燕商工会議所でコメンテーターで『デフレの正体』でもおなじみの藻谷浩介さんによる経済講演会、120人が参加 (2013.5.17)

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燕商工会議所金融保険業務部会は16日、同商議所でテレビ番組のコメンテーターでもおなじみ、45万部突破の著書『デフレの正体〜経済は人口の波で動く〜』でも知られる(株)日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介さんを講師に「デフレの正体と地場ものづくりの活路」のテーマで経済講演会を開き、同商議所会員120人が参加した。

 燕商工会議所金融保険業務部会主催の講演会で講演する藻谷さん
燕商工会議所金融保険業務部会主催の講演会で講演する藻谷さん

藻谷さんは平成の大合併前の3,200市町村の99.9%を回っている。燕三条地域へも何度か足を運んでいる。ことし3月に三条市で開かれた「まんなか熱血トークバトル」でも講演したばかり。鉄道ファンで以前、新潟交通電車線に乗りに来たことがある。燕市は「吉田に市役所がいってしまったのがびっくり」と燕市や県央地域のことから話し始めた。

県央地域はものづくりというか、商売感覚が発達している。政府系のものが何もなく、商売をやっている人とものをつくっている人と寺しかないなどと、この地域を大ざっぱに評価した。

安倍首相に怒られていると言い、「アベノミクスは効果がありません」、「株は上がるが、それ以外の効果はない」と切り捨てた。東京では「円安でもう燕三条はこれで息を吹き返して万々歳だ、今ごろ飲み屋もめちゃくちゃにぎわっているだろうと思っている」。燕も三条も飲み屋がなくなって流行っているのは燕三条駅前の居酒屋だけというリアリティーから入る必要がある。円安も両面があり、「一つ言えるのは、動くのはいんだけど、あんまり急に動くのはやめてっていうのが全員のコンセンサスだと思う」。

「燕が生き残ってきたのは、世の中の逆張りをしてきた人ばっかりいたからです。大体、この農地の真ん中であえてものづくりをやるなんて逆張りもいいところであります」。いつの間にかアジア有数の農業適地で突然、ものづくり集団が発生した。

それからデフレの話へ。得意の政府などが発表しているデータをグラフ化して、それを基に持論を示した。日本の小売店売り場面積は1990年度で110平方キローメートルだったがのが2006年度には150平方キロメートルと36.7%も増えた一方、売り上げは141兆円から135兆円へ4%ダウンし、売り場効率は30%も低下した。実は売り上げは野田佳彦首相だった昨年は138兆円に増えていた。

国民の課税対象とされた所得は176兆円から190兆円になっていた。国民の所得がバブル期より所得が14兆円高かったのに、なぜバブルの時よりものが売れなかったのか、対策を打たなければならない。もうかった人は日銀の量的緩和、円安で株や配当でもうかった。「株屋をもうけさせるのが仕事だとしたら、政府は十分に仕事をした」と皮肉った。

120人が来場した
120人が来場した

圧倒的に60歳以上がもうかったが、高齢者は金を使わない。今回は前回以上に株が上がっても金を使わない可能性が高い。そういう人はすばらしい洋食器より万札を眺めているのが楽しい。「死ぬまで金をため込む人が増えているのが不況の原因」と指摘した。

どうせ死ぬんだったら、ためた金を使ってしまいたい米国系と大量の貯金を残して死んでやるという“貯金道”という人があり、参加者にどちらか手を上げて答えてもらうと大半が米国系。「これが燕の実力です」と笑わせた。

大前研一さんによると一説には死ぬときに平均3,000万円を残す。年間100万人死ぬので総額30兆円になり、日本で払われている年金は55兆円。残した財産を子どもが相続して使うというが、両親が死んで最終的に相続するのが平均67歳と言われ、再びため込む。

しかし、経済学はそうした人は想定していない。金融緩和が消費と実物投資を増やすのは、18世紀のアダム・スミス以来の考え方で、空論。緩和マネーは消費や実物投資に回らない。「人間だから金をもうけるのが当たり前だと思っている」。

「個人は自分が死ぬ瞬間の貯金額最高を目指している。これを貯金道と言う」。こうした貯金道から「どうやって金をふんだくるか、皆さんは考えなければならない」。

かつて日本人は30代までに生まれてきたうち半分が死んだ。だから子どもを4人生むことを3万年間、続けた。しかし医療が向上して長生きし、人口構成も成長期を過ぎた。ここらで少子化を止めるのが政府の最大の目的にならなければいけない。健康老人を増やすことが大切で、日本はほかの国よりはるかに高齢化してるのにまったく医療費がかかっていない。日本一の長寿県の長野県の医療費は全国最低で、長生きは問題ではない。

