弥彦菊まつりで秋の行楽客でにぎわう新潟県弥彦村にある弥彦の丘美術館(高島徹館長)で、24日(月・祝)まで特別企画展「ひとびとを魅了した画家たちーピカソ・シャガール・ユトリロから藤田嗣治へー」が開かれている。南魚沼市・池田記念美術館が所蔵するコレクションの中から、20世紀初頭のパリで活躍した画家11人の23点を展示。「エコール・ド・パリ」を代表する巨匠の作品が一堂に並んでいる。

20世紀初めのパリは、若き芸術家たちにとって自由と夢の都だった。政治的弾圧が少なく、画商の目に留まれば経済的にも成功が望める環境。なにより街全体に息づく芸術の活力が、多くの画家をひきつけた。
スペイン出身のパブロ・ピカソは、立体派(キュビスム)の創始者として、従来の遠近法を離れ、形を解体、再構築する独自の表現に挑んだ。マルク・シャガールは、ロシアの大地に根差した精神性とユダヤ的神秘主義を背景に、恋人たちや聖書の物語を鮮やかな色彩で幻想的に描いた。
モーリス・ユトリロは、身近なパリの街並みや教会を淡く憂いを帯びた筆致で描き、藤田嗣治は「乳白の肌」と呼ばれる独特の裸婦像で世界的評価を得た。
こうした多彩な画家たちは互いに刺激を与え合い、個性を競いながら自由な芸術を育んだ。その流れは、エコール・ド・パリと呼ばれ、現代美術にまで大きな影響を及ぼしている。
展示作品は一部の油彩を除いて版画のエッチング、リトグラフ、アクアチントの技法で制作されている。
弥彦の丘美術館は、個人から作品の寄贈を受けて1987年にパリの風俗画家ルイ・イカールの常設展示館として開館。2000年に企画展示を行う弥彦の丘美術館に生まれ変わった。

今回の特別展では四半世紀ぶりにイカールの作品も飾られた。華やかで妖艶(ようえん)なパリの女性像を繊細で優雅なエッチングで描き、当時のモードや生活感を生き生きと伝える。また一部、弥彦村所蔵のイカール作品も展示している。
このほか時代が下って20世紀半ばに活躍したベルナール・ビュッフェ、アンドレ・ブラジリエ、ポール・アイズピリ、日本の洋画家梅原龍三郎や中川一政の作品も並び、ヨーロッパと日本の美術交流の流れをふかんできる構成となっている。
関連イベントとして、9日(日)は無料で鑑賞できるオープンミュージアムを行い、午後1時半から高島館長が作品解説を行う。16日(日)はギャラリーコンサート。午後1時半から燕市の声楽家、塚原はる美さんと井上信子さんの2人が、弥彦村の藤田月海さんのピアノ伴奏で歌う。ここでの声楽演奏は初めて。
24日まで毎日午前9時から午後5時まで開館、入館は午後4時半まで。入館料は一般700円、中高生500円、小学生以下無料。問い合わせは弥彦の丘美術館(電話0256-94-4428)。