新潟県教育委員会は高校の再編構想で、三条市にある新潟県央工業高校と三条商業高校の2校は、2029年度に新たに産業高校として統合する。地元ではこれまで3回にわたり地元懇談会を開き、集約した地域の思いを23日、県境委に要望した。統合を単なる学校数の整理に終わらせず、「地域の活力ある明るい未来の実現に寄与する特色ある高等学校」とするよう求めた。

要望者は滝沢亮市長をはじめ、三条商工会議所、三条市商工会、三条工業会、三条金物卸商協同組合、建設関連協議会、燕三条青年会議所、両校の同窓会・PTA、三条市PTA連合会、三条市中学校長会、公立大学法人三条市立大学など17人。
この日はそのうち滝沢市長、兼古耕一三条商議所会頭、県央工高同窓会の松縄嘉彦会長、三条商高同窓会の松永一義会長など8人が出席し、花角英世知事にあてた要望書を滝沢市長から太田勇二教育長に要望書を手渡して県に声を届けた。
滝沢市長は冒頭、高校の統合は「まちづくりそのものに関係する」とし、両校が長年、地域産業を支える人材を育て、産業界と行政をつないできた役割にふれ、県教委が産業高校の第1弾として示したのは「両校の伝統と実績が高く評価されたからではないか」と前向きに受け止めた。
そのうえで、昨年11月から16団体で懇談を重ねて要望を取りまとめたとし、「きょうがスタートライン」と今後も地域としてかかわり続ける考えを示した。
要望は「地元産業との密着・連携した高等学校」「更なる進学も選択肢となる高等学校」「三条市立大学との連携」「新校舎の建設」「統合後の高等学校の名称を魅力あるものに」の5つを柱に掲げた。
まず「地元産業との密着・連携した高等学校」を打ち出した。県央地域を金属加工業を中心とする「ものづくりのまち」と位置づける。市内に3社の上場企業を含む5,000を超す事業所が集積し、卸売業、小売業、サービス業、建設関連業も幅広く栄える地域と強調する。

2021年4月開学の三条市立大学も含め、「産業教育の拠点となり得る基盤を有している」としたうえで、この地域らしい魅力あるカリキュラムの実現を求めた。
2点目の「更なる進学も選択肢となる高等学校」では、専門学科系高校でありながら就職だけでなく大学や専門学校への進学にも対応する複線型の教育システムを求めた。徳島県立徳島科学技術高校の例をあげ、多様な進路希望に応えられる仕組みづくりを要望した。
3点目の「三条市立大学との連携」は、統合校と三条市立大学が密に連携し、生徒の学習意欲や将来設計のきっかけとなる「真の高大連携」を実現し、地域産業界のいっそうの発展にもつなげる。
市長も囲み取材で「三条市立大学はまさしく三条市が設置している大学。協力関係は我々に責任がある」と述べた。
4点目の「新校舎の建設」は、地元側の思いが強く表れる。要望書では両校の校舎老朽化にふれ、2029年4月の統合時点ではどちらかの校舎活用はやむを得ないとしつつも、遠くない将来にアクセスや周辺環境も含めた新校舎建設の検討を求めた。
市長は囲み取材で「新校舎というのが地元の総意」と説明。一方で、この日の要望書には具体的な立地は盛り込まなかった。当初意見には燕三条駅周辺案もあった。

「まずは新設高校ということがメイン。立地はその後」と述べ、合意形成を優先したとした。
5点目の「統合後の高等学校の名称を魅力あるものに」は、要望書では「県央」は全国で埋没しかねない名称だとし、「産業高校」も分類名としては差し支えないが、中学生や保護者が選びたくなる魅力ある名称を求めた。
滝沢市長も「地元の意見を聞きながら、いい名前にしていきたいとの話をいただいた」とし、今後の論点になるとの見方を示した。
県側の反応について滝沢市長は、太田教育長から「今回の要望書の内容は、県が考えている産業高校の方向、方針と基本的には一致する」との趣旨の言葉があったと話した。
地元との連携強化、就職と進学の複線化、高大連携の推進について理解が示され、新校舎についても「より良い環境に向けて検討」との表現があったと受け止めた。名称についても、必ずしも「産業高校」に決まっているわけではないとの認識が示されたと言う。
両校を取り巻く厳しい環境が背景にある。滝沢市長は囲み取材で、県央工業高校がここ数年、定員割れだったことや、三条商業高もことし定員割れしたことにふれ、私立高校授業料無償化の流れにも言及。「中学生が、また親御さんが行きたくなるような高校を一緒につくっていきたい」と話した。