売れもしないのに大量にものを作って100円ショップで売りさばくことでデフレになった。人が減っているのにこの時代を続けている。やり方を変えないと永遠に不況が続く。経済評論家の計算式には人口の数字が入っていない。

ガソリンが1リットル150円で高いと言う一方で、その2倍の1リットル300円のミネラルウォーターを買う。それでもミネラルウォーターを買うのはインフレで、日銀の金融緩和でもインフレ期待のおかげでもない。100円ショップで買うのが当たり前と思ったら100円ショップでしか買わなくなる。何が社会にとって当たり前かで行動している。

「だから皆さんがやらなきゃいけないことは、おたくが売っている商品は高くても買うのが当たり前だというブランドを自分で作ることしかない」。それをやらない限り革命的に売り上げは下がる。

日本製品がクールではなくなっていることを心配しながらも、政府やマスコミが喧伝するように日本は凋落しておらず、アジア各国に対して日本はことごとく黒字であることをデータで示し、「アジアにはまだ勝てる」。

 講師の藻谷さん
講師の藻谷さん

中国の高齢富裕層にフェラーリがバカ売れし、フェラーリはブランドを維持するために生産台数を減らした戦略を紹介。スイス、イタリア、フランスに日本は負けている。「技術とか途中経過におぼれた人が死ぬんです。優れた技術は高く売って初めて技術です。優れた技術を安売りしてるのは技術を冒涜しとるんです」。

「こと燕の人に申し上げたいのは、皆さんはイタリア的なところがありまして、人間的には少し似てるところがあり」、「文化力に技術をくっつけて売るべき。その方が日本人が買ってる」と求めた。日本はドイツより技術が上だから貿易収支で勝っていたが、フォルクスワーゲンやアウディ、BMWなど少量で高く売れる方向にシフトし、ついに日本はドイツに負けるようになった。EUに対しても日本は赤字になっている。

「とにかく今から皆さん景気アップするから、試しに値上げすると思います。それで売り上げが減らなかったらどんどん上げてください。これは絶対、やるべき」。低価格品、大量生産の時代、自己満足の時代は終わった。生き残るのは値上げの天才のいる地域、企業だけ。ユニクロは「実は値上げの天才。マージンを4割とってるから。もっとはるかに安く売れるのに安く売ってません」、「見かけ安いか高いか」、「気付かれない利ざやをとるのが値上げの天才」。B to Bの成功例はインテルや自転車部品のシマノをあげた。

日本が高齢化の先進地であることにも注目。「新潟県は日本平均よりさらに10年ぐらい早く高齢化していたのです。佐渡島はさらにそれより15年くらい早く高齢化してきたので、佐渡島で生き延びている商売が日本中を席巻するんですね。故郷山口県も日本のなかではベスト3に入る高齢化県なので、そこでカジュアルウエアを年寄りに売るという奇跡を成し遂げたユニクロが今、世界を席巻している」。

“おひとりさま”の女性が食器だけは気張ってデパートで買ってきた惣菜を盛りつける、「例えばそういう習慣をいかに増やすかが大事。それは日本だけでなくて、シンガポールでも中国でも、そういう層が激増しているんです」。そして「日本で起きたことは世界中で起きる」。

50年後に人口が半分になっても若い人の収入が2倍になると日本経済は縮小しないと考えられる。若い人はものを買い、車も2台、3台、買うかも知れない。「若いやつに金をやって子ども生ませるべき」。もっと女性が働きやすくし、子育て中はだんなより早く家に帰られるようにする。

従業員に1円でも安くするために努力しているんだから1円でも安く売れと言っているやつが日本経済を破壊している。従業員に子どもを産ませる余裕がないと言ってるのは自分で自分の首を絞めてる。人件費2倍はできないと言うかもしれないが、すでにスイスは日本の2倍。ドイツ、イタリア、フランスでさえ実質1.5倍。

50年後に人件費を2倍にするのは「1年で1%人件費を上げていれば人口減少はまったく影響がありません」、「企業の目標として、従業員の平均的な子どもの家族の人数を増やすぞという目標と、努力してできれば1年に1%ずつ総人件費を上げるぞと、ことし無理だったら来年は2%上げるぞと目標を立てるべきなんです」と出席した経営者らに期待した。


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