25日の五輪柔道は阿部一二三選手(23)と阿部詩選手(21)の市場初の兄妹同時金メダルにわいたが、翌26日は新潟県三条市で事前合宿したノラ・ジャコバ選手(28)とアキル・ジャコバ選手(25)の姉弟が出場。アキル・ジャコバ選手は惜しくもメダルを逃したが、ノラ・ジャコバ選手は金メダルに輝いた。

ノラ・ジャコバ選手は女子57kg級に出場。シードで初戦の3回戦でオランダのサネ・フェルハヘン選手(28)に大内刈の技ありで勝ち、準々決勝ではスロベニアのカヤ・カイゼル選手(21)に小外掛の技ありのあと崩上四方固で一本勝ちした。

準決勝では日本の芳田司選手(25)に小外掛の技ありで下して決勝へ。フランスのサラレオニー・シシケ選手(23)と対戦したが、2分45秒でダイビングによる安全上の理由によるダイレクト反則負けのあっけない幕切れで、金メダルを獲得した。

一方、弟のアキル・ジャコバ選手は男子73kg級に出場。1回戦でイエメンのアハメド・アヤシュ選手(27)に横掛で一本勝ちし、2回戦でスイスのニルス・シュトゥンプ選手(24)に今度は横四方固で一本勝ち。3回戦はスウェーデンのトミー・マシアス選手(28)を隅落の技ありで勝利した。

しかし準々決勝では、モンゴルのツォグトバータル・ツェンドチル選手(25)に背負投の技ありで敗れた。続く敗者復活戦でもアゼルバイジャンのルスタム・オルジョフ選手(29)に隅落の技ありで敗れて7位に終わり、メダル獲得はならなかった。

日本の阿部きょうだいのように同時金メダルはならなかったが、24日にもコソボ柔道選手団のディストリア・クラスニチ選手(25)が女子48kg級で金メダルを獲得しており、選手団5人のうちこれまで4人が出場して金メダル2つという成績は見事だ。

コソボ柔道選手団の事前合宿を受け入れた三条市の滝沢亮市長は、三条高校時代に柔道部に所属。家でテレビの前で柔道着を着て正座してコソボ選手を応援したこともあるが、この日は市長室で決勝戦を観戦、応援した。

ケンオー・ドットコムの取材に対して滝沢市長は、ノラ・ジャコバ選手の戦いを振り返って「準決勝の芳田選手との対戦がいちばんの山だったと思う」、「安定した戦いだった」と述べた。

「コソボ選手の戦い方は正統派で、ロシアのサンボレスリング崩しの変形パワー柔道ではなく、すごくきれいな柔道のスタイル。だから準決勝の芳田選手とも戦いやすかったのでは。身長の高さを生かして相手の奥えりをつかんで押さえることができた」と、まるで解説者のような分析だ。

また、前日25日は前回五輪でコソボに初めての金メダルをもたらしたコソボの英雄、マイリンダ・ケルメンディ選手(30)が女子52kg級で初戦敗退した。滝沢市長は「残念だった。ケルメンディ選手はコソボ柔道選手団の精神的な支柱であり、初日ときょうの結果からその功績は偉大」とたたえる。

さらに「本当にうれしすぎる。2つの金メダルに弟のアキル・ジャコバ選手もいいところまでいってくれた。ケルメンディ選手がいたらからこの結果につながった」。ただ選手団は試合が終わったら三条市へ寄らずに帰国する予定で、「そのまま帰ってしまうのは残念」とすでに心残りも。コソボ選手が三条市の事前合宿に使った会場にコソボ選手の名前をつけて伝えていこうというアイデアもある。

このあとコソボ柔道選手団の最後の1人、ロリアナ・クカ選手(24)が29日(木)に女子78kg級に出場する。滝沢市長は「ベストを尽くしてもらえればいいし、そうすれば結果も出ると思う」と活躍に期待した。