新潟県燕市国上の越後最古の古刹・国上寺は10日、18年ぶりとなる御開帳を始めた。秘仏10体の仏像や上杉謙信寄進と伝わる3千仏の掛け軸などを5月11日まで特別公開する。あわせて、メディアやSNSで話題を集めた「イケメン絵巻」の第2弾も初公開し、伝統行事に現代的な表現を重ねた注目の催しで、大型連休は参拝者でにぎわいそうだ。

国上寺の御開帳は、709年の開基から1300年を超える歴史をもつ同寺で、これまで12年に一度を基本に行われてきた。今回は2020年に予定していた御開帳がコロナ禍で延期となったため、前回から18年ぶりの開催となった。
公開されるのは、本尊の阿弥陀如来坐像をはじめとする秘仏10体の仏像のほか、上杉謙信から寄進されたと伝わる3千仏の掛け軸、香炉、義経自作と伝わる大黒天像など。拝観時間は午前8時半から午後4時までで、拝観料は記念品付きで1500円。

山田光哲住職は、今回の開催が異例のタイミングとなった理由について、自身の年齢や節目を挙げた。「本来ならねずみ年の御開帳だが、前回はコロナでできなかった。今59歳で、次の6年後になると65歳。記憶力、体力、気力の衰えも出てくるだろうし、住職就任30年の節目でもあるので、この機会に開催しようと決めた」と語った。
さらに「次の御開帳はもっと小規模に、3日間だけという形でもいいかもしれない。今回は体力と気力があるうちに大々的にやりたい」と今回にかける強い思いを話した。

前回2008年の御開帳は約3週間で2万3000人を集客した。今回は会期を約1カ月に延ばし、大型連休も含めた長丁場となる。土日祝日は弥彦駅と道の駅国上を結ぶシャトルバスも運行し、夜間警備員も配置するなど受け入れ態勢も強化した。
御開帳では、10日午前11時から10人ほどの僧りょで法要を行い、ふだんは扉が閉ざされている本尊の阿弥陀如来坐像を公開した。本尊は台座を含めて約3.5メートルに及ぶ大きな仏像。山田住職は「本体だけでも県内でいちばん大きいのではないか」と言う。

このほか、持ち運び可能な仏像9体に加え、方丈講堂には祈願用の不動明王像1体の秘仏10体も公開。さらに、上杉謙信寄進と伝わる3千仏の掛け軸、牡丹の花の形をした香炉、義経弁慶ゆかりの大黒天像など、御開帳の時だけ一般公開される寺宝も並ぶ。
山田住職は「令和の時代のものもあれば江戸時代のものもある。古い時代の信仰と、今の時代の表現の両方を感じながら、時空を超えたようなお参りをしてもらえれば」と見どころを語っている。

今回のもうひとつの目玉が、本堂壁面の「イケメン絵巻」に続く新作の公開だ。国上寺ゆかりの人物を官能的、幻想的に描いた「イケメン絵巻」は2019年の公開時にテレビやSNSで大きな反響を呼び、同寺の知名度を一気に押し上げた。
今回はその第2弾として、方丈講堂のふすま絵が初公開された。制作したのは第1弾に続いて画家の木村了子さん(54)=東京都=。東京芸大大学院修士課程壁画専攻修了で、男性をときにエロチックにん、コミカルに描き出す。武蔵美や長岡造形大の講師も務めている。

第1弾では良寛、酒呑童子、源義経、弁慶、上杉謙信などを色彩豊かに板に描き、本堂の四方に取り付けた。木村さんは「今回は寺院の空間にふさわしい、本格的な仏画や日本美術の流れを意識して描いた。墨一色に見えても、同じ墨でこれだけのグラデーションが出せるところを見てほしい」と話した。
今回、描いたのは、良寛、酒呑童子、源義経、弁慶、上杉謙信らに加え、新キャラクターとして修験道の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)、国上寺本堂建立に尽力した中興の祖・万元上人(ばんげんじょうにん)の計7人。
テーマは「とある一日」で、それぞれの人物が国上の自然の中で穏やかに過ごす情景として表現した。
当初は第1弾公開の翌年、2020年の御開帳でお披露目の予定だったので、ふすま絵の一部は当時、制作してあった。今回はふすま絵以外の壁を描くために再び国上寺へ足を運んで制作した。

