クマ被害で遠のいた客足はクマ肉で取り返せと、新潟県三条市の山間部にある日帰り温泉「いい湯らてい」(南五百川)は、クマ肉を使った新メニュー「熊汁」を開発し、13日から食堂で提供する。

南魚沼地方の猟師グループが捕獲したクマの前足の部位の肉を仕入れる。熊汁の味付けは、みそがベース。そこに市内の酒蔵「福川酒造」の酒かすを加え、麹(こうじ)の香りと深いうみ味が生まれる。
具材は地元の新鮮なハクサイ、ダイコン、ニンジン、人参、ささがきゴボウ、長ネギなどをたっぷり。そこにクマ肉を載せ、1人前ずつコンロで煮て味わう。
薄く切って提供するが、クマ肉独特の歯応えを楽しめる。「臭みが少なく、スープのうま味が際立つ」とスタッフは胸を張る。1人前1,580円。ご飯やうどん、生卵、中華麺などをプラスすることもできる。来年3月まで毎日、数量限定で販売するが、延長する可能性もある。
販売は平日で3食ていど、週末で6〜10食を想定。「すき焼き風に卵を絡めてもおいしい」と言う。

今季は全国各地で記録的なクマの目撃や被害が相次いでいる。「いい湯らてい」のある自然あふれる下田郷も同様。「いい湯らてい」にも10月中旬からクマの出没に関する問い合わせが寄せられるようになった。「山間部でのクマの出没情報が多く、お客様も慎重になっている」と言う。
紅葉シーズンに合わせて食事だけの利用が例年なら月200人を超えるところ、ことしは130人ほどにとどまった。多少なりともマイナスの影響があり、そこでクマで来なくなった来館者はクマで呼び戻そうと、新メニューの熊汁を開発した。全国的にもクマ肉を提供するジビエ店が人気を集めている。柳の下のドジョウ作戦でもある。
クマよけスプレーを常備し、スタッフが携帯して巡回するなど安全対策も強めている。「出没の話題が多いことしだからこそ、ジビエの文化や自然との向き合い方を知る機会にもしてほしい」と利用を呼びかけている。問い合わせは「いい湯らてい」(0256-41-3011)。