燕三条ものづくり連携フォーラムの目玉、日立製作所の庄山悦彦相談役による特別講演、中小企業的経営やベンチャー精神を求める (2012.9.27)

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25日から27日までの3日間、燕三条地域地場産業振興センターで開かれている第10回加工技術の進歩に関する国際会議(ICPMT2012)にあわせた燕三条ものづくり連携フォーラムの目玉、日立製作所の相談役、庄山悦彦さん(76)による特別講演が26日、同センターリサーチコアで行われ、会場いっぱいの約200人が聴講した。

燕三条ものづくり連携フォーラムで行われた日立製作所の庄山悦彦相談役を講師に特別講演
燕三条ものづくり連携フォーラムで行われた日立製作所の庄山悦彦相談役を講師に特別講演

初めに鈴木力燕市長があいさつした。鈴木市長は県職時代、中越地震で新潟県の産業が壊滅的な打撃を受けたときにも、これからどうしていったらいいか、新潟県の産業に元気を与えてほしいと新潟産業創造機構の季刊誌『NICOプレス』に庄山さんから特別寄稿を書いてもらったことを紹介した。

今回のフォーラムでは「厳しい経済環境のなかでこの地域の産業に勇気とやる気を与えていただきたい」と講師を依頼し、特別講演が「ビジネスチャンスをつかむヒントになれば」と願った。

上越市高田出身で5人きょうだいの末っ子、東京工大卒で59年入社

庄山さんは東京工業大学理工学部電気工学科を卒業し、1959年に日立製作所に入社。1999年に第七代日立製作所社長に就任した。特別講演では「世界に向けた日本のモノづくり」のテーマで1時間半余り話した。講演後は同センターでの技術系開発製品展示を見学し、交流会にも出席した。講演の概要は次の通り。

庄山さんは上越市高田の出身で5人きょうだいの末っ子。「新潟県の産業と言えば燕でした」、「頑張り抜く、これが越後の人間の強さ」と始め、鈴木市長から燕ジュニア検定のテキストをもらったようで、「燕市を良く勉強しろっていうことで、わたしもそのうち試験、受けるんでしょうかね?」と笑わせ、燕市の取り組みを評価した。

講演する庄山さん
講演する庄山さん

「中小企業的経営をわたくしどもは大切にしている。これがひょっとすると日本的経営のルーツではないかと思う」。個がしっかりしていなければならないが、縦組織を強くする方向が行き過ぎ、横連携ができないと、今のようなイノベーションが求められ、グローバルな時代にはだめ。そのためにはこうした場を通じていろんな企業と話し合い、ヒントをもらって横連携ができる。

東日本大震災への対応、日本のエネルギー政策について

東日本大震災で被災地は我慢強いがいつになっても方向性が見えず、心配が増えている。エネルギー全体の問題は中長期的に物事を考えるくせをつけたい。「すぐ原子力はやめた方がいいんじゃないかとかですね、そういう議論に終わるってことは、非常にわたしは残念」、「世界中からも批難されたり笑われたしている」。政府も考え方が変わりつつあるが、「ポピュリズム的な発想が強く」冷静に真剣に考える必要がある。

サプライチェーン全体も問題になり、ひところは在庫を減らすのに懸命だったが、経済面もあるものの、ものによっては在庫をもって被害を小さくすることも大切。東日本大震災で得た反省を5つ、次の大震災への備え、大震災からの復興を日本が抱えるデフレ脱却や財政再建を一気に片付けられないか、復興事業のあり方を過去の歴史に学ぶ、エネルギーミックス、政治の安定がある。

エネルギーミックスは、一昨年に策定された日本のエネルギー政策では、2050年のCO2排出量を1990年比80%減を目標に、70%を原子力、20%を再生可能エネルギーとしたが、東日本大震災による原子力発電所の事故で「急に原子力はゼロだとかって言うのは、本当に真剣に考えてくれてんのかなと。まあ最近、変わりましたからもう、これ以上は言いませんけれども」と苦言。政治の安定は、与野党一致して窮状を救ってほしいと求め、経済の問題としてデフレ、高い法人税、貿易が自由化されていないこと、高い電力料金などをあげた。

会社に入って学んだこと、大きな赤字だった社長就任時のメッセージは「信頼とスピード」

厳しい就職難のなか、1959年に入社し、アナログコンピューターで自動制御を手掛けたいと考えていたが、工場で場長に「だろう設計」、「トンネル設計」、「ダボハゼ設計」、「お祈り設計」をやるなとしかられた。

管理者は「呼び出し太郎じゃだめだ」と言われた。上に立ったら担当者に任せっきりにして何かあると担当者を呼び出すのではなく、自分でも80点くらいとれる説明ができるくらいに勉強しておけと盛んに言われた。最近は細分化、専門化が進んでそれも難しくなってきている。ゴルフもそうだが、習うならプロに習えで、だから場長はプロじゃなければならない。

日立精神は和、誠、開拓者精神。和は喧喧諤諤で議論しても決まったらひとつに一致団結する。誠は高い志や誠実。開拓者精神は、日立は鉱山機械の修理工場から生まれた。その機械が輸入品だったが、それを何とか日本で作りたいというのが開拓者精神。これは社会人として最低限、必要なものを教えてくれた。

「落ち穂拾い」。ものづくりはどうしても事故が起きる。二度と起こさないために正直に反省し、対策を徹底する必要がある。「福島の4号機の発電機は、わたしのはんこ突いてあり、非常に微妙な気持ち」。