方丈講堂に入って左右の部屋をそれぞれ4枚のふすまが仕切る。方丈講堂の本尊は千手観音。千手観音は上杉謙信が信仰し、信仰以上の対象だったのが旗印にも掲げた毘沙門天(びしゃもんてん)。それと国上寺が真言宗の密教の寺ということで不動明王は欠かせないと、この二尊を描いた。
左のふすまには世界で争いが起こるなか、戦の神とされる毘沙門天が虎のところに座ってリラックスしている姿と、雪豹(ゆきひょう)と猫又(ねこまた)が和やかに遊ぶようすを描いた。
龍虎図という日本画の伝統的な画材にのっとって、右のふすまには龍に乗る不動明王を描いた。
その右のふすまを開けた先の長岡藩主が休んだとされる長岡間には、四方を木村さんの作品に囲まれる。
木村さんはいつか寺院などの障壁画も手がけてみたいと思っていた。今回は墨一色で大好きな狩野派など日本美術をベースに仕上げた。

障壁画のテーマに多い「竹林七賢図」という伝統的な画題になぞらえ、国上寺にゆかりのある人を描いた。弁慶と義経の背中合わせストレッチ、役行者が酒呑童子にほら貝の手ほどき、上杉謙信が魔を払う放弓の儀、書を書く良寛に手を添えるもともと五合庵に住んでいた万元上人を描いた。
さらに国上山の豊かな自然を描いた。佐渡島に沈む夕日や野積の滝、国上寺のパワースポットのイチョウの木。「この水墨のパノラマを楽しんでいただければなと思います」と木村さんは説明した。

山田住職は第2弾について「上の本堂とは違い、こちらは華美にせず落ち着いた感じでまとめてほしいとお願いした。日本画としてこの部屋と非常にマッチしていて、大変いい」と大満足だ。
山田住職は「寺離れが進むなかで、まずは来てもらわないとわからない。来るきっかけとしてイケメン絵巻があり、寺に来てみると寺もいいものだと感じてもらえれば」とねらいを説明する。

「70代以上なら国上寺を知っていても、60代くらいになると地域によっては知らない人も多い。今回の御開帳を機にもっと認知してもらえれば」と願う。前回の「イケメン絵巻」公開時には、延べ10万〜15万人規模の来訪があり、今回も再び大きな話題を呼びそうだ。
また今回は、国上寺がこれまで手がけてきた「SNS炎上供養」を発展させ、日本初をうたう法人向けの「SNS炎上除け祈願」も始めた。

同寺によると、2018年に始めたSNS炎上供養にはこれまで約5500件の相談や供養依頼が寄せられた。企業や自治体が新しい取り組みを発信するときに、炎上を恐れて萎縮しがちな時代背景を踏まえ、挑戦を後押しする祈願として法人向けサービス化した。
初日は地元分水地区の氏田組と加茂市の元デザイン事務所が祈願を受けた。「自分自身が炎上するというより、日々いろいろな商売の人と会うなかで、次の一手を打ちたいのにSNSが怖くて難しいという相談を受けることがある。祈願を受けて身が引き締まる思い。これからも頑張っていきたい」と話していた。
御開帳に合わせ、限定の切り絵御朱印2種類を含む複数の御朱印も用意した。さらに、本尊を18年間、包んで保管していたさらしの一部を内部に納めた限定お守りも頒布する。

境内には本尊と「結願の綱」結ばれる高さ約8メートルの「結縁柱(けちえんばしら)」も設置された。綱にふれることで本尊との縁を結ぶもので、御開帳ならではの参拝体験だ。
住職は「人生の中で何度も体験できるものではない。無事に終わることを願うとともに、この御開帳を通して国上寺をさらに進化させていければ」と話していた。