新潟県弥彦村に住むイギリス出身の男性が27日、除雪機メーカーのフジイコーポレーション株式会社(藤井大介代表取締役・新潟県燕市)で自家用で購入する除雪機の生産にチャレンジし、完成させた。
この男性はマーク・カー(Mark Ker)さん(37)。ロンドン生まれでオーストラリアで暮らしているときに知り合った新潟出身の女性と結婚し、弥彦村に移り住んで3年8カ月ほどになる。自営業で翻訳や内装業を手がけている。
ことし秋にも妙高高原の赤倉でゲストハウスをオープンしようと準備を進めているが、国内有数の豪雪地。営業するには除雪機は欠かせない。
とくに屋根から落ちた大量の重い雪を片付けるには、家庭用の小型の除雪機では力不足。除雪の専門家からアドバイスも受け、ことし3月にフジイコーポレーションが南魚沼市の塩沢で開いた残雪スノーロータリーフェアへ足を運び、300万円クラスの除雪機の購入を決めた。
生産にも立ち会いたいという希望があり、藤井代表取締役に自分で除雪機を作ってみないかと勧められた。以前からフジイコーポレーションは資格レスのものづくりに取り組み、1個流しの多品種少量生産の仕組みを取り入れて顧客が必要な商品のタイムリーな供給に取り組んでいる。
2015年から夏休みに小学生親子親子を対象とした仕事体験研修「ぅわ〜きっず」を開催している実績もある。そのおとな版のようなイメージで初めてユーザーによる除雪機生産を実現した。
マーク・カーさんは社員と同じポロシャツの作業着を着て、安全教育を受けてから工場へ。エンジンを載せる作業からの本格的な生産工程を体験した。工場内にある部品を集め、さまざまな工具を駆使して組み立てた。塗装は乾燥の時間がかかるので体験だけ。最後に排ガスや騒音を含めた完成検査まで行い、1日がかりで完成させた。
「今までの人生でいちばん高い買い物」とマーク・カーさん。机や棚を作ったことはあるが、訳が違う。「緊張したけど楽しくできた」と大満足で、「こういうチャンスをもらったことに感謝している」と、赤倉までどうやって運ぼうかと思案する一方、運転する日を楽しみにしていた。
フジイコーポレーションの小林祐介取締役機械事業部長は「うちの除雪機は、ふだんカタログを見て選んでいただいているが、こういったものづくりに参加していただくことで、より愛着をもって長く使っていただけるのかなと実感した」と話した。
マーク・カーさんの仕事ぶりには「初めての割に工具を器用に使っていて、思ってるより以上に順調にいった」。この取り組みは「商品の付加価値のひとつになり得る」と、今後も改良して要望があればユーザーによる生産を受け入れたい考えだ。