三条しただ郷クリニック開院で下田地区の無医地区状態が3年半ぶり解消へ 環境をつくり人材も育てる (2019.6.22)

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新潟県三条市下田地区の荻堀にあった渡辺医院が2016年1月に閉院して以来、下田地区は無医地区状態が続いていたが7月1日、新たに「三条しただ郷クリニック」が開院し、3年半ぶりに無医地区状態が解消する。しかも開業するのは救急救命センター長の経験もある医師で、下田地区住民にとっては救世主のような存在だ。

三条しただ郷クリニックの玄関前で院長の池上さんと6人のスタッフ
三条しただ郷クリニックの玄関前で院長の池上さんと6人のスタッフ

三条しただ郷クリニックは、下田庁舎と続く敷地にある下田保健センター内で開院する。同センターの1階部分のうち約260平方メートルのクリニック部分を改修した。

診察室は2つで、一方はインフルエンザの疑いのある患者など感染症の疑いのある患者の待合と診察室に充てる。将来的に訪問看護ステーションが必要になった時のためにそのスペースも用意する。窓が広く光がたっぷり入り、自然のなかで働いているような開放的な気分にひたれる。

診療日は祝日を除く月曜から木曜の午前9時から正午まで、午後3時から6時まで。受け付けは午前8時50分から11時半までと午後2時50分から5時半まで。内科、小外科処置、初期救急診療、秋ごろから往診にも対応する。

待合室
待合室

院長は一橋病院を退職した池上敬一さん

開業するのは、東京都に住み医療法人社団青葉会が運営する一橋病院(東京都小平市学園西町1)を4月で退職した池上敬一さん(64)。大阪府生まれで宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)を卒業して医師国家試験に合格し、1981年から大阪府立千里救命救急センター(現大阪府済生会千里病院救命救急センター)での研修を皮切りに93年にJICA専門家(救急医療)としてマレーシア国サラワク州に派遣、93年から95年まで米国のハーバード大学医学部外科、ベスイスラエル病院へ留学したこともある。一橋病院には2017年から勤務した。

三条市が医師招聘コンサルタント会社を通じて下田地区で診療所を運営してくれる医師を探し、池上さんにも紹介があり、引き受けることにした。東京と下田を行ったり来たりで忙しく開院の準備を進めているが、東三条の新しい住まいに6月19日から本格的に移住。日本医療教授システム学会の代表理事の仕事があるため、開院後も当分は週末は東京へ戻り、2拠点生活のような形になる。

縁もゆかりもない下田地区で新たに開業医を始めるという決断に「直感で決めた」と話していた池上さん。医師は人口1,000人当たり1人必要と言われるが、下田地区は9,200人。医師仲間には「ひとりじゃ無理だと言われる」、「これから戦地へ送られる兵士もこんな気持ちだったのかなと思う」と笑う。

10年は働こうと体重を10kgしぼって健康も万全

池上さん
池上さん

「でも内心、55歳ぐらいの医師からみると、こんな話がないかなと思っていると思う」とも。「勤務医や大学の教職でリタイヤすると老健施設の院長になることが多い。わたしはそれはいやだった。チャレンジがないと。同じことしてって言われても無理だから」とこともなげに話す。池上さんにとっての下田は「移動中も含めてリゾートですね」。

とりあえず10年は働こうと腹をくくって引き受けた。この先、10年もつ体をつくろうと体重を10kgも落として準備してきたことからも本気度が伺える。

クリニックのミッションはまずスタッフの健康

スタッフは看護師と医療事務が3人ずつの6人で常勤は看護師2人と医療事務1人。早くからネットを活用して情報発信をしたこともあり、深刻な人手不足のなかにあって求人募集には定員の2倍以上の応募があった。「ちゃんと情報発信すれば認めてもらえる」。

「うちのクリニックのミッションはまずスタッフの健康」と言い切る。「スタッフがハッピーになるのが原則。住民のために全力を尽くす前提として。衣食足りて礼節を知る。まず自分たちが満たされていれば、人を満たすことができる」、「良質な医療は良質な生活から。それができないから日本はブラックになっている」と考える。

窓から下田の自然が広がる診察室
窓から下田の自然が広がる診察室

看護師が成長する環境をつくり人材を育成する

池上さんが代表理事を務める日本医療教授システム学会は、標準的な医療を安全・確実に提供できる医療職の育成に資するための学術的活動を行う団体。開院は、そこで研究してきたことの実践の場にもなる。「この現場でやるのは別に勉強会とかしなくても一緒に仕事をしてたら成長できる職場にしてやろうと思っている。看護師も成長できる職場でないといい人が来ない。それを多分、感じとってくれたのでは」。

また、「雇用の場をつくる責任もあると思っている。安心してここで成長して育っていけるというサイクルができれば。環境をつくって人材を育成する。すべては人材育成ですね」。スタッフ6人のうち4人が下田地区在住か下田地区の出身。すでにSNSを活用して準備し、コミュニケーションをとっているので、まだ数回しか集まっていないのに、しばらく働いているかのように打ち解けている。

「スタッフも家族も大切にしてくれる。ということは患者さんも大切にしてくれる」と共感。池上さんの華々しい経歴と対照的な気さくさに「すごい人と思いきや…」と池上さんを含めてすっかり打ち解けている。

下田地区に限らず地元では、池上さんの知見に期待するところが大きい。県の厳しい財政があって雲行きがあやしくなっているが、地元では平成30年代前半の県央基幹病院の開院が見込まれている。「日本救急医学会の救急専門医は新潟県内に9人いて、8人は新潟大学で1人は長岡日赤でほかにいない。急性期病院のひとつの機能が救急医療だとすると、救急医療については僕はプロだから使ってもらえれば貢献できる」と話している。

23日(日)は午後1時から3時まで市民向けの内覧会を開き、3時半から池上院長による診療説明会を開く。

(佐藤)

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