金融業界出身の佐々木剛氏(59)が26日、ことし秋に予定される新潟県燕市の市長選に無所属で立候補すると正式に表明した。「変革・挑戦・前進」をスローガンに掲げ、「民間出身であることを強みに、新しい燕市づくりに挑戦したい」、「開かれた新しい燕市」を目指すと意欲を示した。また、現職の鈴木力市長に敬意を表し、「後継の思いで出馬する」と明言。将来的な自治体合併の検討にも言及した。
佐々木氏は1966年生まれで燕市桜町出身。三条高校を卒業すると故郷を離れ、早稲田大学、同大学院をへて住友銀行を皮切りに国内外の金融機関で約35年間勤務し、ニューヨークでの駐在経験もある。市長選出馬に向けて6月上旬に退職し、同月末に住民票を実家に移した。
両親は燕市内の洋食器工場で住み込みで勤務し、佐々木氏自身もそこで育った。高校卒業後に地元を離れ約40年になるが、「燕市に恩返ししたい」という思いを持ち続けてきた。
約10年前から高校の同窓会東京支部の活動に参加し、ここ数年は支部長を務める。都内での燕市交流イベントなどで鈴木力市長と会う機会が増え、鈴木市長から燕市の市政の課題や展望を直接聞き、市政への関心が高まった。
鈴木市長が次期市長選には出馬しないのではと感じとり、市政を支える産業界や市民とも意見交換を重ねるなかで、出馬の意向を固めた。
「自分のキャリアの集大成としてこの40年間で培ったさまざまな知見、経験を燕市の市政に活用し、新しい燕市づくりの役に立つべき時」との思いが強った。
鈴木市長に、自分のような政治、行政経験のない人間に市長が務まるか聞いた時に、市長から力強い言葉をもらったと覚えている。「わたしが勝手に思っていること」で「あとで鈴木市長に怒られるかもしれない」と前置きしたうえで「鈴木市長の後継の気持ちでここに立っている」、「鈴木市長から多少なりとも後継者として期待をいただいていると勝手に思い込んでいる」と後継者を自認した。
政策の柱としては「15の約束」を掲げる。経済と産業の再生は、新しい燕市に向けた柱のひとつ。精密加工など高い技術力を誇る地場産業は、世界に通用する部品が多くありながら、営業や発信が難しい企業が多く、行政が連携支援に入る余地があるとし、医療・宇宙・航空など新市場への展開を支援する意向を示した。農業や産業観光の振興にも言及し、「燕ブランドを世界に広めたい」。
「すべての政策は人口減少を食い止めるという課題に資するものだ」と強調。地域の将来像は、人口減少が続くなかで、「自立可能な自治体規模のあり方も議論すべき」と述べ、将来的な周辺自治体との合併について「軽々には進めないが、コスト削減や持続可能性の視点から検討の必要はある」と踏み込んだ。
選挙戦については、特定の政党からの支援は受けず、無所属で臨む方針。40年間地元を離れていたことから、草の根的な活動で、市民一人ひとりの声を聞いていく。
柏崎刈羽原発の再稼働については「極めて慎重な立場」とし、「人命と暮らしを守ることが最優先。万が一の際の対策が十分に準備され、周辺地域の住民が納得することが大前提だ」との見解を示した。
佐々木氏は、趣味のマラソンや登山のエピソードにもふれ、困難な課題にも臆せず挑戦する姿勢をアピール。「市民の気持ちに変化を起こすのが目標のひとつ。将来にわたる不安、閉塞感からうつむき加減になるムードや雰囲気を市民が将来に希望と楽しみを持てる明るい前向きな雰囲気に変えて行きたい」と述べた。8月11日に事務所開きを予定している。