創業70周年を迎える新潟県燕市小池の金属洋食器メーカー・(株)青芳(あおよし・青柳修次代表取締役社長)が5日、自社工場敷地内に体験型複合施設「ARS(Aoyoshi Renovation Studio)」をグランドオープンする。サウナ、レストラン、ショップ、ワークショップ、オープンファクトリーと、単なる新施設ではない。掲げるのは「産業観光の拠点化」。ものづくり企業自らが、人を呼ぶ装置になる挑戦だ。

「サウナをやりたかったというより、産業観光のハブをつくりたかった」と青柳社長は語る。
燕三条の製造業は長くBtoBが中心だった。優れた技術をもちながらも、消費者と直接、接点をもたない企業が大半だ。物価高、価格競争、海外製品の流入。従来の枠組みだけでは厳しさが増している。
地元燕三条地域では大規模なオープンファクトリーイベント「燕三条 工場の祭典」が毎年、開かれている。「燕三条 工場の祭典のようなイベントには多くの人が来る。ならば、常時来てもらえる拠点をつくれないか」。

もともとこの建物は、介護用品展示レンタル事業部の拠点だった。2019年に事業を終了後は、自社で断熱改修、外壁改修、事務所全面リノベーション、工場の環境改善に取り組んだ。手探りで改修を重ね、快適な空間へと再生した。
「やっていくうちに、ここは単なる社屋ではなく、体験してもらえる場所にできると気づいた」。サウナブームも後押しとなり、製造業×体験型施設という新機軸に踏み出した。

ARSの象徴が、薪(まき)ストーブ式サウナだ。熱源は電気ストーブ式が主流だが、ARSは高効率薪ストーブを採用。サウナストーンが高温になり、ローリュも可能だ。
電気式のようなかからの高温ドライサウナとは異なり、輻射熱でじんわり温まる「陽だまりのようなサウナ」。体の芯からポカポカする感覚が特徴だ。
オール県産スギを使った約20平方メートルのサウナ室が2室。温度帯を変え、初心者から愛好家まで楽しめる設計。水着着用で男女で利用できる。さらに、水風呂とサウナでは珍しい温浴槽、無料休憩スペースを備える。

特筆すべきは外気浴スペースの景観。国上山、弥彦山、角田山の西蒲三山を一望できる。「ここまでオールクリアに山並みが見える場所は意外とない」と胸を張る。
昼は広大な田園風景、夜は星空。サウナ体験を風景込み”で完成させる。延床面積は約290平方メートル。定員最大20人。利用料は2,200円。
レストラン「VINTAGE HALL」では、サウナ営業日は専用の「サウナメニュー」を展開する。看板メニューは「青芳スパイスカレー」(1,200円)。オリジナルブレンドのスパイスを使い、青芳製ビンテージイノックスシリーズのカレー皿で提供する。製品そのものを体験させる。

デザートは「塩レモンアイス」(400円)。レモンシャーベットにヒマラヤ産ピンク岩塩を削りかける。ミネラル豊富でほんのり甘みを含む岩塩が、発汗後の体にしみるというわけだ。
グランドオープンから3日間は、サウナ利用者に塩レモンアイスを無料提供する。ドリンク、アルコールも充実。サウナと食の相乗効果をねらう。

サウナ営業日以外は、魚介ラグーのラザーニャ(数量限定)、牡蠣(カキ)とカリフラワーのクリームソース・フェットチーネ、青芳スパイスカレーを提供。メニューは季節ごとに変わる。
平日限定の「シェアランチセット」(2人4,000円)も用意。デリ&サラダ、本日のパスタ、デザート、コーヒーまたは紅茶付き。夜は基本的にサウナ営業に切り替わるため、時間帯で業態が変わるのも特徴だ。

今後は、青芳オリジナルのレジンテーブル製作体験(予約制)、木材端材を使ったワークショップ、木工場のオープンファクトリーなどを展開する予定だ。
施設内の無料休憩スペースにはサウナ関連書籍や観光ガイドを置き、地域回遊を促す。「ここに来て終わりではなく、ここからどこかへ行ってほしい」という設計思想だ。

青柳社長は将来的に、燕三条・弥彦エリア全体で産業観光を推進する民間協議会の立ち上げも視野に入れる。「点ではなく面で。1社だけでは意味がない」
将来的に売上の半分を観光型事業にしたい考えだ。「成功事例をつくらないと、他社は動かない。成功事例にしたい」と青柳社長は意気込む。製造業が観光に転換するという大胆な発想だが、単なる観光施設ではない。ものづくりを続けるための手段だ。

「雇用と税収が増え、地場産業が続いていく可能性があるなら、やる価値はある」。覚悟がにじむ。
■施設概要
名称:ARS(Aoyoshi Renovation Studio)
所在地:燕市小池4852-5
アクセス:三条燕ICから車約15分/JR燕三条駅から車約15分
駐車場:33台
グランドオープン:2026年3月5日
問い合わせ:0120-137-149