シンガーソングライターで保育士でもある絵本作家、中川ひろたかさん(72)の絵本を持参すると、中川さんがその絵本にまつわる思い出を語り、制作の舞台裏やエピソードを語ってくれる「絵本ライブ」が21日、新潟県燕市・重蓮寺で開かれた。
中川さんの絵本ライブは以前から各地で開かれている。今回は2000年まで活動した中川さんら3人組のチルドレン・ミュージック・バンド「トラヤ帽子店」の時代から中川さんと親しい地元のファンらの主催で開かれた。遠くは十日町市から中川さんのファンや保育関係者など30人近くが参加した。
冒頭、中川さんはアコースティックベースギターの弾き語りで「世界中のこどもたちが」を歌ってスタートした。
「こぶたのブルトン」はでたらめから生まれた
参加者が持参した絵本は『こぶたのブルトン』シリーズ、『いのちのたべもの』、『わすれんぼうのサンタ』、『あっぷっぷ』、『おおきくなるっていうことは』、『ふねなのね』、『そつえんするってことは』、『おばあちゃんすごい!』、『みんなともだち』など。中川さんがこれまでに手がけた約320冊の絵本から代表作や思い出深い作品を持ち寄った。
『こぶたのブルトン』について中川さんは、最初に書いたのは冬の巻で、春夏秋冬の4冊になったと紹介。「ものすごいでたらめな話を書こうと思った」としながらも、絵本は32ページの中で展開があり、最後は「どうしてもまとめたくなっちゃう」。主人公ブルトンの名前は、シュールレアリスム宣言のアンドレ・ブルトンから取ったことも明かした。
『いのちのたべもの』は、地元燕市のひとり出版社「おむすび舎」(霜鳥英梨代表)が中川さんに文を依頼して2017年に初めて出版した絵本だ。
食育をテーマにしながらも「これはだめ」と決めつけるのではなく、スーパーでの買い物や寄せ鍋を通して、海のもの、山のもの、命をいただくことが伝わるようにしたと説明。絵を担当した加藤休ミさんがクレヨンで描いたことにもふれ、同書は「1万部を超えました」と話した。
『おおきくなるっていうことは』はいちばん売れた絵本
中川さんの作品のなかで最も売れたのが『おおきくなるっていうことは』。子どもが高いところに登れるようになるだけでなく、「たかいところから とびおりても だいじょうぶかどうか かんがえられるのも おおきくなるっていうこと」という印象的な場面があり、持参した人はこの一節がいちばん好きと話した。
これについて、中川さんは絵を担当した村上康成さんが勝手に加えたと明かし、会場をわかせた。頼んだわけではない一文が読者の心をつかみ、多くの人が好きな場面として挙げるようになったと語った。
また、「音楽と絵本の構成はよく似ている」と話し、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビのように、絵本にも繰り返しや変化、展開があると説明した。
保育から生まれた絵本、『さつまのおいも』は行事絵本に
『さつまのおいも』をきっかけに、ピーマン村シリーズが行事絵本として広がっていった話も。中川さんは保育園の先生だった経験から、行事のたびに子どもたちへ読める絵本を作りたいと考え、七夕、クリスマス、正月、節分、卒園式、入園式などを題材にしたシリーズにつながったと振り返った。
手遊び歌「いっぽんばし」は、オリジナルの歌詞やメロディーが口伝えで各地に広がる中で少しずつ変化していったと紹介。「伝承とはそういうもの」と語り、楽譜からではなく人から人へ伝わる面白さを話した。1977年に作った曲で、来年で50年になることにもふれ、「来年50周年でアルバムつくるかな」と笑った。
最後は「にじ」で締めくくる
ライブの終盤には、中川さんが自作の図形をもとにしたTシャツの話も披露。目を閉じると浮かんでくる図形をメモし、それをデザインにした。
最後は代表曲のひとつ「にじ」を演奏。参加者は静かに耳を傾け、最後はさびを参加者と一緒に繰り返し、大きな拍手で終わった。主催者は「本当にぜいたくな時間を過ごさせてもらった」と感謝を述べた。
重蓮寺では過去にも中川さんとの縁があり、1988年ごろに燕市で行われたコンサートの思い出話も飛び出した。絵本、歌、保育、そして参加者それぞれの記憶が重なり合う一夜となった。
