任期満了に伴う新潟県田上町長選(5月26日告示・31日投開票)を前に、一般社団法人加茂青年会議所(丸山優瑠理事長)は17日、田上町交流会館で「田上町の未来を考える」パネルディスカッションを開いた。立候補を予定する現職の佐野恒雄氏(78)と新人の今井幸代氏(41)が出席し、産業振興、教育・子育て、医療・社会福祉、財政、田上町の今後について考えを述べた。
主催は加茂青年会議所まちづくりフォーラム運営プロジェクト。5月31日に控える町長選に向け、町民一人ひとりが町政に関心をもち、田上町の未来を考える機会にしようと企画した。当日は一般来場者を受け付けず、収録した動画を19日午前0時から6月1日午前0時まで同青年会議所の動画配信サイトで配信している。
4人が立候補した2018年の任期満了に伴う町長選に両氏とも新人で立候補し、佐野氏が当選し、今井氏がそれに次ぐ得票で涙を飲んだ。前回22年の町長選は無投票で佐野氏が再選している。
パネルディスカッションでは冒頭、加茂青年会議所の丸山理事長が「候補予定者の考えを聞く機会はなかなかない。この機会が田上町に住む皆さまにとって、町の未来を考える一助となれば」とあいさつ。進行は公開討論会支援リンカーンフォーラムが務めた。
討論は一問一答形式で、発言順や座席は事前のくじ引きで決定。告示前のため投票依頼や公約類似の発言を避けること、誹謗中傷をしないことなどを確認し、公正中立な運営で進めた。
産業振興 今井氏「外から人とお金を呼び込む」 佐野氏「農業と人の流れを柱に」
自己紹介で佐野氏は、田上町で生まれ育ち、会社役員や特別養護老人ホーム「あじさいの里」理事長、PTA会長などを務めてきた経歴にふれ、「オール田上でまちづくり」と「町民の幸福を追求するまちづくり」を基本政策にしてきたと説明。コロナ禍や物価高騰のなかでも「町民の生活を守ることを最優先に判断を重ねてきた」と述べた。
今井氏は、田上町で生まれ育ち、リクルートで企業の採用支援に携わった経験、町議として4期15年にわたって町民の声を聞いてきた経験を紹介。「暮らしを守り、役場を整え、田上町を未来へ進めたい」と述べた。
産業振興では、今井氏は「町内の仕事を守り、外からの力を呼び込むことが大切」とし、町内事業者支援、人材確保と定着、観光やふるさと納税、関係人口を通じた外部資金の獲得を挙げた。製造業を「町の稼ぐ力の柱」とし、国県の補助制度を事業者につなぐ必要性や、町長自らのトップセールスの重要性を強調した。
佐野氏は、農業の維持・発展と、人の流れと雇用を生み出す産業づくりを重点に掲げた。担い手不足や高齢化への対応、園芸作物など収益性向上への支援に加え、道の駅たがみや「たがみバンブーブー」などの取り組みを生かし、観光、商工業、農業、地域活動を連携させて町全体の活力につなげる考えを示した。また、八十里越開通に合わせて田上町が広域周遊ルートに組み込まれるよう宿泊拠点としての魅力向上と情報発信に取り組むことが大切とした。
教育・子育て 学校施設、給食費、保護者の時間支援も論点に
教育・子育てでは、佐野氏が「安心して子育てできる環境づくり」と「子どもたちの成長を支える教育の充実」を軸に説明した。小学校給食費の完全無償化、中学校給食費の段階的な無償化、不妊治療費助成などを挙げ、地域、学校、家庭が連携する「田上の子は田上で育てる」教育をさらに進めるとした。
今井氏は「子どもの数が減っても可能性は減らさないことが大切」とし、学びの質と安全、子育て家庭の経済的負担軽減、保護者の時間と心の余裕をつくる支援を挙げた。児童生徒数が今後、大きく減る見込みで、築40年以上の学校施設や町民体育館など文教施設全体について「統廃合ありきではなく、学びの質と安全をどう守るか、早い段階から情報共有と対話を始める必要がある」と述べた。
また、高校入学時の制服や教科書、通学用品などまとまった費用への支援、部活動の地域移行に伴う送迎負担の軽減、手続きや情報提供のわかりやすさも課題に挙げた。
医療・福祉 今井氏「困ったときに一人にしない」 佐野氏「地域で支える体制づくりを」
医療・社会福祉では、今井氏が「困ったときにひとりにしない田上町」を掲げた。医師不足や地域医療の維持は町単独で解決できないとして、県央地域、医師会、新潟県との連携を重視。買い物、通院、ごみ出し、見守りなど日常の小さな困りごとを早く見つけ、介護予防や孤立防止につなげる仕組みづくりを訴えた。
さらに、障害のある人や家族の将来不安、認知症による金銭管理、虐待、生活困窮などには、弁護士など法律専門家との連携も必要とした。
佐野氏は、医療体制の確保と、高齢者や支援を必要とする人を地域で支える体制づくりを重点に掲げた。県央基幹病院の整備や加茂病院の県立病院としての運営・維持など、関係市町村と連携してきた取り組みを挙げ、引き続き県や関係機関に働きかけるとした。
日常生活の支援では、デマンド型乗合タクシー「ゴマンド号」にふれ、通院や買い物だけでなく、将来的には子どもの通塾や部活動の地域移行に伴う移動など、多様なニーズへの対応も考える必要があると述べた。
財政 佐野氏「健全性を維持し選択と集中」 今井氏「町民に見える財政を」
財政では、佐野氏が「持続可能で健全な財政運営」と「自主財源の確保と効率的な行政運営」を基本に挙げた。人口減少で町税の大きな伸びが期待できないなか、優先順位を明確にした計画的な運営、企業誘致、ふるさと納税、地域資源を生かした産業振興による自主財源確保を進める考えを示した。
今井氏は、令和8年度一般会計予算約52億円について「今すぐ危機的ではないが、決して余裕がある状況でもない」と指摘。地方交付税や国県支出金に支えられている財政構造を踏まえ、国県制度を取りに行く姿勢、公共施設やインフラ老朽化を先送りしない財政、複数の選択肢と費用を町民に示す「見える財政」が必要だとした。
また、役場職員の退職増加にもふれ、町民サービスを支える組織体制の整備、業務見直し、デジタル化、外部人材や専門家の活用を課題に挙げた。
田上町の今後 人口減少のなかで希望をどう守るか
最後に田上町の今後について、今井氏は「人口減少の中でも希望を減らさないことが大切」と述べた。暮らしの安心、子どもたちと若い世代の未来、地域の元気と町政を広げることを3つの方向性を掲げ、「人口が減ることは避けられない。でも町の希望まで減らしてはいけない」とまとめた。
佐野氏は、町政の理念として「あなたの願いがまちをつくり、あなたの思いがまちを変える」、将来像として「誰もがずっと住み続けたいまち」を掲げてきたと説明。民間調査で幸福度や住み続けたいまちとして評価されていることにふれつつ、「変えていくべきものと守るべきものを見極めることが必要」と述べた。
動画は選挙当日まで配信され、主催者は町民に視聴とアンケートへの協力を呼びかけている。




