たんすに眠る着物が、地域の仕事と新たな価値に生まれ変わる。新潟県燕市の株式会社創明工芸(渋木恒利代表取締役社長)が展開するリメーク着物ブランド「engimono(えんぎもの)」が、無印良品 燕(燕市)で初めてポップアップショップを開いた。開店から来場者が相次ぎ、着物を素材として再活用する取り組みに注目が集まった。

会場には、ほどいて反物状に戻した着物の布が並ぶ。価格は紬が1着分3,000円、正絹2,500円、一般1,700円。手ごろな価格設定だ。
着物は体格や仕立てで大きさが異なるが、ほどくことで素材として再利用できるのが特徴。布にはQRコードも付け、元の着物の姿やアップ画像、シミや傷の状態まで確認できるのがユニークだ。
販売は同社敷地内のファクトリーショップが中心だったが、現在は改修工事のため一時閉店中。今回の無印良品での出店は、新たな販路開拓の意味合いもある。
無印良品が掲げるESG推進や地域密着、リサイクルの方針と、創明工芸の取り組みが重なって今回のポップアップショップが実現した。渋木社長は「方向性を理解してもらえた。今後も定期的に出店できれば」と話す。

この事業を支えているのが、燕市や三条市の福祉作業所だ。着物の洗浄や補修、糸ほどきなどの工程を、複数の事業所が分担して担っている。現在は燕市内を中心に4〜5事業所が関わり、作業は各所のペースに合わせて進められている。
作業所では、利用者が一針一針、糸をはずして着物をほどく。会場では就労支援事業所を運営する一般社団法人星の輪燕の利用者と職員が着物をほどく作業の実演を行った。
1人が1日に解ける着物は平均で2枚ほど。担当者は「糸を全部、取らないといけないので時間はかかるが、ノルマがなく、自分のペースで取り組めるのがいい」と話す。精神障害や発達障害のある人にとって、仕事があること、役割があることは大きな意味をもつ。
「仕事がなくなるのがいちばん不安。安定して作業があることが安心につながる」とも。完成した布や製品が広く流通することも、利用者にとって大きなやりがいとなっている。

着物は全国から集まる。メディアで紹介されたのをきっかけに、宅配便で送られてくるケースが多い。上越市や村上市など県内各地から車で持ち込む人もいる。「捨てるより役立ててほしい」という思いがある。
こうした仕組みは県外にも広がり始めている。徳島県阿南市では、創明工芸の洗浄機器を導入し、剣道防具やバスケットボールシューズ、ウエットスーツの洗浄事業がスタート。創明工芸の取り組みは地域の特性に合わせて広がっている。
今回のポップアップには、福祉作業所の利用者の家族も多く訪れた。「ふだんは表に出にくい仕事だが、こうして認められるのは誇らしい」と話す家族の姿もあった。通りがかりに立ち寄り、布を手に取って購入する人もいる。
渋木社長は、無印良品との今後の展開にも期待する。県内の無印良品店舗を巡回する形での出店や、将来的には本部と連携した全国展開もと思いは膨らむ。着物をほどく作業が、人と地域を結び直し、仕事と誇りを生む。燕三条発の取り組みの輪が広がっている。