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デザインでたどる「燕の金属洋食器デザイン展」 大正のロングセラーから現代へ 燕市産業史料館で開幕

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燕市産業史料館(燕市大曲)で16日(火)から7月20日(月・祝)まで企画展「燕の金属洋食器デザイン展」が開かれている。国内シェア90%以上を誇る燕の金属洋食器を、製造技術だけでなくデザインという視点から紹介。大正時代から受け継がれるロングセラーや、グッドデザイン賞を受賞したカトラリーなど約170点を展示している。

燕市産業史料館で開かれている「燕の金属洋食器デザイン展」
燕市産業史料館で開かれている「燕の金属洋食器デザイン展」

燕における金属洋食器製造の始まりは1911年(明治44)。国内の洋食器は高価な輸入品が主流だったが、捧吉右衛門商店(現・燕物産株式会社)が東京銀座の十一屋商店から受注したのをきっかけに、玉栄堂の合井栄蔵氏の手で36人分の洋食器を初めて製造したとされる。燕に江戸時代から伝わる鎚起(ついき)銅器の職人技が、その第一歩を支えた。

第一次世界大戦でヨーロッパの工場が軍需生産へ転換すると、燕には金属洋食器の大量注文が舞い込み、銅や真ちゅうを素材にした手仕事から、動力機械と金型を使った量産へと発展。美しい銀白色の色調をもつ銅合金「洋白(ようはく)」を使った製造も始まり、燕は名実ともに金属洋食器の一大産地へと成長していった。

大正時代から続く「月桂樹」

展示の見どころのひとつが、燕物産株式会社の「月桂樹」。大正初期に生まれ、今も愛され続けるロングセラーの銀食器で、英名は「Laurel」。上野精養軒の発注が原型とされ、1920年(大正9)に精養軒の結婚式場開設に合わせ、銀座十一屋商店を通じて捧吉右衛門商店へ注文があったと伝えられている。

大正期に製造された燕物産の「月桂樹」シリーズ
大正期に製造された燕物産の「月桂樹」シリーズ

素材は洋白銀めっき。洋白は銅にニッケル、亜鉛を配合した合金で、銀よりも安価で扱いやすく、そこに銀めっきを施すことで銀食器のような上品な輝きを出している。

月桂樹のデザインは、優美なフランスのロココ調を基調にしながら、縁取りに月桂樹、間に稲穂を配した和洋折衷の意匠が特徴。ナイフには「鎬(しのぎ)」と呼ばれる一定方向の細い筋目「目通し」も施され、狩猟道具としてのナイフの名残を伝える。

展示では何年か前に見つかったイタリア軒仕様の「月桂樹」も公開している。

輸出拡大とデザイン登録制度

戦後、燕の金属洋食器業界は世界への輸出拠点として急成長した。1950年(昭和25)に米国への輸出が始まると生産体制は急速に拡大した。1955年(昭和30)ごろには生産量の9割がアメリカを中心とした海外市場向けになった。

昭和の初めの洋食器の輸出用カタログ
昭和の初めの洋食器の輸出用カタログ

一方で、1956年(昭和31)以降、欧米各国は自国産業の保護を目的に日本の金属洋食器への関心を強めた。1957年(昭和32)には米国で輸入制限が発動。これを機に日本輸出洋食器調整組合が設立され、燕では輸出量の自主規制に取り組んだ。

同時に課題となったのが、海外デザインの模倣(もほう)問題だった。輸出品に独自のデザインを求める動きが強まった。

日本輸出金属洋食器工業組合が1967年(昭和42)にデザイン自主登録制度を開始した。登録を受けた金属洋食器には、デザインの名称、登録番号、登録年月、提出企業名などを記した登録証が付けられた。展示では、当時の登録証や登録された金属洋食器の一部も紹介している。

日本輸出金属洋食器工業組合お登録を受けた金属洋食器
日本輸出金属洋食器工業組合の登録を受けた金属洋食器

小林工業「No.1100 デラックス」も

小林工業株式会社の「LUCKYWOOD(ラッキーウッド) No.1100 デラックス」も注目だ。1959年(昭和34)にデザインされ、翌年の発売以来、今も愛され続けるカトラリー。素材は18-10ステンレスで、日本人の体格や食習慣に合わせ、皿の角度や使いやすさまで追究して設計された。

当時は海外デザインの模倣が問題となる一方、国内でもオリジナルデザインへの意識が高まった。通商産業省(現在の経済産業省)がGマーク制度を創設。カトラリー分野でも産業工芸試験所が主導するオリジナルデザインの提供企業として小林工業が選ばれた。

小林工業「No.1100 デラックス」
小林工業「No.1100 デラックス」

デラックスは1966年(昭和41)にグッドデザイン賞、1982年(昭和57)にはグッドデザイン賞ロングライフデザイン賞を受賞している。1960年代ごろになると、日本は価格ではなく品質やデザインで勝負する時代に入っていく。デラックスはその先駆けのひとつだった。

用途に応じたスプーンの広がりも

展示では、食卓で使われる基本的なカトラリーだけでなく、イチゴスプーン、アイスクリームスプーン、カレー用スプーン、給食用、福祉用など、場面や用途に応じて生まれた多様なスプーンも並ぶ。

デザインは単に見た目の美しさだけではない。食文化、年齢、性別、使う人の体の状態によって求められる形は変わる。展示は、燕の金属洋食器産業が「使いやすさ」と「美しさ」を両立させるため、研究と開発を重ねてきた歩みを伝えている。

小林工業の「LUCKYWOOD ピカチュウパーソナルセット」
小林工業の「LUCKYWOOD ピカチュウパーソナルセット」

7月5日に日本金属洋食器工業組合・小林貞夫理事長が作品解説会

企画展は午前9時から午後4時半まで。休館日は月曜で、祝日の場合は翌平日。入館料はおとな400円、小・中・高校生100円。7月5日(日)午後2時から3時まで、日本金属洋食器工業組合の小林貞夫理事長による作品解説会を開く。参加無料だが入館料が必要。

ミュージアムショップでは、企画展出展企業が製造した金属洋食器も取り扱っている。

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