新潟県三条市の職員のかたわらで絵筆を握り続けて約45年になる洋画家、池浦倫之(いけうら みちゆき)さん(70)=三条市=の初めての個展「池浦倫之展 明日への轍(わだち) 今日までそして…」が1日(木)から18日(日)まで見附市民ギャラリー「ギャラリーみつけ」で開かれている。
中央の美術団体、一般社団法人光風会の会員で、新潟県美術家連盟常務理事、三条市文化芸術に関する懇談会会長、三条美術協会理事長、三条市展運営委員も務めて美術界の振興やまとめ役としても貢献している。
父の転勤もあって旧栃尾市(今の長岡市)に生まれ、1977年に専修大学を卒業して三条市役所に定年まで奉職した。それまで絵を描いたり美術を勉強したりすることはなかったが友人に誘われて80年に三条市中央公民館の青年洋画教室を受講したのが画歴の始まりだ。
積極的に公募展に挑戦した。82年に第2回の旧三条市展で初入選。83年から十数年にわたり光風会名誉会員までのぼりつめた見附市の洋画家、池山阿有(あゆう)さん(1939-2023)に師事し、池山さんを指導者に絵画研究グループ「火曜会」も立ち上げた。
83年に県芸展に初入選し、翌84年に県展に初入選、97年に光風会初入選した。2011年にはついに日展に初入選し、これまで3度、入選している。4年前にはリタイアし、マイペースで絵を描きながら美術団体の仕事をこなしている。
2階フロアと展示室2に作品を展示している。2階フロアには、公募展に出費にした50号から100号までの大作22点を古い作品から制作年順に展示している。
最も古い作品が県勤労者美術展で当時、最高賞の知事賞を受けた「漁船」(1983年・F50)。夕日に赤く染まった長岡市・寺泊の漁港と船を描いた。「夕日がすごくて、若いからもう、思いっきり描こうと思って。夜中に描いたらなんか興奮しちゃって、この日は眠れなかったのを覚えてる。夜、赤を使っちゃいけないと思った」と、きのうのことのように思い出す。
しばらくは漁港をモチーフに描き続けて次のモチーフは積み上がったスクラップカー。「反骨精神が強かったから人が描くものを描きたくなかったんだと思う」と自己分析する。
しかし日展を目指すなかで、こうした作品を勉強会に持って行ったら、これでは光風会には入っても日展には絶対に入らないと言われて、今度はモチーフを除雪車に求めた。
それも最初は除雪車と雪、建物くらいしか描かなかった。「人を入れるようになって、すごくリアリティが出ようになった」。それが奏功してか、念願だった日展に入選。これまで3度、入選している。
市職員のころは、目立ってはいけないという雰囲気があった。初めての個展はちょうど古希でもあり、「いろんな人から勧められたものもあったし、作品を歴史順に並べてみて、いろんな人からいろんなことを言われているなかで、絵との向き合い方を考えるきっかけにしたいと思った」。
ただ、体力は年齢とともに衰えていくのは仕方ない。公募展に出品する大作を描くのも難しくなっていくが、「今は出品は負担より、意欲が勝っている。この会期を終わって、いろんな意見を聞いて、それからもうひと頑張りしようかって気持ちになるのか。大作はもうこれでいいと思うのか、考えたい」。とはいえ「結局、続けるような気がする」と笑う。
一方で若者の美術離れを憂えている。「漫画やイラストをやる人はいるのに。だからこうやって情報発信して、美術の魅力を出していくのも最後の仕事かなと思っている」と個展が次へつながる一歩になることも期待している。
また、展示室2には、自宅で買っている猫や近郷の風景などを描いた小品18点を展示している。
関連イベントで4日(日・祝)午後2時から3時まで池浦さんによるギャラリートークが行われる。定員80人、先着順で申し込みが必要。参加は無料。
午前10時から午後8時までの開館で、会期中の休館日は7日と12日。入場無料。問い合わせはギャラリーみつけ(0258-84-7755)。