シンディ・ローパーさんとも共演する三条市出身で世界で活躍するジャズミュージシャン、TOKU(トク、本名:督之)さん(52)が1日、TOKUさんのリーダーアルバム『TOKU & Niigata Project』を制作した新潟の若手ミュージシャンとともに母校の三条市立第二中学校(長嶋秀二校長)を訪問し、「先輩に学ぶ会」の講師を務めた。全校生徒約300人の前でバンドメンバーや吹奏楽部との即興演奏を披露し、「好きなことを見つけたらそれに向かって突き進んでほしい」、「いちばんの敵は自分自身」と後輩たちにエールを送った。
TOKUさんはジャズシンガーでフリューゲルホルン奏者。父の影響で音楽に親しみ、第二中吹奏楽部ではコルネットを担当。今は日本とパリを中心に活動している。
国内外の著名なミュージシャンとの共演も数多く。なかでも80年代ポップの象徴、米国の女性シンガー、シンディ・ローパーさんとは音楽を通じて強い信頼関係を結んでいる。
シンディ・ローパーさんのアルバムや日本ツアーにTOKUさんも参加。4月の来日公演にもTOKUさんがゲスト出演し、第二中訪問の前日に都内で行われたTOKUさんのライブにシンディ・ローパーさんが訪れている。
アルバム『TOKU & Niigata Project』は、1981年に父の章介さん(77)が開設した音楽スタジオ「OPUS(オーパス)」を再稼働させて新潟の若手ミュージシャン9人とレコーディングした。それをきっかけにTOKUさんからの提案で今回の母校訪問が実現した。この日はアルバムの発売日ともなった。
会場の体育館でTOKUさんは、アルバム参加メンバーと収録曲を演奏する一方、これまでの歩みを振り返った。サッカー少年だったが第二中にサッカー部がなかったから吹奏楽部に入ったこと、高校では家のスタジオでドラムを練習してバンドを2つかけもちし、大学ではロックのサークルでベース、ドラム、ギター、歌などを演奏したことなどを話した。
アルバイト先のCD店のジャズコーナーでモダン・ジャズの帝王と呼ばれたトランペッター、マイルス・デイビスのCDに出会って即興演奏に衝撃を受け、ジャズの道へ進んだこと、さらにジャズの魅力や進化の歴史にもふれた。
それらを踏まえたうえで吹奏楽部の部員17人とセッションした。曲はデューク・エリントンのジャズ・スタンダード「Cジャム・ブルース」。メンバーが演奏を続けながら、TOKUさんはクラリネット、サックス、トロンボーンと、パートごとに2小節の繰り返しのメロディーをその場で考えて部員に指導した。
それらのメロディーが次々と重なって、最後は全員でひとつの音楽が完成。しだいに生徒から手拍子がわき、即興の魅力の一端を体感した。
TOKUさんは「音楽だけじゃなく普段の努力も必要。天才はいないと思う。努力を続けられる人が天才。才能もあるけど磨かなければ何もならない。いちばんの敵は自分自身。自分が怠けるも一生懸命やるも、自分自身の思い、気持ちひとつ。それに気づくと、その都度、自分で自分に打ち勝つ、自分で切り開いていくことがどれだけ大切かわかると思う」。
「自分が好きになって、それしかやりたくなくて突き進んできたから、今こうやって道が開けてくれている。好きなことを見つけたら、それに向かって突き進んでほしい」、「自分を信じて突き進んでいれば必ず道は開ける」と後輩に言葉のバトンを渡した。
8月11日に三条市中央公民館でアルバムのお披露目コンサートを開く。三条市でのステージは4年ぶりになる。「今回はそのお披露目コンサートに向けてのクリニックの意味合いもあった」とTOKUさん。
「三条市はすばらしい所。あらためて地元を大切にしたいという気持ちが徐々に大きくなってる。地元のために何かできたらと思う。そのやり始めという感じ」。
アルバムのサブタイトルは「OPUS Session Vol.1」。第2弾、第3弾のリリースを念頭に置いている。これまで以上にふるさとでのTOKUさんの活躍が期待される。