11月の東京デフリンピックのバレーボール女子で金メダルを獲得した日本代表の一員として活躍、貢献した三条市の高橋朋伽(ほのか)さん(17)=中越高校3年=の優勝報告が26日、三条市役所で行われた。三条市はその功績を称えて2人目の市民栄誉賞を贈った。高橋選手は大会を振り返り、支えてくれた人たちへの感謝と今後の目標を語った。

デフリンピックは、とは、聴覚障害のある選手のための国際的な総合スポーツ競技大会。オリンピックと同様4年に1度、夏季と冬季が交互に開催される。ことしは東京で100周年記念大会が日本で初めて開かれた。
日本代表は8年ぶり3回目の金メダルに輝いた。高橋さんは全試合に出場してリリーフサーバーとして出場。なかでも決勝の第1セットで高橋さんのサーブからサービスエース2本を6連続得点をあげ、流れを大きく日本に呼び込んだ活躍は圧巻だった。
小学校3年生でバレーを始め、中越高校1年の冬に突然、耳が聞こえなくなった。ことし5月に初めて日本代表に招集された。
優勝報告には市民や職員約100人が集まった。高橋さんは首から金メダルを下げ、日本代表の真っ赤なトレーニング・ジャケットを着て来庁。玄関から職員の大きな拍手に迎えられて会場入りした。

滝沢亮市長と2人で紅白のひもを引いてくす玉を割り、滝沢市長から高橋さんに国民栄誉賞を贈る表彰状と目録を手渡した。
高橋さんのメッセージは代読。高橋さんは、強化合宿前は不安も感じたが、チームメートのおかげで頑張ることができ、厳しい練習を乗り越えられたと感謝した。
全試合でリリーフサーバーとしてコートに立ち、重要な局面でチームに貢献。とくに準決勝のウクライナ戦では、フルセットの終盤という緊迫した場面で出場。「緊張で息が止まりそうでした。でも、コートに立った瞬間、不安は消えて、自分を信じて、笑顔でプレーし、サービスエースも決めることができました」と、プレッシャーを乗り越え、自らの役割を果たした瞬間を振り返った。
決勝のトルコ戦でもその勢いは止まらず、夢のような舞台でプレーできる幸せを感じながら、チーム一丸となって金メダルをつかみ取った喜びを「胸が震えるほどうれしく、特別なものでした」と表現した。

滝沢市長は、決勝はパブリックビューイングで観戦、応援した。「高橋選手のプレーは、常に笑顔で、そして元気はつらつで、見ているわたしたちもいつもパワーをもらうことができまた」と、そのプレーが市民に大きな感動とエネルギーを与えたことを称えた。
森山昭市議会議長は祝辞で「決勝戦でのあのサーブが日本に大きな流れを呼び込んだ。最後まであきらめない力強いプレーが、私たちに大きな感動と勇気を与えてくれまた」と高橋選手の活躍を絶賛。その功績は「三条市民の誇り」と今後の活躍に期待した。
報道陣からの質疑応答に高橋選手は筆談で応じた。金メダル獲得について「初めての国際大会出場で緊張や不安もあるな、自分らしいプレーをし、金メダルを獲得できたことは本当に特別です」とあらためて喜びを語った。

今後の目標については、「今回、私はリリーフサーバーという途中出場での戦力となりましたが、技術やメンタル、体力を高め、スタートメンバーからチームを支えたいです」と、さらなる高みを目指す力強い決意を表明しました。
獲得した金メダルは「自分のお部屋に誰にも取られないように飾っています」、「自分すごいなあと余韻に浸っています」と笑わせた、偉業を成し遂げた達成感と、次なる挑戦への意欲を感じさせた。
中越高校女子バレー部顧問の本間克敬監督は、「大きな挑戦、本当によく頑張った」と高橋さんをたたえた。高橋さんは1年ときに男子バレー部のマネージャーとしてバレーボールにかかわったが、「やはりバレーを続けたい」という強い思いから、覚悟を決めて女子バレーボール部に転部。その1年生の途中、さまざまなストレスも重なって聴力を失った。

当時の指導について本間監督は「当初は聴力を失ったことやけがの多さに悩み、精神的に不安定な時期もあった。家庭と連携を取りながら、メンタル面のサポートを重視した」と振り返る。
しかし、復帰後は持ち前の明るさを発揮。監督やチームメイトに気をつかわせないように振る舞い、口の動きを読む力とジェスチャーでコミュニケーションを取り、プレーに関する戦術も理解していたと驚く。
本間監督は「彼女のもつ力を信じ、他の選手とあえて差をつけないように接することを意識していた」と特別扱いしないことを心がけた。
デフリンピックでは、とくに苦しい展開となった準決勝のウクライナ戦で見せたサービスエースを高く評価した。「高校時代からサーブで試合の流れを変える役割を担っていたが、国際大会という大舞台のいちばんいい場面で力を発揮してくれた」と、その精神力の強さを称賛する。
試合の様子を三条市がパブリックビューイングしたことについて「三条市の力強さと、彼女を応援してくれる人々の温かさを感じ、非常にうれしく思った」。「初めての国際大会で、知らない仲間と戦うプレッシャーは相当なものだったと思う。その中で代表に選ばれ、金メダル獲得に貢献したことは本当に素晴らしい。よく頑張ってくれた」と最大限の賛辞を贈った。

三条市聴覚障がい者協会の長野吉明会長は、「高橋さんの金メダルは協会の誇りと思っている」と祝福した。高橋さんの進路は未定と聞いているが、「卒業したあとも頑張っていただきたい」とエールを贈った。
三条市民栄誉賞は、パラリンピック開会式で国歌を歌った全盲のシンガー、三条市出身の佐藤ひらりさん(24)が2021年に受賞して以来、4年ぶり2人目。障がいのある2人が受賞したことも、地域社会における障がい者への理解と関心を高める機会になると喜んでいた。高橋さんのメッセージ全文は次の通り。
高橋朋伽さんのメッセージ全文
デフバレー女子日本代表の高橋朋伽です。11月15日から26日まで東京2025デフリンピックに出場してきました。これまで応援してくださった皆さま、支えてくださった方々のおかげで、ここまで頑張ることができました。本当にありがとうございました。
私は正直、大変なことも多く、強化合宿前日は不安でいっぱいでした。合宿中も厳しい練習が続きましたが、チームメイトは家族のように温かい人ばかりで、とてもいい仲間と一緒に頑張れました。
大会では、全試合でリリーフサーバーとしてコートに立つ機会をいただきました。初戦では、サーブがなかなか決まらず、サーブ後のレシーブでコートを守りましたが、準決勝は決勝に進むにつれて、自分の得意なサーブが決まり始め、チームに流れをつくることができました。
準決勝のウクライナ戦では、フルセット終盤に交代で呼ばれた時、緊張で息が止まりそうでした。でも、コートに立った瞬間、不安は消えて、自分を信じて、笑顔でプレーし、サービスエースも決めることができました。
決勝のトルコ戦では、最後は全力を出し切るだけという思いで挑みました。試合が始まると緊張がなくなり、夢のような舞台で応援を受けながら、バレーボールができる幸せを感じました。チーム全員で力を出し切り、金メダルを獲得することができた瞬間は、胸が震えるほど嬉しく、特別なものでした。
また、メディアでも私のプレーを取り上げていただき、サーブで勢いを与える、笑顔で個人を与える、という大会前の目標を実現できたことも、とてもうれしかったです。
最後に応援してくださった滝沢市長をはじめ、三条市役所の皆さま、地域の皆さまに心から感謝いたします。ありがとうございました。