コロナ禍をきっかけに日本の伝統的な細工「張り子」を本格的に手がけるようになったフォークシンガー、古川豪(ふるかわ・ごう)さん(75)=京都府京都市=の作品約150点が並ぶ「古川豪 張り子展」が27日(土)、28日(日)の2日間、の巻鯛車商店街交流館囲炉裏(新潟市西蒲区巻甲)で開かれている。
古川さんは1969年にデビューし、フォークシンガーの中川五郎さんやひがしのひとしさんらと深い親交がある。長年、全国を歌い歩くなかで、張り子作りに興味をもつようになった。コロナ禍で音楽活動が制限されて時間に余裕ができ、独学で木型から製作する昔ながらの手法を学び、工房「イスズ楽房」を開いた。「最初は孫へのお年玉代わりに作っていたら評判になった」と振り返る。
最近は観光地で流通する大量生産の張り子が増えるなあ、「荒っぽさが残っても手作りの温かみを大切にしたい」とこだわる。原型は近所の工事現場でもらった端材から彫り出し、和紙を張り重ね、鈴を仕込んで彩色する。「同じ木型でも微妙に表情が違う。そこがおもしろい」と語る。
展示作品は招き猫や首振り虎、七福神などの縁起物のほか、地元京都にゆかりのある紫式部や一休さん、近所の市場で見かける野菜売りの姿など多彩。巻地区に伝わる郷土玩具、鯛車の張り子にも挑戦した。
木目の節を生かして瓢箪に仕立てたり、部品を組み合わせて狐や鳥に仕上げたりと、即興的な発想から新たな作品が生まれる。「木を眺めていると『これで何かできる』とひらめく。フリーハンドで作るから偶然性も楽しみのひとつ」と創作の醍醐味を語る。
作品展だけでなく、27日夜は会場でライブも行い、長いバンジョーを奏でながら歌った。6年前にも巻鯛車商店街ではライブを行った。「商店街には閉まった店もあるが、個性ある場所は残っていて味わいがある」と同地の印象を語っている。
「線一本で表情が変わるのが張り子の面白さ。可愛いと言ってもらえるのがうれしい」と古川さん。歌と同じく、手仕事を通じて人の心に寄り添う姿勢は変わらない。
28日の展示は午後6時まで、入場無料。