全国の高校などで理科教育に携わる教員や関係者が一堂に会する「令和8年度全国理科教育大会・第97回日本理化学協会総会新潟大会」が4日、新潟県三条市の三条市立大学で始まった。6日までの3日間、約310人が講演や研究協議、実践発表を通じて、これからの理科教育のあり方を探る。新潟県での開催は43年ぶり。
ものづくりのまち燕三条を「生きた教材」に主題は「探究心を育む理科教育」
日本理化学協会と新潟県高等学校教育研究会理科部会が主催。大会主題は「『探究心を育む理科教育』―地域産業との連携で探る、新たな価値の創造に向けて―」とした。
会場に燕三条地域を選んだのは、新潟県のほぼ中央に位置し、上越新幹線の燕三条駅があるなど全国から集まりやすいことに加え、金属加工を中心とする地場産業が集積しているため。新潟市、長岡市、上越市ではなく県央地域で開き、燕三条ならではの特色を大会に打ち出した。
燕三条のものづくりには、摩擦や熱伝導、金属の結晶構造、酸化還元など、高校の理科で扱う知識が随所に生かされている。教室で学ぶ理論が実際の製品や産業にどう結び付き、新たな価値を生み出しているのかを学ぶ「生きた教材」として地域全体を捉えた。
燕三条の地域性を盛り込みコース別研修は職人の技や製造現場を体感
大会主題も、近年の理科教育で重視される探究学習や個別最適な学びだけにとどまらず、「地域産業との連携で探る、新たな価値の創造に向けて」と燕三条の地域性を盛り込んだ。
学校の中だけで教育を完結させず、企業や地域と輪を広げながら子どもたちの探究心を育てる理科教育を考える。
会場の三条市立大学は、地域企業と連携した実践的な工学教育を進めており、大会テーマを具体化する場としてふさわしい。参加記念品にも燕三条製のステンレス製エコカップを採用。最終日のコース別研修では、金属加工や木工、アウトドア製品などの企業や産業施設を巡る。
コース別研修では、藤次郎ナイフギャラリーや燕市産業史料館、道の駅燕三条地場産センター、マルナオ、スノーピークミュージアム、野崎製作所などを訪問。職人の技や製造工程、地域産業の歴史に触れ、理科の知識が製品や価値の創造に結び付く現場を体感する。
北海道、九州、沖縄まで、全国から理科教員や関係者ら約310人が参加。うち県内からの参加が50人ほどを占めている。
初日は次期学習指導要領を見据えた講話
初日の4日は、全国理事会や研究代表者会議などを行った。文部科学省初等中等教育局教育課程課の小林一人教科調査官が「科学的に探究する資質・能力を育てる理科教育」と題して講話し、次期学習指導要領に向けた課題や方向性を示した。
参加者は、現行の学習指導要領による授業で主体的、対話的で深い学びをどこまで実現できたのか、学校ごとに実践状況や学習効果を把握、分析する必要性などについて理解を深めた。
理科設備の保有状況などに関する調査報告もあり、日本理科教育振興協会の石崎宏行常務理事が全国216校から得た回答を基に現状を説明した。
三条市立大学長が「探究心が拓く未来」を講演
5日午前9時15分から開会式と表彰式を行い、長年にわたり理科教育に尽くした教員らに教育功労賞、協会賞、特別功労賞を贈る。
午前11時からは三条市立大学のアハメド・シャハリアル学長が「探究心が拓く未来―理科教育×次世代を牽引する地域産業の融合による価値創造―」と題して記念講演する。
AIが知識の蓄積や情報処理を担う時代に、想像力や創造性、好奇心、「なぜだろう」と問いを立てる姿勢を理科教育でどのように育むかを考える。理科教育の役割を、科学を教えることだけではなく、未来を創造する人を育てることとして捉え、地域産業との融合による新たな可能性を示す。
7分科会で授業や実験のあり方を議論
5日午後は、物理、化学、生物、地学など7分科会に分かれ、2時間半にわたって研究協議を行う。個別最適な学びと協働的な学び、探究心を育む授業づくり、観察や実験の工夫などをテーマに、実践事例を持ち寄って意見を交わす。
第7分科会では「地域産業との連携で探る、新たな価値の創造のための理科教育」をテーマに、地域や企業との連携を理科教育にどう生かすかを議論する。
最終日の6日午前は、物理、化学、生物、地学の各分野で研究発表を行う。うがい薬を用いた酸化還元実験をはじめ、教員が授業や実験で実践している工夫などを発表。午後はコース別研修を行う。
ものづくりの現場を理科教育の視点で見つめ、地域産業と科学との「生きたつながり」を学ぶ3日間となる。
