14日(水)を宵宮、15日(木)を大祭に新潟県三条市・八幡宮(藤崎重康宮司)で春季大祭、通称「三条祭り」が行われる。15日午後から行われる名物行事の大名行列は、昨年から女人禁制が解除。昨年は、はやし方で女性が参加したのに続き、ことしはやっこでも初めて女性2人が参加して大名行列に新たな1ページを刻む。
やっこを担うのは三条先供組合(山田貴之会長・組合員55人)。第一番と呼ばれる行列の先頭集団で、先箱(さきばこ)や長柄(ながえ)、槍(やり)を持って行列を先導する。
2人1組になって長柄や槍を投げ渡したりする演技を行いながら「えーとまーかせー」、「えーあれわいさーのさー」とかけ声を上げながら進んで邪気を払い、道中の安全を確保する。10日から12日までの3日間、三条市厚生福祉会館に集まって練習した。
女性初のやっこに名乗りを上げたのは、いずれも三条市に生まれ育った保育士・倉橋由佳さん(39)と第二中学校3年・鳥羽一花さん(14)だ。
倉橋さんは小学生のころからやっこにあこがれ、「ずっと(やっこの)おっかけしていた」と言う筋金入りのやっこファンだ。これまで大名行列は男性しか参加できなかったので、「やりたいけどできないから、モップとか長いものを投げていた」とあきらめていたが、女性も参加できると聞いて手を上げた。
倉橋さんにとってやっこの魅力は、「かっこいいじゃないですか」のひと言。実際に練習に参加してみると「皆さんのやっこが好きな熱が伝わってくる。かっこいいと思った」と、中に入ってみてもやっぱりかっこいいイメージは変わらない。
練習最終日の12日は、筋肉痛との戦いも。「かけ声のタイミングとか見てるだけではわからなかった」と見ているだけではわからない難しさを感じながらも「女性初と大々的になってるから、恥じないように。とりあえず落とさないように」と先駆者の役割を果たせるよう気を引き締めていた。
鳥羽さんは小学生が大名行列を演じる「三条こども大名行列」に小学校2年生から6年生まで参加した。中学生になってからもサポーターとしてかかわっている。
いよいよ初めての本物の大名行列。長柄を担当する。「大技とか決められるように頑張る。今はめちゃめちゃ緊張している。とりあえず堂々とやりたいと思っている」と話している。
大名行列で後方に位置する八幡宮囃子(はやし)方組合には、以前から女性も所属していた。しかし女人禁制の大名行列に女性の参加を許されず、女性は本祭当日の朝から正午まで60軒ほどの氏子の家を回りながら演奏する「朝回り」にしか参加できなかった。
女性も大名行列に参加したいという声が年々、高まるなか、昨年の総代会で機が熟したとして八幡宮囃子方組合と、あわせて三条先供組合の女人禁制の解除を決定した。さっそく昨年は八幡宮囃子方組合の女性10人余りが大名行列に参加する歴史的な一歩を踏み出した。
もう一方の三条先供組合は、昨年は女性の参加希望がなかったが、ことしはついに女性のやっこが実現する。
会長の三条仏壇伝統工芸士・山田貴之さん(57)は女性初のやっこについて、一昨年まで女性が正式な衣装を着けて大名行列を歩けなかったが、昨年は囃子方(はやしかた)で女性が許され、「ことしになると一気に進み、誰も反対しないというか、動くときにはめちゃくちゃ簡単に動くんだなというのを実感した」と言う。
女性の参加によって「いやもう全然、華やかになった。雰囲気も違うし、今までのやっことは全然、違う感じがする。新しい時代が来たと実感している。今までのメンバーもやる気が違うし、今までこんなにけいこを一生懸命、やったのかなっていうぐらい、3日間、充実したけいこをしている。きっときれいなやっこを見せてくれる」と古いメンバーの刺激にもなった。
山田さんにとっては39回目の大名行列。今回、約30年にわたり会長を務めた赤坂一夫さんが退き、山田さんが会長に就いた。特別な年であり、「会長になれば思いも全然、違う。三条の皆さんから楽しんでもらうようなやっこを進めていきたい」。
ことし参加するやっこ40人は過去最多規模だ。「一昨年まで本当に人がいなくて大変な状況が続いたのに、いきなり去年ぐらいから参加が増えた。ことしはもう一気にっていう感じで増えた」と山田さんも驚く。
持ち物の数は決まってるので、本来は2人1組のところ3人でひとつの持ち物を担当し、交代しながら務める考え。まさにうれしい悲鳴だ。
15日の大名行列は午後0時50分に八幡宮を出発。参道から大通りを進み、5時から神輿(みこし)が八幡宮に宮入して舞い込みが行われる。