アウトドアブランドのスノーピーク(山井梨沙社長・本社:新潟県三条市中野原)は8日、「Snow Peak 未来構想プロジェクト」の第一弾として新潟本社「Headquarters」の敷地内に温浴施設を中心とした自然を感じる複合型リゾート「FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS(フィールド スイート スパ ヘッドクォーターズ)」を2022年春に開業すると発表した。
キャンプフィールドを併設している新潟本社の敷地を約5万坪から約15万坪へ3倍に拡張した。複合型リゾートは道路をはさんだ本社向かい側で建設が進んでいる。建築面積は2,007平方メートルで、地下1階1,360平方メートル、1階600平方メートルの延べ床面積2,133平方メートル。設計は、新国立競技場や三条市が建設中の図書館等複合施設を設計した隈研吾さんが手掛ける。
施設は中核となるスパに加えてレストランや宿泊施設を備える。スパは約400?平方メートルで最大収容人数240人。レストランは約140平方メートルで65席。宿泊施設はヴィラ棟が100平方メートル1棟、50平方メートル2棟で、隈研吾さんとスノーピークによるトレーラーハウス「住箱」も4基を設置予定。ほかにリラックスラウンジやショップも備える。
7日から9日まで新潟本社で開かれている大規模総合展示会「Snow Peak LIFE EXPO 2021」で2日目の8日、その記者発表が行われた。山井梨沙社長は「衣食住、さらに社会のなかで働くこと、われわれが長年、軸にしてきた遊ぶという人間にとって大切なライフシーンに領域を広げることで、あらゆるライフステージ、ライフシーンにかかわる生きるためのブランドになっていく」とし 、「中長期的には衣、食、住、働く、遊ぶをすべて可視化した未来構想プロジェクトをこのHeadquartesで実現しようと考えている」とスパ施設建設の思いを話した。
「2023年以降は衣食住働く遊ぶのすべての事業を可視化し、生きるための自然志向のライフスタイルを届けるフィールドへと成長していく」とし、「フィールドスイートスパを中心に、この新潟県三条市の豊かな自然のある土地で、さらに多くの人に身近に自然を体感していただける施設にしたい」、「豊かな自然を感じられる天然温泉やたき火を囲む感覚を彷彿とさせるサウナなど、心から癒される新たな滞在を提案していく」と方針を述べた。
隈研吾さんがプレゼンテーションを行った。隈研吾さんは「スノーピークの初めてのスパということで多分、ものすごく注目されてると思うし、わたしもある意味で世界から注目される画期的なスパという気持ちでデザインした」と始めた。
屋根の高さを抑えて景観になじませながら周りの風景、周りの山並みに溶け込むような隆起した屋根の形状にした。イギリスの雰囲気でゲストを迎える薪(まき)屋根にした。約2万本の薪を屋根に使う。多分、そんなに薪を使った建築は世界に例がないと思う。
薪は火を、自然を強く感じられる体験だが、キャンピングのハート、心である中心となるような感じをインテリアのコンセプトにした。
メインの空間の薪屋根は、天井も屋根の形状に沿って隆起している。中の什器(じゅうき)なども含めて薪のイメージを大切にした。正面は4面ガラスで、森、粟ヶ岳と一体になったフォレストダイニングのスペース。今回は食も大事な要素になってくるので、ここで食を堪能できる。
ローカルマテリアルと題して左側の壁は燕三条の伝統を感じるメタルウオール、燕三条の職人が金属を使ってさまざまなものを作ってきたことを感じられる壁。右側の壁は現地の土を実際に使って塗った壁。燕三条の伝統のうえにつながる建物ということが感じられるものになる。
ビューバスはスノーピークの初めてのスパなので、ある意味での究極のビューバスになっている。手前の露天風呂のスペースは透明なガラスで、右側が中の風呂で、左側のデッキが外気浴のデッキ。外気浴のデッキはここまで大きくとれる例はほとんどない。特別なサウナがあって、そこに大きな水風呂があって、そこの外気浴のテラスとが一体になっている。
ふつうはプライバシーのこともあって外気浴のテラスをなかなか設けられないが、今回はこれだけの幅の外気浴テラスがあって、目の前に粟ヶ岳があるという特別な体験ができる。
ヴィラは森の中に3棟、分棟で立つ。冬は2メートルの積雪があり、雪に溶け込むような空間。ヴィラの中にいると本当に暖かさを感じられる空間になる。
最後に「これはコロナのあとに、新しい時代のライフスタイル、衣食住に働く遊ぶを付け加えるという話が社長からもあった。そういう新しいコンセプトをまさに体現した施設になると思う。コロナは建築のデザインの一部にとって非常に大きないわゆる折り返し点じゃないかと思う。今までは都市に集中して都市に向かって建築のデザインがされてきたが、これからは反転して、折り返して自然の中に向かうという大きな時代の変わり目に、われわれは直面している。まさに新しい時代に、ある意味で絶好のタイミングで、このような新しいデザインの施設を世の中に届けることができるのは本当にスノーピークのパワーだと思う」と述べた。
あいさつに立った山井太会長は、当初はHeadquartersが完成した2011年にスパを併設しようと思っていたことを話した。当時のスノーピークの売り上げが30億円弱のときに本社の建設費に17億円ぐらいかかったため、スパの建築は断念せざるを得かった。
それから10年たったが、「結果的には10年かかったことが逆に隈研吾さんとの縁をいただいたし、いちばんスノーピークらしい、いい形でリリースできるのかとも思う」
レストランは日本のミシュランのなかでもトップ・オブ・ザ・トップの「神楽坂 石かわ」のシェフ、燕市出身の石川英樹さんが監修する。先に長野県白馬村に開業した「LAND STATION HAKUBA」のレストランも石川さんが監修して好評を得ている。
隈研吾さんも常連のひとり。山井太会長は「石川さん監修の食事もでき、素晴らしい温浴施設やヴィラをお楽しみいただけるのが、このわれわれが本当に大事にしている本拠地であるHeadquarters、燕三条の地にできるということは、燕三条で生まれ育ち、仕事をさせてもらっているぼくにとっても特上の喜びだし、きょういらっしゃっている皆さんがその施設を愛してくださり、その施設でこれから竣工後、磨かれていくことを期待している」と述べた。