元イスラエル兵で平和活動家、木工作家のダニー・ネフセタイさん(69)=埼玉県皆野町=が10日、新潟県三条市を訪れ、松葉幼稚園(藤波法英園長・園児110人)で園児に平和について語った後、三条別院旧御堂で開かれた「第2回パレスチナ学習会」で講演した。イスラエルで兵役に就き、戦闘機パイロットを目指した自身の経験から、「子どものけんかはダメなのに、なぜ国と国のけんかはいいのか」と問いかけ、戦争をなくすために一人ひとりが考えることの大切さを訴えた。
19歳で戦闘機パイロットを目指した経験を園児に
学習会に先立ち、午後1時から松葉幼稚園で「平和について考える『ダニー先生のお話を聞く会』」が開かれ、年長児31人が参加した。ダニーさん企画、なるかわしんごさん作の絵本『ダニーさんの ちゃぶだい』(イマジネイション・プラス刊)の読み聞かせを受けてこの日を迎えた。
ダニーさんは約20年間、保育園を定期的に訪れ、年長児に戦争や外国人などをテーマに話してきただけに、園児への語りも慣れたもの。質問を投げかけて答えを引き出しながら、戦争についてわかりやすく話した。
ダニーさんはイスラエル生まれ。高校卒業後の1975年、徴兵制でイスラエル軍に入隊し、3年間の兵役を務めた。
幼いころから戦闘機パイロットになることに憧れ、19歳で訓練を受けた。教官と2人で乗るジェット機で操縦を学び、やがて単独飛行や旋回などの訓練にも進んだ。「すごい楽しい。本当に楽しい。かっこいいと思った」と当時を振り返った。
しかし、園児に「この飛行機は何のために作られたの?」と問いかけ、戦闘機は遊ぶためのものではなく、爆弾やミサイルを積んで攻撃するためのものだと説明した。
訓練の途中で試験に不合格となり、一度も出動の機会はなく、パイロットへの道を断念した。当時は3歳のころから抱いてきた夢がかなわず、涙を流すほど悲しかったという。
しかし後になって、「もし戦闘機のパイロットになっていたら、誰かを殺したかもしれない」と考えるようになったと、自身の経験を伝えた。
「戦争は国と国のけんか」
話を園児にも身近な「けんか」に移した。ダニーさんは、戦争とは「国と国のけんか」と説明した。子どものけんかをおとなは「やめなさい」「話し合って解決しよう」と教える。それなのに国同士のけんかの戦争を「仕方がない」と受け止めてしまう。
「本当は子どもと子どものけんかより、国と国のけんかの方がよっぽどひどい」。戦争では人が死んだり、大けがをしたり、家を失ったりすると話し、「大きくなった時も、先生たちに教わった、けんかはダメ、話でちゃんと解決しようということを忘れないで」と諭した。
園児に平和にするためにはどうすればいいかと聞くと、園児からは「お腹いっぱい食べて仲直りする」との答えもあった。最後に園児たちは歌を披露してダニーさんに感謝した。
「イスラエルは力に酔っ払っている」
午後3時から三条別院旧御堂で開かれた第2回パレスチナ学習会には関係者を含め約60人が参加。ことし6月に初公開されたドキュメンタリー「ダニーさんの気づき〜平和のためにできること〜」(78分)を鑑賞したあと、「ダニーさんの気づき〜他人事から自分事へ パレスチナ問題から考える〜」をテーマに講演した。
ダニーさんは退役後、アジア旅行を経て1979年に来日。1988年に埼玉県皆野町へ移住して「木工房ナガリ家」を構えた。今も木工作家として活動する一方、平和や戦争をテーマに全国各地を回っている。本人によると講演は年間約150回に上る。
講演後、ダニーさんは現在のイスラエルについて「やりすぎ。もう歯止めが利かなくなった」と批判し、「私の言葉で言えば、力に酔っている」と表現した。
イスラエルに対して日本からできることとして、とりわけイスラエル製兵器の購入を問題視した。イスラエルの軍事技術が優れているとの評価があることについても、その兵器が実際に何のために使われているのかを考えるべきだと主張する。
イスラエルを支援しているとみなされた企業のサービスを利用しない不買運動よりも、「イスラエルの武器を買うな」と自国の政府に働きかける方が直接的だと強調した。
日本には「二つのすごい武器」
日本の外交姿勢にも言及。ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって日本がウクライナを支援してきたことを引き合いに、「なぜパレスチナ頑張れと言わないの」と不満を示した。
しかし、日本には「二つのすごい武器」があるとした。ひとつは憲法9条、もうひとつは被爆国であることだ。
だからこそ日本が国際社会で果たすべき役割は、戦っている側に「頑張れ」と言うことではなく、「落ち着け」と戦争を止める方向へ働きかけることだとした。
外交上、日本は難しい立場にあることは認めつつも、「その前に、人が殺されるか殺されないかという問題がある」として、人命を最優先に考えるべきだと訴えた。
急病で倒れたのを機に有志の会を立ち上げ
主催した「パレスチナ問題を考える有志の会」は2025年に発足した。会員は20人ほど。代表の菊池要さん(46)=浄圓寺住職=は、妻とイスラエル、パレスチナを訪れ、パレスチナ自治区や分離壁を実際に見た経験がある。
活動を始める大きな転機となったのが、菊池さんが急病で倒れたことだった。先輩僧侶から、自分がこれまで築いてきた人脈を生かして何か活動をしなければ、そのつながりを誰も引き継げないと背中を押された。
菊池さんは22歳のときにピースボートに乗り、南アフリカでホームステイした経験を持つ。その後、トランプ米政権がメキシコ国境への壁建設を打ち出したことをきっかけに、イスラエルとパレスチナを隔てる分離壁に関心を持ち、2019年に妻と現地を訪れた。
その後、知人でパレスチナ問題などを取材するジャーナリスト、高橋真樹さん(52)の著書出版をきっかけに講演を依頼。周囲の寺院関係者らも協力を申し出て、約2カ月という短い準備期間で昨年9月に第1回学習会を開催し、そこでも約60人が集まった。
その高橋さんとダニーさんのつながりなどから、2回目となる今回はダニーさんを講師に迎えた。会は補助金などを受けず、菊池代表や協力者らの手弁当で運営している。菊池代表は、今後もパレスチナ問題を知る人を講師に迎え、できる範囲で学習会を続けたい考えだ。
「本当はやらないのが一番いいんですよ」。こうした学習会を開く必要のない状況になることを願いながら、パレスチナを知ってもらうきっかけになればと話している。
