絵本『ごんぎつね』の作者で知られる新潟県新潟市出身の絵本作家、黒井健さんが燕市をテーマに数字面をデザインしたいわばご当地トランプ「つばめトランプ」が完成した。燕市は2012年にも黒井健さんが絵札を描いたご当地かるた「つばめっ子かるた」を制作した。かるたとトランプ、和洋の燕市オリジナルのカードゲームがそろった。
4種類のマークにはそれぞれスペードは吉田地区で伝承される下中野御神楽舞の獅子舞、ダイヤは燕地の戸隠神社春祭りを彩る万灯の踊り子、クローバーは江戸時代後期に私塾「長善館」を創設した鈴木文台、ハートは晩年を分水地区の五合庵で暮らした越後の禅僧、良寛を描く。
「11」以上の絵札には、米納津隕石、五合庵、八王寺の白藤、燕市旧浄水場配水塔、スプーンとフォーク、天神講菓子、おいらん道中、鎚起銅器、燕背脂ラーメンなど、ジョーカーは酒呑童子。描かれているものが何かすべてわかる人は、かなりの“燕通”だ。
ほかにも飛ぶツバメや燕名産のトマト、黒井健さんの人気シリーズのイヌのキャラクター「ころわん」などが余白にちょこんと描かれ、遊び心も楽しい。
裏面は燕市の市章をタイルのように並べた。プラスチックケースと紙製スリープ付きで価格は税込み1,000円。3,000部を作成し、500部は市内小中学校と保育園に配布し、2,500部を10月10日から販売する。
販売場所は中央公民館、吉田公民館、分水良寛史料館、長善館史料館、産業史料館、燕市役所1階売店、燕三条地場産業振興センター。10月11日、12日は燕市美術展覧会(市展)の会期にあわせて吉田産業会館の市展会場でも特別販売する。
「つばめっ子かるた」は鈴木力市長が積極的に進めた事業。2006年の合併で生まれた燕市の一体化を図る「燕ひとつプロジェクト」の一環として取り組んだ。
絵札は黒井健さんに描いてもらった。44枚の読み札の読み句は公募し、530点もの応募があった。読み札は文字は地元の書家、長谷川白楊さんに書いてもらい、郷土愛にあふれたアイデアを詰め込んだ。
発行の2年後には「つばめっ子かるた大会」をスタート。市内小中学生の多くがすべてのかるたの読み句を覚えるほど浸透し、ねらい通りの成果をあげる事業となった。
鈴木市長は4期目の任期満了より半年早く10月22日で辞職する。市長として初期に注目を集めた「つばめっ子かるた」。締めくくりは「つばめトランプ」が飾る。
29日の定例記者会見で鈴木市長は、来年が合併20周年の節目になるのを契機に取り組んだと話した。「つばめっ子かるた」の第2弾の制作を検討したが、黒井健さんにかるたは絵札が多く、大変だからと、代わりにトランプというアイデアをもらった。
「友だちや家族でテレビゲームだけではなく、トランプで親子のコミュニケーションを取ったり、友だちのきずなを図ってもらいたい」。
また「大学生になって、実はうちの地元は黒井健さんが作った絵のトランプがあって、子どものころにこんな遊びしてたんだねと言い、またやろうよみたいになることは、ふるさとへの誇りをもち、燕市を出て行っても新たなコミュニケーションをつくってもらいたいという思いもある」と願った。
市議会ではトランプの製作に反対もあったが、「反対した議員の考えが正しかったのか、わたしの思いが通じて、これがあったからもっと愛されるか、どうなるか行く末を見守りたい気持ちもある」と述べた。
人気になればふるさと納税の返礼品になることにも期待し、黒井健さんも山梨にある黒井健絵本ハウスでも販売できたらと話していたと言う。