新潟県燕市は、キリンビール株式会社「晴れ風ACTION」により桜(ソメイヨシノ)の苗木18本の寄付を受けた。かつて6000本に及んだ大河津分水の桜並木の再生を目指す足掛かりとするもので、信濃川河川事務所大河津出張所周辺に植樹した。

桜並木は1922年(大正11)の大河津分水通水を後世に伝えようと地元の田澤実入、山宮半四郎、山田卯之七ら有志が堤防に桜を植えた。その名前は大河津出張所構内に建立された「桜之碑」に刻まれている。
春は花見の名所として行楽客の目を楽しませる。おいらん役が桜並木を練り歩く分水おいらん道中は県外からも見物客を呼び込む一大イベントに。1990年には「日本さくら名所100選」に選定されている。

しかし6000本を数えた桜並木も寿命による倒木や枯死で今では1,500本ほどに減少。市民有志の「分水さくらを守る会」や若者のまちづくり団体「つばめ若者会議」が植樹や保全活動を行って往時の姿を取り戻そうとしている。
キリンビールの「晴れ風ACTION」は、「キリンビール 晴れ風」という商品の売り上げの一部を活用して、日本の大切な風物詩を守り、未来につなげていくことを目指す社会貢献活動。桜の保全活動は日本全国の桜の名所や桜並木がある自治体を公募、選定し、桜の植樹、植え替え、樹勢診断、病害虫の駆除などの保全・継承活動を支援している。

今回は燕市が大河津分水の桜並木にと応募し、選定されたもので、22日、高さ2メートルほどに育った苗木を植えた現地で植樹式を行った。燕市の佐野大輔市長は「桜がこの地域ではとても大事で、その桜をこれからも維持していけるように取り組んでいきたい。大河津出張所に植えることで、国と燕市の架け橋にもなり、これからも大事にしていきたい」と述べた。
国交省北陸地方整備局信濃川河川事務所の土屋修一事務所長は、桜の碑に刻まれた碑文、田沢実入が詠んだ短歌「いく千春 かはらでにほへ 桜花 植えにし人は よし散りぬとも」を紹介した。

「本日の植樹式はこの遺志を継いだものになると思う」と話した。2015年から38年まで大河津分水路の大改修事業が行われており、「本日、植樹される桜の成長とともにこの事業を着実に進めていきたい」と述べた。
分水桜を守る会の小林恒男理事長は、この桜並木には大河津分水路の大工事を後世に伝えたいという思いと、工事に伴う犠牲者を慰霊する2つの意味が込められている言われ、「先人の思いを我々も共有しながら今後も活動を進めていきたい」と述べた。