新潟県弥彦村と香川県琴平町は25日、弥彦村役場で「交流50周年記念協定締結式」を開き、半世紀にわたる交流を受け継ぎ、観光や行政、文化など幅広い分野で連携を深める新たな協定を締結した。節目を記念し、琴平町からは弥彦燈籠まつりへの記念花火、弥彦村からは琴平町の子どもたちへの弥彦米贈呈など、50周年記念事業も展開する。
両町村の交流は1976年(昭和51)、「信仰と観光の親善町村提携に関する盟約」を締結したことに始まる。全国有数の門前町として、弥彦村は越後一宮・弥彦神社、琴平町は金刀比羅宮を擁する共通点から交流が始まった。当時の両神社宮司が大学時代の同窓だったのが縁で実現した。
今回、締結した「琴平町と弥彦村との信仰と観光による交流深化に関する協定」は、これまでの友好関係を基礎に、観光振興だけでなく行政や文化、人的交流などへ連携を広げ、次の50年に向けて交流を発展させることを目的としている。
神社を中心に発展した門前町同士
弥彦燈籠(とうろう)まつりにあわせて25日、弥彦村役場で調印式を行った。琴平町から片岡英樹町長、渡辺信枝町議会議長、金比羅神社・琴陵泰裕宮司、造田泰総務課長の4人が来村した。
本間芳之弥彦村長は「弥彦村と琴平町は神社が町村のアイデンティティそのものであり、年間200万人を超える参拝客が訪れる全国有数の観光地という共通点がある」と紹介。「新協定は観光振興をはじめ行政分野での連携をより具体的に進めるもの。50年築いてきた絆を大切にし、これからも共に歩んでいきたい」と述べた。
また昨年、琴平町を訪れ、国の重要文化財・旧金毘羅大芝居(金丸座)で歌舞伎を鑑賞した経験にも触れ、「歴史ある芝居小屋で文化の重みを感じた。歌舞伎文化に深く感銘を受けた」と振り返った。
「弥彦は関係人口のひとり」と片岡町長
片岡町長は「議員時代から何度も弥彦村を訪れており、弥彦神社の荘厳さ、弥彦山の景色、燈籠まつりの熱気、おいしい米や枝豆、地酒が毎回、心に残っている」と語り、「私は弥彦の関係人口のひとりだと思っている」と述べた。
さらに「人口規模や少子高齢化への対応など共通の課題も多い。行政同士だけでなく町民・村民、子どもたち同士の交流にも力を入れたい」と今後の展望に期待した。
交流50周年を記念し、弥彦村から琴平町の保育園児、小中学生へ1人に弥彦米2合パックを贈呈した。片岡町長は「子どもたちから、甘くてもちもちでおいしかった、また弥彦村に行きたいという声が届いた」と紹介し、感謝を述べた。
一方、琴平町は返礼として、この日の夜の弥彦燈籠まつり奉納花火大会で50周年記念花火を贈った。午後9時半の打ち上げで、両町村の友好を夜空に刻む。
議会交流も半世紀継続
祝辞で本多隆峰弥彦村議会議長は「50年は人生でいえば金婚式。互いを尊重し支え合ってきた絆は金のように価値あるものとなった」と表現。「この歴史を次世代へ引き継ぐ責務がある」と述べた。
渡辺信枝琴平町議会議長は、協約締結翌年の1977年に訪問団の一員として初めて弥彦村を訪れた思い出を紹介。「当時は瀬戸大橋もなく、フェリーや列車を乗り継いで訪れた。皆さんの温かいもてなしは今も忘れられない。ことし再びこの節目に立ち会えたことを感慨深く思う」と語った。
記念事業も展開
50周年記念事業では、この締結式と米の贈呈、記念花火のほかにも、10月10日の金刀比羅宮例大祭に弥彦村が新米の弥彦産米を奉納する。
締結式では本間村長と片岡町長が協定書に署名し、固く握手。会場からは、半世紀続いた門前町同士の絆を次世代へつなぐ新たな出発を祝う大きな拍手が送られた。
【memo】50周年を機に行政交流から民間交流へ 歌舞伎や食文化など新たな展開にも期待
本間芳之村長は、新協定締結の経緯について「町長、村長とも代替わりし、50周年という節目に何か記念に残ることをやろうという話になった」と説明。「具体的な事業が先にあったわけではなく、『もう一度結び直して、これから友好を深めていこう』という思いが出発点だった」と明かした。
その象徴として、琴平町は弥彦燈籠まつりへの記念花火を贈り、弥彦村は琴平町の子どもたちへ弥彦米をプレゼント。これまでになかった取り組みを互いに贈り合い、50周年の節目を形にした。
本間村長は昨年、琴平町で予定されていた「こんぴら石段マラソン」に合わせて現地を訪れたが、雨天中止となったことにもふれた。石段は1368段もある。「下見では奥社まで登った。天気が悪いと石段が滑りやすいことも実感した」と振り返った。
一方、金刀比羅宮の琴陵宮司は、弥彦村との縁について「新潟のお米は非常にインパクトが強かった」と話し、琴平町の子どもたちへ贈られた弥彦米が好評だったことを紹介。弥彦神社と同様に、金刀比羅宮も境内の大部分が山林で占められ、「山の半分ほどが境内」と、その壮大なスケールを紹介した。
片岡町長は、今後は行政同士だけでなく民間交流にも力を入れたいと話した。
琴平町では、国の重要文化財・旧金毘羅大芝居(金丸座)で毎年4月に「四国こんぴら歌舞伎大芝居」を開催。中村獅童さんや松本幸四郎さん、市川團十郎さんら歌舞伎界を代表する俳優が出演し、16日間・32公演を行う全国有数の歌舞伎公演として知られる。
「地芝居ではなく、歌舞伎座などで上演される本格的な歌舞伎をそのまま上演している。江戸時代の芝居小屋を今も活用しており、役者との距離が非常に近いのが魅力」と紹介。本間村長も昨年、その舞台を鑑賞した。
さらに片岡町長は、過去に弥彦村の多目的施設「ヤホール」で讃岐うどんの実演・振る舞いを行ったことがきっかけとなり、弥彦村内で讃岐うどん店が誕生したエピソードも披露。「こうした民間交流が交流事業の成果のひとつ。これからも新しい交流を生み出していきたい」と期待を寄せた。
話題は食文化にも及び、今回初めて燕市の名物・背脂ラーメンを味わったという片岡町長。実は父はラーメン屋。「次は長岡生姜醤油ラーメンや三条カレーラーメンも食べたい。新潟五大ラーメンを制覇しなければ」。弥彦米や地酒に続き、新潟のラーメンも新たな交流の楽しみにしていた。
