世界で活躍する三条市出身のジャズシンガーでフリューゲルホルン奏者、TOKU(トク、本名:馬場督之)さん(52)の4年ぶりの三条市でのコンサートが11日、三条市中央公民館で開かれた。TOKUさんのデビュー25周年を記念した凱旋(がいせん)コンサートで、ふるさとゆえのハートフルなパフォーマンスがほぼ満席の約500人を魅了した。
TOKUさんが新潟育ちのメンバーと制作したアルバム「TOKU & Niigata project」が5月1日にリリースされた。前回の三条市でのコンサートの打ち上げで県内のミュージシャンとセッションしたのをきっかけに、父の章介さんが開設した音がスタジオ「OPUS(オーパス)」で9人の県内若手ミュージシャンとレコーディングした。
そのレコ発記念でもあり、さらに三条市合併20周年記念事業として開かれた。コンサートの実行委員長、岡田竜一三条市議のあいさつのあと、TOKUさんはひとりでステージに現れ、演奏前に今回のコンサートへの思いを語った。
TOKUさんは「すごくこの思い出のある場所にまた戻ってこれてうれしい」とかみしめるように話した。「三条市がぼくにとってどんどん大きな存在になっている。いろんなことを経験してきたからなのか、ふるさとの良さを知らなかったからなのか、そういうことがこの年になってやっとわかってきた」と話した。
「ぼくがこうしてここに立っている意味、存在理由、ぼくが存在する理由は音楽であるという思いがどんどん強くなっている。それがぼくの役目なんだろうと強く感じる」。
ミュージシャンだった父がサポートするバンドが三条市中央公民館でコンサートをするたびに、小学生だったTOKUさんが後ろからついていって演奏を聴いた思い入れの強いホールであることを話した。
2011年、13年の凱旋コンサートは三条市中央公民館が会場だったのでうれしく、「今回はぼくの強い意志で、父のスタジオでつくった音楽をここで最初にまずはお届けしたいと思う強い思いで今ここに立っている」と思いを聴衆と共有した。
それから21年のコンサートでセッションした若手プレーヤーを順に呼び込み、TOKUさん作曲のアルバム収録曲「Yahiko」から演奏をスタート。収録曲を中心に9人のメンバーとたっぷり10曲余りを演奏した。
TOKUさんはフリューゲルホルンだけでなくトランペットも演奏。その場の思いつきで曲の構成を変えたり、スタンダードナンバー「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」をアカペラで歌ったり。デビュー25周年を祝ってTOKUさんに花束をプレゼントするサプライズもあり、肩ひじを張らない自由なパフォーマンスに来場者もリラックスして鑑賞した。
アンコールでステージに戻ったTOKUさんは、しみじみと「やっぱこのホール好きだな」と来場者に感謝した。アンコール曲は収録曲の「Your Home Town」を演奏。ラストのリフレインを会場が一体になって「ラララ」とスキャットした。
すべての曲が終わると、出演者全員が手をつないでカーテンコール。来場者はスタンディングオベーションで拍手が鳴りやまず、これまでの三条市でのTOKUさんのコンサートでいちばんの盛り上がりを見せた。
ふだんは音楽を聴かず、ジャズとは縁遠い人も「どういうわけか涙が出てきた」と言葉にできない感動を味わっていた。