茨城のあと栃木の工場に移り、重電から冷蔵庫、エアコンの家電に変わった。消費者を相手に技術的に説明しても仕方なく、使いやすいか、安いか高いか、便利か、だけ。おかげでいろんな世界を見た。

講演後に鈴木市長や山崎悦次燕商工会議所会頭とともに技術系開発製品展示を見学する庄山さん
講演後に鈴木市長や山崎悦次燕商工会議所会頭とともに技術系開発製品展示を見学する庄山さん

99年の社長就任の前年、98年は日立が大きな赤字を出した。客の信頼が低下し、社員同士の信頼感も薄れた。社長就任時のメッセージは「信頼とスピード」とし、全社員の家庭にメッセージを郵送した。

大企業病、英国への鉄道車両納入

大企業病が問題になっている。チャレンジ精神がなくなり、個のモチベーションが低下する。ベンチャー的に一人ひとりがその気になってボトムアップで頑張らない限り、立て直せない。株主利益を言う人、個人のだけ力を言う人もいたが、そうではなく、日本的経営は個が強くなるようにその気にさせることが重要と考えた。社内ベンチャーを立ち上げようと指静脈認証やミューチップの開発も手掛けた。中小企業的な発想が必要になる。

98年の赤字の元凶だった半導体で、M&Aなどを進めた。GEと原子力関係の仕事を合弁でやり、手放したがIBMからハードディスクを買収するときも場長同士、トップ同士の現場の人が仲良く話をしないとうまくいかない。

99年から英国に鉄道の車両納入を進めたが、日本の車両はお呼びじゃなかった。欧州の有力3社が牛耳っており、注目されるまでに10年かかった。英国に工場を作る必要があるが、英国では保守契約が30年あり、若い人にも技術の継承が必要。2009年に英国で日立製作所が納入した高速列車用電車「クラス395電車」が運行開始するときのテープカットに出席し、英国の大臣などから納期を3カ月前倒しできたことを評価された。大使館や国交省も一生懸命、応援してくれて成り立った。日本の消費者の厳しい目が日本のものづくりを強くしたと感謝している。

安い労働力を提供していた国が一大消費市場に変わっている。地産地消型の製品にどんどん変わっており、そういうものに合ったグローバル展開をやっていかなければならない。日本の抱える中長期的問題は、「以前より勤勉さんやチームワークが少し薄れてきた」、「ハングリー精神がないと物事はうまくいかない」、「少し恵まれすぎたかな」。

アジアの本拠地を昔は日本だったが、今は中国やシンガポール。研究開発拠点も中国がいちばんで日本企業が2番。外国企業から見ると日本の生産拠点がどうなったのか。GDPは昨年、中国に抜かれてナンバー2になったが、2050年には中国のGDPは日本の6倍から7倍、インドも4倍くらいになると予想され、そのなかで日本はどういう特徴をつけてやっていくか。

イノベーションが求められる時代、中小企業は日本経済のダイナミクスの源泉、ベンチャー精神の重要性

イノベーションが求められる時代だが、物事を知っているのと仕事ができるのは何の関係もない。大事になってくるのはやっぱり想像力。知識や知恵、気づきを大事にし、尊重して取り上げていかないとなかなか価値のあるものはできない。

さまざまな展示物に見入る
さまざまな展示物に見入る

中小企業は、日本経済のダイナミクスの源泉。中小企業の特徴は機動性、柔軟性、創造性を発揮しやすいこと。ニッチトップでオンリーワンを目指すこと。アッセンブルは見かけ、売り上げは大きく見えるが価値が少ない。テレビはいい部品だけもってくればだれでもできるようになった。

中小企業には経営者と社員の連帯感があり、個別ニーズにきめ細かく応じる柔軟な対応力があり、経営における繊細かつ大胆な意志決定ができる。これはどんな企業にも必要になっている。横連携を大切にして、つながり力のある企業を目指すことが大事。そのためにはIT、ICTをうまく活用しなければならない。

ベンチャー精神をどうやって続けていくか。特徴あるものを作ることに徹しなければだめ。研究、開発の強化、産学官連携で特徴をつくれないかという思いがある。ものづくりは人づくりなので、科学技術人材を大切にしてほしい。

あえて失敗を許容する覚悟も必要。同じ失敗を繰り返すのは問題だが、反省に立って人間は高まっていく。あたたかい思いやりをもってほしい。

基本は人間を育てること、燕市名誉市民の原田泰夫九段にもらった色紙には「謙信公の闘志 良寛和尚の達観」

基本は人間。人を育てるのは中長期かかる。デジタルとアナログのバランスを大切にしなければならない。「心意気とフレキシビリティー」と言ったことがある。しかるべき立場になると人の声を聞かなくなり、それで失敗する。それを戒めるために「フレキシビリティー」を入れた。

燕市の名誉市民、将棋の原田泰夫九段(1923-2004)と面談したときに、そのことを言ったら、原田名人から「謙信公の闘志 良寛和尚の達観」と書いた色紙をもらった。確かにうまいことを言うなと。「心意気とフレキシビリティー」を日本語訳するとこうなるということらしい。

日本人はきちっとしていないと気がすまない、すばらしい民族。これだけものの考え方や技術をもっている国はほかにない。部屋にもうひとつ飾ってある額は、彫刻家の平櫛田中の「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」。北京五輪での女子ソフトボールの日本と米国の決勝で思ったのは「執念とチームワーク」だった。やはり大事なのは心。常に前向きで笑顔で頑張り、自身をもってやっていただきたい。

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