三条別院の依頼で玉川堂が製作した親鸞聖人七百五十回御遠忌法要を告げる世界初の鎚起銅器製の駒札、最後の着色作業が終わって完成 (2014.4.10)

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真宗大谷派三条別院(鷲尾幸雄輪番・三条市本町二丁目)から宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要を告げる世界初の鎚起(ついき)銅器製の駒札の製作を依頼された鎚起銅器の玉川堂(玉川基行社長・燕市中央通二丁目)は7日、最後の作業の着色を行った。

三条別院からの依頼で玉川堂が製作した鎚起銅器の駒札、最後の着色作業で緑青と硫酸銅の混合液にひたす
三条別院からの依頼で玉川堂が製作した鎚起銅器の駒札、最後の着色作業で緑青と硫酸銅の混合液にひたす

駒札は来年5月に行う七百五十回御遠忌法要に向けて三条別院参道に掲示するもの。三条別院では特別な駒札にしようとほぼ畳一枚分の巨大な駒札を燕市で伝承される鎚起銅器での製造を玉川堂に依頼。書は先にダウン症の書家、金沢翔子さんに依頼して制作するという、ビッグなプロジェクトになった。

1月31日に金沢さんの書を玉川堂に持ち込んで製作を開始。たがねなどを使って銅板を裏側からたたき、文字の部分を浮き上がらせて表現する彫金の手法で製作した。手掛けたのは玉川堂で働いて43年の匠、早川常美さん(58)。どうしてもひとりでは無理な部分だけほかの職人の手を借りたが、基本的な部分はすべて自分ひとりで作った。

作業を始めて2カ月余り、最後の作業の着色は、色を塗るのではなく、化学反応を利用して色を着ける。このために銅板全体が漬かる木枠の水槽を作った。そのなかに硫化カリウムを入れ、銅板をひたすこと数分。みるみる銅は酸化して黒くなり、紫金色に変わる。

 硫化カリウムに入れて紫金色に変わった銅板の文字の部分だけ磨くと地金の色があらわれて文字がくっきり
硫化カリウムに入れて紫金色に変わった銅板の文字の部分だけ磨くと地金の色があらわれて文字がくっきり

硫化カリウムから引き上げたらバーナーで乾かし、職人2人に手伝ってもらいながら、布に磨き粉をつけて文字の部分だけ磨いた。磨いた部分は酸化してできた黒い“さび”が削られて再びピンク色のようにも見える銅の地金が表れ、紫金色のなかに文字がくっきりと浮かび上がった。

ここまで約1時間。さらに熱くわかした緑青と硫酸銅の混合液に再び漬けて乾かすと、光の加減によって微妙に色合いが変わるようになった。最後にろう引き。最高級のろう、“イボタロウ”で磨いた。

“イボタロウ”は、はざ木の“イボタ”に寄生するイボタロウカイガラムシのオスの幼虫の分泌物からできている。バーナーで銅板の表面を熱しながら“イボタロウ”を引き延ばすと、光沢が生まれ、色にぐっと深みが生まれた。ここまで3時間近くかけて着色を終わった。

同時に駒板の裏側になる同じ大きさの銅板も着色した。これで玉川堂での作業はすべて終わり、あとは大工にお任せ。木の板の両面に表と裏の銅板を取り付けて完成する。

金沢翔子さんの落款と玉川堂の刻印も
金沢翔子さんの落款と玉川堂の刻印も

早川さんが手掛けたもののなかで、もちろん最大。ふつうは厚さ0.8ミリから1.0ミリの銅板を使うが、大きくて銅板自体がゆがむので、今回は1.2ミリに挑戦した。さすがの早川さんも「この厚さは初めてだったので、字の高さが出るかどうか、細かいところがちゃんとできるか心配だっけけど、思ったよりうまくできた」。

ふつうは材料の表に松ヤニをつけて裏からたたくが、今回は大きくて全体に松ヤニをつけるのは無理なので、代わりにゴム板を当てる方法でたたいた。また、材料を回しながらたたくところ、今回は材料を動かすのは大変なので、代わりに自分が動いてたたいた。

金沢さんの書は勢いのある運筆で、墨のかすれが効果的に作品に生かされている。かすれを彫金で表現するのは難しいが、そこは早川さんの長年の経験から、「完全にかすれを模倣するより、見栄えが良くなるようにうまく判断して表現したつもり」と言う。

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最高級のイボタロウで

「思えば、もうちょこっとこーせーばいかったと思う所はある。百点とはいかないけど、全体を通せば満足できるものができたんじゃないでしょうか。やっと肩の荷が下りました」と笑顔をこぼした。

仕事場に顔を出した玉川社長は、単に注文された仕事をこなすだけではなく、「若手に技や感性を伝える場にもなってほしい」と期待していた。その言葉通り、作業中は若い職人が時々、足を止めて作業のようすをのぞき込み、早川さんの技に見入っていた。

着色の作業は、三条別院の松浦武馬列座兼書記も同席。「いやもう、完成が待ち遠しいですね。どきどきわくします。さっきからずっと鳥肌が立ってます」。声を上ずらせるほど興奮して作業を見詰めた。と言うのも松浦さんも前職はエレキギターを作る技術者だった。ものづくりのだいご味を知っているだけに、説明されなくてもその技術のすごみを肌で感じる。

製作を担当した早川さん
製作を担当した早川さん

「御遠忌がいよいよ近づいているという勢いを感じますし、金沢さんの字にも力がある。見てるだけで気持ちがはやってきます」と話していた。

30日午後1時から三条別院参道で駒札の柱を立てる立柱式を行い、さらに三条別院境内も会場に使って行われる5月6日の三条マルシェでお披露目する。そして1年後の御遠忌法要まで毎日、駒札を磨いてまさに磨きをかけ、御遠忌法要後はその役目を終えるが、宝物として保存する考えだ。


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