金属加工を中心とした地場産業の集積地で知られる新潟県・燕三条地域の名だたる工場のものづくりの現場を公開するオープンファクトリーイベント「燕三条 工場(こうば)の祭典」が2日、開幕した。ことしは「五感で味わえるものづくり」をテーマに過去最多の133の参加工場を5日(日)までの4日間にわたり開放している。
初日2日は燕、三条の両商工会議所青年部で組織する実行委員会の秋元哲平実行委員長が専務を務める(株)青芳(青柳修次社長・燕市小池)を会場に開会式を行った。開会式に合わせたかのようにそれまで降っていた雨がぴたりとあがり、秋晴れの空が広がった。
秋元実行委員長はあいさつで、ことししは燕三条のほかに弥彦村、加茂市、田上町から後援、協力してもらい、「より多彩で多様な燕三条地域のものづくりを来場される方にお伝えできる」と喜んだ。
燕三条のものづくりは、モニターやディスプレー越しでは伝わらず、「工場へ足を運んで工場の熱気や独特の匂い、機械が奏でる音、職人の鋭いまなざしをすべて感じることで感じられる」とアピールし、「来られる前のワクワクが、帰る時には胸いっぱいになるように」と願った。
一方で参加工場には「4日間は皆さんが主役になる。来場される皆さんに燕三条のものづくりを、燕三条の魅力を存分に見せてあげましょう」と期待した。
滝沢亮三条市長は、実行委員会が事前に各地で展開したプロモーションのおかげで、ことしは「もうちょっとで工場の祭典が始まるね」といった声を多く聞いたと紹介。「工場の祭典は燕三条の技術力はもちろんのこと、この期間ならではの職人、技術者の息遣いも感じられる機会となっている。その技術力、息遣いをどうやって次の世代につなげていくのかということを市内外の人たちに発信できる機会と思う」と波及効果に期待した。
鈴木力燕市長は、工場の祭典は、すでに終わった燕三条トレードショウと、このあとの燕青空即売会、燕三条ものづくりメッセと並ぶ燕三条地域の秋の4大産業イベントのの第二走者。「うまくコーナリングを回り、そこで加速をつけるということ。トレードショウからしっかりバトンを受け継いで燕青空即売につなげ、この期間、大勢から燕三条のものづくり、職人の魂を感じ取ってもらえるイベントが大成功に終わってもらいたい」と願った。
来賓の兼古耕一三条商工会議所会頭、田野隆夫燕商工会議所会頭、菊田真紀子代議士、国定勇人代議士の祝辞のあと「開け、工場!」と声を合わせて工場のシャッターを上げ、さらに白布を外してモニュメントを披露した。
モニュメントは溶接アーチストの小林亮介さん(43)=燕市=が製作した。畳1枚分ほどもある鉄板に火花が飛び散るような工場の祭典のロゴをステンレスで作って溶接したもの。そこに「燕三条 工場の祭典 2025」の切り文字をマグネットで主催者や来賓で張り付けて完成させた。このあと燕三条駅1階で開いている「五感で魅せるアートプロジェクト」にモニュメントを移設した。
「工場の祭典」は2013年に始まり、地域の産業を開かれた場とする試みとして回を重ねてきた。昨年は参加企業が約109社、来場者数は3万8千人を超え、コロナ禍後では最多を記録。ことしのの参加企業は過去最多だけに、昨年を上回る実績が期待される。
また、開会式には登録者約88万人、総再生回数1億2800万回超の人気台湾人ユーチューバー、許廷瑞(シュー・ティンルイ)さん(36)が来場した。ものづくり関連のYouTubeチャンネル「超認真少年Imserious」を運営している。
数年前から三条市の工具メーカー、マルト長谷川工作所と付き合いがあり、工場の祭典に訪れるのは3回目。燕三条の複数の工場を紹介している。
許さんは、燕三条の工場はとてもきれで、ものづくりの環境が優れていると強調。見学価値が高く、滞在型での深い体験を勧めている。今回はマルト長谷川工作所のほか、山崎金属工業や玉川堂などを回り、三条市立大学で日本の少子化、地方の人口減少、労働力不足をどう乗り越えるかなどについて意見交換する計画だ。
許さんは台湾への来訪も呼びかけ、台湾とのものづくり交流の継続を願っており、「良い品物を作り続けてほしい。私たちはたくさん買う」と需要側からのエールも送った。