新潟県三条市は7日、市立本成寺中学校で、市内の小学校2校と全中学校、義務教育学校の体育館に導入したエアコンと輻射(ふくしゃ)パネルによるハイブリッド型冷暖房システムのデモンストレーションと見学会を開いた。学校体育館への同システムの導入は、北陸から東北にかけての日本海側では初めて。児童生徒の熱中症対策と、災害時の避難所環境の改善を図る。
見学会には、新潟県と県内市町村の教育委員会、スポーツ担当部署など19団体から78人が参加。遠くは村上市や糸魚川市から訪れるなど、学校体育館の空調整備に対する自治体の関心の高さをうかがわせた。
整備費は体育館1館に約8000万円
冷暖房システムを導入したのは、一ノ木戸小学校、嵐南小学校・第一中学校、第二、第三、第四、本成寺、大島、栄、下田の各中学校と大崎学園。12体育館に計167台を設置し、5月30日までに工事を終えた。
整備費は12体育館の平均で、設計委託料約460万円、工事監理委託料約140万円、工事費約7400万円の計約8000万円。全体では約9億6000万円となる。
滝沢亮三条市長は、「近年の暑さで夏に思うように体育や部活動ができない状況が毎年続いている。まずは子どもたちの命と安全を守るため、中学校を中心に導入した」と説明した。
さらに多くの学校体育館が指定避難所となっていることにふれた。花角知事は「災害は真冬に起こるのか、夏に起こるのかわからない。避難所の環境整備という意味でも導入を決めた。他の自治体にとっても参考になれば」と話した。
風が弱く卓球やバドミントンにも対応 電気料金を約3割削減
導入したシステムは、冷房能力10キロワット、暖房能力11.2キロワットのエアコンと輻射パネルを組み合わせる。
冷房時はエアコンの冷媒を利用して輻射パネルを約10度まで冷やす。温度の高い人や床、壁などから低温のパネルへ熱が移る性質を利用し、体育館全体を効率よく冷やす。暖房時は反対にパネルを温め、熱を人や床、壁へ伝える。
一般的なエアコンだけの空調に比べ、体育館の中央と端で温度差が生じにくい。室内が設定温度に近づくとエアコンの風が微風になるため、風の影響を受けやすい卓球やバドミントンにも適しているという。
輻射パネル自体は電力を使わず、空調能力を通常の約70%に抑えることができるため、電気料金もエアコン単体より約3割削減できるとする。初期費用は高くなるものの、ランニングコストや将来の更新費用を含めた長期的な運用では有利に。10年余りで初期費用の上乗せ分を回収できるとされる。
エアコンと輻射パネルをボールから守る防球格子は、道路や敷地内の側溝などの上に置かれる金属などの格子状のふた「グレーチング」の製造で知られる三条市の(株)カワグレが製作した「Made in 三条」となっている。
外気温上昇でも体育館中央は約4度低下
デモンストレーションでは、午前7時35分に設定温度20度で運転を開始した。外気温が同7時半の30.6度から同10時半には34.5度へ約4度上がり、体育館上部のギャラリーも31.2度から35.1度へ上昇した。
一方、体育館中央は31度から27.2度へ約4度下がり、壁際も30.2度から28度へ低下。広い体育館の中央と端で大きな温度差が出ないシステムの特徴を示した。
会場には災害時に使用するパーティションと簡易ベッドも展示された。輻射熱はパーティションで仕切られた内側にも届くため、外側とほぼ同じ室温を保てるという。ただし、停電時には現在の設備だけでシステムを稼働させることはできず、災害時の電源確保は今後の課題となる。
「昼休みも楽しく遊べる」
見学会では、本成寺中学校の卓球部や男子バスケットボール部の生徒が、空調の効いた体育館で練習した。生徒は昨年度までは20分運動するたびに10分間、冷房の効いた部屋で体を冷やしていたと話した。
暑さ指数(WBGT)が31を超えると運動できず、走るなど身体への負荷が大きい練習も難しかったと言い、「ことしは体育館にエアコンがついて快適に運動できる。昼休みもみんなで楽しく遊べるようになった」と喜んだ。
第二体育館には、先に(株)サンユー印刷(三条市)の寄贈で天井に遮熱シート、窓に遮熱カーテンが施工されている。
これまでは第一体育館より暑かったが、冷暖房と遮熱設備の併用ではっきりとわかるくらい第一体育館より 涼しく、「遮熱があるのとないので全然、違う」と参加者は効果の大きさに驚いていた。
システムの導入に緊急防災・減災事業費および緊急防災・減災事業債が利用できないかと話す人もいた。
三条市は今後、未整備となっている小学校体育館への導入についても検討する。




