毎年1月の小正月ごろに新潟県十日町市で開かれる節季市(せっきいち)、別名「チンコロ市」で子犬をかたどった米粉細工の縁起物「チンコロ」が販売される。それに先立って4日、ことしも「道の駅 庭園の郷 保内」(三条市下保内)でチンコロの販売会が開かれた。

江戸時代から続く節季市。冬の農閑期に農業の副業としてタケやわらで作られた生活用品や民芸品が並ぶ。ことしは11日(日)と18日(日)に開かれる。
そのなかでも人気なのがチンコロ。「しんこ」とも呼ぶ米粉で子犬をはじめえとや小動物を3〜5cmほどの大きさに作る。名称は座敷犬の狆(チン)の子犬が由来。飾っておくと乾燥してひび割れするが、ひびの数だけ幸せになるとされる。
「道の駅 庭園の郷 保内」では、2019年から新潟市西区に住む田齋忍さん(46)が作るチンコロを販売している。田斎さんは十日町市出身で三条市に住んでいたこともある。母方が代々、チンコロを作り続け、田斎さんは五代目。祖母に手ほどきを受けた。

「道の駅 庭園の郷 保内」に出店を始める2、3年前に祖母に認められて販売を始めた。ことしも節季市には2日間とも出店する。
今回は「いぬまり」をはじめ、「ねこたい」、「たからねずみ」、「うさぎもちつき」、「はな」、「えと」の白と茶のウマ、加えて「うまのり」を合わせて約500個作って1個300円で販売した。
購入は1人6個までに限定し、1時間前から整理券を配布した。節季市ではチンコロをお求めて数百人が行列をつくる。十日町へ出向かなくても本来の節季市より一足早く手に入るとあって、ことしも整理券分でほぼ完売の人気だった。

チンコロ作りは、米粉の生地をゆでるところから始まる。茹でて粘りが出た生地に、さらに米粉を足しながら形を整える。「この工程を省くと、うさぎの耳がくたっとなったり、割れたりするんです。最後に蒸さないと、あの独特のツヤも出ない」と田斎さんは話す。
乾燥すると割れるので、成形は時間との勝負で、ここ2、3日で一気に作ったもの。少しでも乾燥を避けて会場でも販売開始ぎりぎりまで並べなかった。
ことしの目玉は、かつて昭和初期まで作っていたという幻の「馬乗り」。今回、初めて販売した。子どもが兵隊遊びをする姿を模した縁起物で、今ではほとんど作る人がいない。

「面倒なので誰も作らない。ばあちゃんたちから受け継いだ形だから」と田斎さん。大きな馬乗りは生地も多く、通常の2個分ほどを使う力作だ。ほかに花のチンコロの装飾も「ことしは気分が乗ってゴージャスにした」と笑う。
近年、ビーズやマニキュアで装飾したりと、パステルカラーの“進化系チンコロ”も増えているが、田齋さんはあくまで伝統にこだわる。「死んだばあちゃんに言われて作っているから、私は変えられない」。明治から続く形を守り続けている。

「ここの道の駅以外では、ほとんど売らない。ほしい人は十日町まで来てもらうしかない」と言う。チンコロ屋としての屋号は「千之助」。明治から続く家の技と誇りを背負い、割れないようていねいに、つやのあるチンコロを作り続けている。