5月31日投開票の新潟県知事選で3選を目指す花角英世知事(67)の「県政報告会in三条」が21日、三条市で開かれ、支持者ら約400人が参加した。花角知事は、新年度当初予算の考え方や県央地域の課題、さらに新潟県全体の人口減少問題について話した。後半では若者、とりわけ女性の県外流出に強い危機感を示し、「県民の皆さんにぜひ一緒に考えていただきたい」と訴えた。

花角知事は冒頭、「きょうは景気づけの集会ではなく、県が抱えている課題、また県央地域が抱えている課題について、どういうふうに取り組んでいくべきかを聞いていただきたい」と語り、県政の現状を率直に伝える場にしたいとの考えを示した。
まず、新年度当初予算について説明。今回の予算を「守りの予算」と「攻めの予算」の二本柱で位置付けた。「守りの予算」では、物価高が続くなかで厳しい状況に置かれている県民生活や県内企業の事業継続を支える施策を盛り込んだ。
足元では国際情勢の緊張によるエネルギー価格の先行き不透明感がある。「県民生活を守る、あるいは中小企業など県内企業の事業活動を守るところは、しっかりやっていかなければならない」と述べた。
一方の「攻めの予算」では、国の成長投資の流れを踏まえ、県内企業の挑戦や新分野進出、事業再構築を後押しすると説明。フードテックやGXといった戦略分野を挙げ、「新潟県が投資先としてふさわしい地域である」とし、「新潟に人や企業、お金を呼び込むことで経済活力を生み出していきたい」と語った。
さらに、県政の「一丁目一番地」として挙げたのが、命と財産を守る防災対策。自然災害が頻発するなか、河川改修や土砂災害対策を着実に進める必要性を強調。近年、深刻化しているクマ被害にもふれ、「野生鳥獣から県民の命、体を守ることは最初にやらなければならない」。
雪国・新潟ならではの課題として雪害対策にも言及した。ことしの中越地域を中心とした大雪では、雪下ろしや除雪作業中に25人が亡くなった。
「これは本当に大変な災害だ」と指摘。安全帯やハーネス、アンカー設置支援など既存の対策に加え、「もう一段、努力がいる」とし、豪雪地帯の自治体と連携しながら国への働きかけも含め来季に向けた対策強化に取り組む考えを示した。

「守る」という意味では健康も大きな柱。知事就任以来、掲げてきた「健康立県」にふれ、医療、介護、福祉の連携をさらに進めながら、県民が人生の最後まで自分らしい生活を送れる環境づくりを進めていくと説明。「誰もが適切な医療を受けられる環境をつくること、医療と介護、介護と福祉がつながっていくことが重要だ」と述べた。
県央地域については、「ものづくりとして世界的にも全国的にも有名で、新潟県内の大きな産業の中心」と位置付け、「県央地域が元気でないと困る」と明言した。
そのうえで、県央工業高校と三条商業高校の統合で新しい産業高校をつくる計画について、「単なる高校の統廃合ではなく、攻めの統合だ」と強調。地域産業が求める専門人材を輩出できる学校を目指し、三条市立大学とも連携しながら「新しいスタイルの産業高校を新潟県で初めてここにつくっていきたい」と述べた。
早ければ今秋にも開通する国道289号八十里越(はちじゅうりごえ)については、会津と県央地域を結ぶ新たな広域ルートとして期待感を示した。国道49号や六十里越とあわせて「8の字」の人流ルートが形成されることで、首都圏、北関東、会津を経て新潟県に人が訪れる流れが強まる。
「経済の活力を生み出す大きなチャンスだ」と期待し、「地域に経済効果が落ちるよう、三条市の皆さんと一緒に取り組んでいきたい」と語った。
医療面では2年前に開院した県央基幹病院について「順調に機能を始めている」と評価。一方で吉田病院の改築、医療機関同士の機能分担、さらに医療と介護の連携が重要になり、県央地域の安心を支える体制づくりを今後も進める姿勢を示した。
講演の後半で最も時間を割いたのが人口減少問題。県が示した新潟県人口ビジョンに触れ、2024年の県人口209万9千人が今後、減少を続ける見通し。そのうえで、「2100年に100万人程度で安定する」という目標を掲げたが、「これを実現するのも大変だ」と率直に語った。
実現には2050年に合計特殊出生率2.07と社会動態均衡を達成する必要がある。「今の1.14前後から2.07にするのは簡単ではない。しかも社会減も止めなければならない」と、問題の深刻さ強調した。

少子化そのものよりも、若年層の県外流出、つまり社会減の問題を中心に説明した。2024年の高校卒業者約1万6千人のうち、県内就職は約2100人、県内大学進学は約7700人、県外大学進学は約5400人だった。
県内大学には県外から約3900人の学生も集まっている一方、大学卒業後に県内に残る若者は約5300人にとどまる。県外へ進学した若者も「なかなか戻ってこない」。
さらに24年の社会減約4500人のうち、7〜8割が20代前半。しかも女性の割合が高いことを紹介した。県が昨年11月に実施した若者800人へのアンケート調査をもとに、その要因を「就職先の問題」と「地元への意識」の2つから分析した。
県外流出の理由としては、「希望する進学先が少なかった」「やりたい仕事、就職先が少なかった」が大きかった一方で、「地元から離れたかった」「親や周囲の人の干渉から逃れたかった」といった回答も多かった。
とくに花角知事が強調したのが、女性の流出と地域に残る固定的な性別役割分担意識の関係だ。アンケートでは「食事の準備やお茶出しは女性の仕事」「結婚や子どもを持つのは当然」「家事、育児、介護は女性の仕事」「職場でのお茶出しやサポート業務は女性の仕事」などの意識を、生まれ育った地域で見聞きしたと答えた女性が多く、しかも首都圏へ転出した女性ほどその傾向が強かった。

花角知事は「こうした意識の問題は、人の気持ちにも関わるセンシティブな問題だ」としながらも、「若い人たちが県外に流出しているひとつの要因になっているのも事実だ」と理解を求めた。
そのうえで、対策としては、まず県内企業に魅力ある職場づくりを促すことが必要。多様で柔軟な働き方の導入や、女性活躍、子育て支援に積極的な企業を後押しするため、県独自の認定制度や国の女性の活躍推進法の「えるぼし」や子育て支援の「くるみん」の取得を支援していく。
固定的な役割意識の解消に向けては、県民会議の設置に加え、新年度予算で市町村向け交付金を新設し、各地域で課題を知り、議論する取り組みを支援していく。
一方で、首都圏に出た若者の約4割は「条件に合う就職先があれば戻りたい」「子どもができたら新潟に帰りたい」と答えており、「まだ救いはある」と述べた。
Uターンの可能性を広げるためにも、「新潟で働きたい、新潟で子育てをしたいと思ってもらえるような環境づくりを、しっかり取り組んでいかなければならない」と力を込めた。
最後に「私は新潟が本当に素晴らしく、魅力のある、住みやすい県だと思っている」と述べたうえで、県民一人ひとりが新潟への愛着をもつだけでなく、外に向かって誇りを持って発信できるような地域にしたいと話した。
知事就任以来のキャッチフレーズ「住んでよし、訪れてよし」の新潟県を実現し、その魅力によって人を呼び込み、地域の活力につなげていく考えを改めて示し、講演を締めくくった。