東京都渋谷区)は8月31日、新潟市内で記者会見を開き、マルソーが保有する沖縄県宮古島市でタクシー事業を運営する太平タクシー株式会社の全株式をLANDが取得することで合意したと発表した。取得額は非公開。両グループの連携強化に向けた第1弾で、宮古島を舞台にモビリティ、観光、地域創生などの新たな事業やサービスの創出を目指す。
昨年6月にマルソーグループ入り
太平タクシーは1964年設立の宮古島のタクシー事業者。2025年6月にM&Aでマルソーグループに加わった。マルソーは宮古島が物流や観光客対応、廃棄物などの課題を抱えていることから、太平タクシーを足掛かりに島の課題解決に取り組む考えで進出した。
マルソーと宮古島をつないだ背景には、新潟県上越市板倉区出身の中村十作(1867-1943)の存在もある。中村十作は明治時代、真珠養殖を志して宮古島へ渡り、島民を苦しめていた人頭税の廃止運動に尽力した。現在も宮古島でその功績が語り継がれている。
マルソーの渡邉雅之会長は約3年前に初めて宮古島を訪れ、中村十作を通して新潟と宮古島との深いつながりを知った。その後、何度も島を訪れるなかで地域が抱える課題に触れ、「第二の中村十作となって、この宮古島を救いたい」との思いをもつようになった。
そのなかで太平タクシーをM&Aで取得したが、渡邉会長は「マルソーグループのノウハウだけでも宮古島の問題解決には、なかなか至ることができないと悩んでいた」と振り返った。
3月の出会いから連携へ
転機となったのが、ことし3月のLANDの和田直希代表との出会いだった。マルソーは、和田代表が以前、代表を務めたトキエアの株主でもあり、両者は以前から接点があった。
和田代表によると、渡邉会長との話のなかで「新潟を代表する物流会社であるマルソーとLANDで何かできないか」と議論が盛り上がったという。
LANDは一般消費者向けのサービスを得意とし、地域と利用者をつなぐ「スーパーアプリ」の構想も進めている。和田代表は、マルソーとの協業を具体化するうえで「一番フラッグシップになる事業が宮古島の太平タクシーなのではないか」と考え、今回の株式取得に至ったと説明した。
渡邉会長も株式をすべてLANDへ譲渡する一方、譲渡後も太平タクシーの取締役として経営に参画する予定。両社が一緒になって宮古島での取り組みを進める。
タクシーを起点に「新しい移動の形」
LANDは太平タクシーが宮古島で培ってきた地域密着の事業基盤を生かしながら、マルソーの物流などのノウハウと、LANDの消費者向けサービスやデジタル分野の強みを組み合わせる。
和田代表は、ライドシェアなど新しいサービスが登場していることに触れ、「モビリティというものはもっと民主化する」と今後の変化を見込む。
従来のタクシー事業の枠にとどまらず、移動を中心に物流や観光などを組み合わせ、「新しい移動の形」を太平タクシーで実現したい考えを示した。
また、会見後、タクシーの自動運転の可能性にもふれた。米国や中国ではすでにタクシーの自動運転による無人営業が始まっており、日本でもことし以降に特定エリアでの商用化や試験運行が本格化する見込みだ。
先に記者会見で発表したパーソナル航空機「VEGA(ベガ)」でも自動操縦の導入を検討しており、その技術を自動運転に生かしたい考えも示した。
宮古島は国内有数の観光地である一方、離島特有の物流や交通などの課題も抱える。マルソーが昨年、地域課題の解決を掲げて宮古島へ進出してから約1年。今度はLANDが太平タクシーの経営主体となり、マルソーと手を組んで地域交通を起点にした新たな事業づくりに取り組む.。
